73: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/09/26(金) 23:21:13.62 ID:fTpXk5n+O
赤城は、いまだ視認には遠すぎる敵空母を睨みつけた。
視線を片時も外さないまま、つい先刻のやりとりを反芻する。
74: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/09/26(金) 23:23:29.63 ID:fTpXk5n+O
航空戦の結果、味方艦隊まで到達した敵艦載機は一機たりとも存在しなかった。
いかに「鬼」といえど四対一では無理もない。
敵方に随伴する防空艦が一隻でもいれば、また状況は違っただろう。
75: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/09/26(金) 23:25:08.16 ID:fTpXk5n+O
二航戦が軽口を叩いていたが、今の赤城に乗る余裕はない。
霧の向こうを見通さんばかりに凝視する。
唾を飲もうとして飲みこみそこねた。
喉がカラカラだった。
76: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/09/26(金) 23:26:37.55 ID:fTpXk5n+O
表情を視認するにはまだ遠いが、赤城には一つ、確信できたことがあった。
敵――空母棲鬼はこの血腥い地獄にあって、なお嬉しそうに笑っている。
77: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/09/26(金) 23:28:19.49 ID:fTpXk5n+O
だが。
「堅い……っ!」
78: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/09/26(金) 23:30:52.92 ID:fTpXk5n+O
赤城の脳裏をぐるぐると巡る疑問のうち、一つが次の瞬間霧散した。
「……あ」
79: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/09/26(金) 23:32:19.05 ID:fTpXk5n+O
規格外、そう言う他にない。
装甲、耐久に加えて、敏捷性も尋常なものではなかった。
先ほどはこちらの攻撃を避ける素振りも見せなかったが、その気になれば極めて高い回避性能を発揮するだろう。
80: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/09/26(金) 23:33:30.59 ID:fTpXk5n+O
しかし戦局は待ってはくれない。
焦りを押し殺したように声を張り上げたのは利根だった。
81: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/09/26(金) 23:36:43.83 ID:fTpXk5n+O
『加賀、鶴だ。お前にもわかっているだろう』
耳の内側から声がした。
82: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/09/26(金) 23:38:14.89 ID:fTpXk5n+O
「しかし、『鶴』は護衛艦隊への損害が……」
『時間がない。加賀、これは当然のことだが、艦隊運用に付随する事象のすべては私に帰責する』
83: ◆F.lQmLP.5M[saga]
2014/09/26(金) 23:40:04.27 ID:fTpXk5n+O
全艦が後退を停止した。
輪形陣を崩して水雷戦隊が密集隊形をとる。
満身創痍の駆逐隊に変わって霧島が、榛名が利根が筑摩が、次々とその身を砲弾に晒した。
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