10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:27:31.01 ID:Ha53zHbko
僕はこの頃、あいさんのことをよく考える。
彼女は異様に冷めていて、誰のことも好きじゃないみたいだった。
僕はなぜだか、彼女に惹かれ始めていた。以前とは違う惹かれ方だ。
「好きなんだけどな」
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2014/10/06(月) 21:28:28.18 ID:Ha53zHbko
撮影を終えたあと、二人でファミレスに立ち寄った。
正午をすでに二時間も回ったところで、店は空いていた。
「例えば、私がお子様ランチを注文したら、君は驚くだろう」
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2014/10/06(月) 21:29:43.74 ID:Ha53zHbko
「どうせ、たらこスパだろ」
「お子様ランチでも頼んでみましょうか?」
「頼めるものなら、是非に」
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2014/10/06(月) 21:31:18.34 ID:Ha53zHbko
なるほど、食後の一服まで気を回してくれたんだな。
ここのファミレスは全席禁煙で、外にこじんまりとした喫煙スペースが設けられている。
吸わなくても平気です。そう言おうと思ったが、お言葉に甘えることにした。
「じゃ、すみません。出ましょうか」
14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:32:50.93 ID:Ha53zHbko
「ところで、君は恋人は?」
「居ませんよ?」
「以前はどうだったんだい」
15:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:33:56.96 ID:Ha53zHbko
「覚えてないです」
「……そういうものか?」
「さあ」
16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:34:54.52 ID:Ha53zHbko
「僕も、似たような理由で別れたような気がします」
「君は言われた側?」
「ええ、はい。たぶん」
17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:37:00.38 ID:Ha53zHbko
――――
プロダクションのビル、その屋上へ続く扉はリウマチ持ちだ。
錆びついた蝶番がギシギシと鳴っていて、微かに歪んだ隙間から風が通るので、
扉から内側はとても寒い。
18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:38:26.83 ID:Ha53zHbko
「他に吸えるところ、なかったっけ」
「どこもかしこも禁煙ですから」
一口吸うと、もう根本まで灰が伸びていて、ジジと音がした。
19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/10/06(月) 21:39:00.89 ID:Ha53zHbko
「鱗雲だ」
「秋の空ですから」
「青い空だな」
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2014/10/06(月) 21:40:52.39 ID:Ha53zHbko
屋上を降りて、デスクから荷物を取って、車へ乗り込んだ。
助手席でシートベルトを締めたあいさんの横顔を、僕は盗み見た。
彼女とは軽口を叩き合うくらいに、打ち解けているはずだった。
以前から、打ち解けていると思っていた。
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