過去ログ - 苗木こまる「雨はハレ」
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1: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/08/31(日) 22:18:04.47 ID:FWRyUZRr0

※ダンガンロンパ二次創作です。ダンガンロンパシリーズのネタバレ、妄想を含みます。

非台本形式で地の文が多めです。

一応、以下のSSの番外編の一つですが、読んでなくても大丈夫だと思います。

苗木「じょうずな絶望とのつきあいかた」
モノクマ「おいしい希望のいただきかた」


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2: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/08/31(日) 22:22:56.69 ID:FWRyUZRr0

 町に、殺人鬼がいる。
 正体不明。
 もう四人殺しているが被害者の共通点は見出されていなかった。標的となったのは少年、老女、女、男。老若男女揃い踏みだった。
 ただ明らかなことが二つあった。
以下略



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/08/31(日) 22:24:02.46 ID:GpG9RFqZO
どうも、相沢です。
わかる人にはわかると思うのですが、、例のうみりんスレの>>1が逃亡してしまったみたいなのでターゲットをこのスレに変更します。
荒らし方はあのスレと同じで
、文字化けレスをID変えながらひたすら投下していきます。
スレが完結したり、途中で>>1が逃亡した場合はまた別のラブライブ!スレに移動させていただきます。
以下略



4: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/08/31(日) 22:24:53.15 ID:FWRyUZRr0

 格好のネタに「レインキラー」だの、「切り裂きジャック」だの、報道はこぞって様々な呼び名で騒ぎ立てたが、初めに誰が呼んだか犯人の呼称はある一つに収束した。

「雨男」

以下略



5: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/08/31(日) 22:28:09.82 ID:FWRyUZRr0

 教室のカーテンレールに、てるてる坊主が五つ、吊り下がっていた。
 降り続ける陰鬱な雨と、それと共にやってくる殺人鬼の恐怖に辟易したクラスメイトが、梅雨が明けることを祈り、吊るしたらしい。

「ほんっと危機感ないよね。こまるは」友人は呆れ顔で、文庫本を開いた。「困るわ」と言ったのではない。「こまる」というのが、わたしの名前だ。うちの親は至ってごく普通の親のように思えるが、厄介なネーミングセンスを持っていたようだ。兄は普通の名前なのに。
以下略



6: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/08/31(日) 22:29:44.17 ID:FWRyUZRr0

「ほんとに?こまる、よくぼさっとしてるからなあ。今もそうだった」文庫本に目を落としながら、失礼なことを言ってくる。俯くと長い睫毛が目立つ。

「それはただ……」

以下略



7: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/08/31(日) 22:32:34.02 ID:FWRyUZRr0

----- ✂︎ -----


 最近のわたしはどうもツイてないらしい。
以下略



8: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/08/31(日) 22:34:20.05 ID:FWRyUZRr0

 しかし、テロリストに封鎖され絶望の監獄と化したビルには、希望が紛れ込んでいた。
 捕まっていなかった兄が、武装集団の砦にわざわざ潜り込んでいた。
 あらゆる超高校級の才能が集う学園の生徒である兄だったが、わたしと同じような凡人のはずだった。だから、恐ろしいテロリスト相手に武器なし策なしの兄が敵うはずもなく、あっさりとやられてしまうのが世の理というものだ。
 世の理はひっくり返っていた。
以下略



9: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/08/31(日) 22:37:12.23 ID:FWRyUZRr0

 超高校級の幸運と呼ばれる才能が、ただ一発のくじ運にとどまらないものである、と思い知らされたこの出来事を境に、わたしの不幸が始まる。



10: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/08/31(日) 22:38:25.00 ID:FWRyUZRr0

 エレベーターに閉じ込められ、体育倉庫に閉じ込められ、山へ行けば遭難し、川へ行けば流された。
 そして、街を歩けば品の良くない男二人に絡まれる。



11: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/08/31(日) 22:40:32.38 ID:FWRyUZRr0

 雨の中、学校から家まで走り着いた時、今度兄が寮から帰ってくることを思い出したわたしは、そうだプレゼントでも探そう、と思い立ち、学校での友人の言葉も忘れ、ずぶ濡れの制服を着替えてから傘を掴んで家を出た。
 駅の周辺を歩き回っているうちに、空は雨足を変えぬまま、夜の帳を下ろしていた。
 雨で、しかも夜。
 結局何も買えなかったが、このままうろつき続けるのはまずいことはわたしにも解った。
以下略



12: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/08/31(日) 22:42:16.92 ID:FWRyUZRr0

 青頭がわたしの傘を畳みながら、自分の傘の中にわたしを引き寄せて、何事かをべらべらとまくし立てる。全然頭に入ってこない。
 チューニングの合わないラジオを相手にしているようだった。断片的に「雨宿り」とか、「雨男」とか、「送ろうか」とか、「泊まろうか」とか聞こえてくる。
 必死に、いいですいいです、と逃げようとするが、いいからいいから、と強く肩を抱かれ、逃げられない。金髪がかん高い声で笑う。
 そうして、望まない相合傘でふらふらしてるうちに、暗い路地裏まで引っ張られていることに気づく。
以下略



13: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/08/31(日) 22:43:41.21 ID:FWRyUZRr0

 解りやすい恐怖に晒されてやっと叫ぼうとした口を、青頭の手に塞がれた。そのまま壁に押さえつけられる。絶望的だ。涙が出てくる。
 こんな時。こんな時、兄なら。
 兄は苦境の中、ヒーローだった。諦めず、希望を見出し、幸運はそれに着いてくる。
 わたしは、違う。
以下略



14: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/08/31(日) 22:44:56.35 ID:FWRyUZRr0

 ぱしゃ、と、わたしの響くことのなかった声に応えるように、水溜りを踏む音が聞こえた。



15: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/08/31(日) 22:46:15.36 ID:FWRyUZRr0

 突如雨音に混じった異音に、青頭と金髪が固まる。
 ぱしゃ、ぱしゃ、と、道の向こうから近づいてくる。雨と暗さのせいでよく見えない。

「お取り込み中のとこ、悪いんだけどもさあ」
以下略



16: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/08/31(日) 22:47:35.06 ID:FWRyUZRr0

 長い三つ編みおさげの、眼鏡をかけた少女だった。
 この雨の中、傘も差していない。黒いセーラー服、黒い髪から絶えず水が滴っていて、闇から溶け出てきたのかと錯覚する。

「雨男って知らない?」
以下略



17: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/08/31(日) 22:49:27.67 ID:FWRyUZRr0

「なんだ」お前、と金髪が言いかけたが、「きいいいぃ」と少女が声高に遮った。何事かと息を飲む。

「……てんのはこっちでしょうがよ」訊いてんのはこっちでしょうがよ。有無を言わさない迫力があった。

以下略



18: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/08/31(日) 22:51:18.40 ID:FWRyUZRr0

「ほらほら、早く早く。ぶっ殺すんでしょうが。どうやってぶっ殺してくれんのよ、おい」少女はにたにた笑いながら、金髪を間近で睨め上げる。笑っているのに、殺気を漲らせているのはむしろ少女の方のように見えた。

 てめえ、と声を震わせ、金髪が右拳を振り上げた。
 挑発が過ぎた。流石に、次の瞬間に少女の眼鏡が弾け飛ぶのを想像した。
以下略



19: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/08/31(日) 22:53:37.65 ID:FWRyUZRr0

 ぴしゃ、ぴしゃ、と水を踏む音が二つ。
 拳は空を切った。
 少女は左に踏み込み、金髪の拳が流れるのを右に眺めた。
 そのまま少女は空振りしてつんのめった金髪の足を、残していた右足で蹴り払った。
以下略



20: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/08/31(日) 22:55:15.76 ID:FWRyUZRr0

 最初は派手に呻き声を上げていた金髪の反応が徐々に弱々しくなっていく。まずい。もはや吐くのは血反吐のみ、というところで少女は跳ねるのをやめた。
 金髪の背で直立し、首を傾げる。

「ありゃりゃ、もしもし?どうしたのよ。元気ないじゃないのよ。日々の生活の疲れが、まさに今、どっと押し寄せてきちゃった?燃え尽き症候群?ガソリンが燃え尽きて、ガス欠、みたいなやつよね確か。あ、違う?まあ、間違っててもどうでもいいけどね。よっしゃ、ここはアタシが給油してあげるっきゃないわね」少女の右手で、何かが光った。
以下略



21: ◆N7YbsBIT3ELs[saga]
2014/08/31(日) 22:58:02.84 ID:FWRyUZRr0

 市販の物とはとても思えない、不必要に尖った部分のある鋭いデザイン、研ぎ澄まされ過ぎた刃。危険な匂いしかしない。鉄の香りがわたしの鼻先まで漂ってくるかのようだった。
 刃先が金髪の身体に向く。だらだらと長い金髪の散髪をしてあげる、という様子ではない。
 切っ先そのまま、少女は迷いなく鋏を突き出した。
 鋏は金髪の右肩に刺さった。
以下略



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