22: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:37:11.57 ID:xpCfEu5V0
黒い風が大地を駆ける。その勢いや疾風怒濤。
カバンが大気を切り裂きながら、太郎の後ろを横一文字に追従する。
額から飛び散る汗だけは、その場に残って太郎の背中を見送った。
23: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:37:58.55 ID:xpCfEu5V0
あらゆるものが風を避ける。
電柱、看板、ゴミ箱、家屋、コンビニ、横断歩道、街路樹、ガードレール、そして、自転車、道行く人々。
彼らは驚然として道の端へと跳び退いてゆく。
24: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:38:57.59 ID:xpCfEu5V0
さて、健太は受話器を置いてすぐさま太郎の家に向かった。
二人の家は目と鼻の先にあり、竹馬に乗って行っても2分と掛からない距離にある。
呼び鈴を鳴らすと、程なくして太郎の母が出迎えた。
25: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:39:40.24 ID:xpCfEu5V0
ドアを開けると、真っ先に桃色の本が目に入る。
机の上に堂々と鎮座したソレは、
桃色の表紙にデカデカとした金文字で『月刊エロティカ999』と書かれている。
26: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:40:56.72 ID:xpCfEu5V0
本の表紙はうら若き女性が飾っていた。
ただ今絶賛売り出し中の新人グラビアアイドルらしい。
名前まで覚えていないものの、健太もしばしばその顔を見かけている。
27: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:41:54.78 ID:xpCfEu5V0
上から下へ、ゆっくりと表紙を視線で舐める。
黒くツヤのある滑らかなショートヘア。
物欲しそうに訴える黒い瞳。
28: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:43:00.33 ID:xpCfEu5V0
健太は合掌して頭を下げた後、その本を背の中、即ち上着の下に滑り込ませた。
そして腰とベルトの隙間に差し込み、落ちないようにしっかりと体に固定する。
同時に下の階から電話が鳴った。
29: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:45:21.08 ID:xpCfEu5V0
太郎は道半ばに差し掛かっていた。
学校周辺は人通りが多いが、ここまれ来ればその心配も殆ど無かった。
だが良い事ばかりではない。ここ暫くは緩やかな上り坂が続く。
30: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:46:46.09 ID:xpCfEu5V0
太郎は遠目にその姿を観察した。
全員仲良く丸坊主。無駄に脂肪の乗った頬と顎。
パツンパツンに着膨れした体躯から、ムチムチした手足がニョキニョキと生えている。
31: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:48:06.66 ID:xpCfEu5V0
やむなく太郎は、道の端に寄って一人の脇をすり抜けた。
だがその刹那、太郎の倍はあろうかという野太い腕が、その首筋にぬっと伸びた。
太郎の体が軽々と浮く。
32: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:49:41.41 ID:xpCfEu5V0
「うわああああああああっ!」
太郎は目を閉じ、矢鱈目っ鱈に両腕をブンブン振り回した。
その回転たるや、まるで壊れた猫車。拳は空しくクルクル宙を回り続ける。
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