2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 17:20:39.81 ID:SluoaBc3o
明らかに人間離れしたその外見が恐ろしかったのか、
彼に積極的に関わろうとする人なんて誰もいなかった。
両親ですら彼を腫物のように扱った。
彼らだってどう接していいのかよく分からなかったんだろう。
それでも彼を捨ててしまおうなどと思い至らなかっただけ
3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 17:25:13.98 ID:SluoaBc3o
道を行くと、例えそこが人ごみであっても
彼の周囲にはぽっかりと隙間ができた。
多くの人々が彼には近寄らないようにしながら、
そして恐怖と好奇心がないまぜになった視線で彼のことを眺めた。
檻から解き放たれた猛獣にでもなったかのような気分になって、
4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 17:31:45.16 ID:SluoaBc3o
周りはずっとそんな調子で、だから彼は少し引きこもりがちになってしまったけれど、
家にいたら家にいたで、両親が心底困惑した様子で彼の顔色を窺ってくる。
その姿は彼の心を結構すり減らしてくるので、
結果として彼は無事に卒業できる程度には学校に行った。
5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 17:35:52.22 ID:SluoaBc3o
小学校では体育館裏にある小さな農園、中学校では屋上へと続く階段の踊り場、
高校では教師から鍵をちょろまかした生物準備室。
そのあたりが彼の定位置だった。
誰かが訪れる心配ない場所でしか彼の気は休まらなかった。
一人きりで腰を落ち着けて、本を読んだり宿題を済ませたりしながら、
6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 17:41:29.09 ID:SluoaBc3o
こんな見てくれだからこそ、せめてある程度の学歴は持っておいた方がいい。
進学を決めたのは自分でそう判断したからだったけれど、
それでもこれから始まる大学生活のことを考えると彼の気持ちは重たく沈んだ。
どうせまた、遠巻きにされるんだろうなあ。
7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 17:47:44.04 ID:SluoaBc3o
*
大学生活が始まってからも、彼の日々の過ごし方は特に変わらなかった。
突き刺さる視線に気づかないふりをして素早く移動、
8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 17:53:26.63 ID:SluoaBc3o
彼はゆっくりそのベンチに腰掛けて、それが自重で壊れてしまわないことを注意深く確認した。
それからため息を深くついて、この新しい秘密基地の景色を改めて眺めた。
亀裂を埋めた痕跡が所々残る校舎、苔むした地面、ドロドロになった排水溝、そして冷たいベンチ。
このじめじめした薄暗い空間は、たいそう彼の気に召した。
9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/08/02(土) 17:56:54.75 ID:JK49vbgvO
新種のSCPかな?
10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/08/02(土) 17:59:39.17 ID:vOYu1CYh0
シザーハンズじゃないですかー
11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 18:04:26.53 ID:SluoaBc3o
秘密基地を見つけてからしばらく経ったある日。
彼が代わり映えもなくベンチの上で本を読んでいると、
急に誰かの足音が近付いてきた。
それまでこの場所を人が通りがかることなんて一度もなかったから
これだけでもう彼は飛び上がらんばかりに驚いた。
12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/08/02(土) 18:09:14.85 ID:SluoaBc3o
真っ白になった視界が色を取り戻すまでに数秒の時間を要した。
なんとか極度の驚きと緊張から身体の主導権を取り返して、
顔は文庫本に向けたまま、彼は横目で隣の様子を窺った。
俺のことを知っていて近づいてきたのだろうか。
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