1:名無しNIPPER[saga]
2015/03/10(火) 01:14:57.91 ID:eIfs/RqE0
  
  「すっかり遅くなったな」  
    
    
  一向に進む気配のない渋滞に辟易としながら、俺は助手席に身を預ける藤原肇にそう投げかける。  
    
    
  「………え? あ、はい。そうですね…」  
    
    
  肇は一間を置いて、ただ反射的にそう答えた。  
    
  疲れているのだろう。声色からだけではない、シートに完全に体重を預け、凭れ掛る姿からもそれが容易に見て取れる。  
    
    
  「日のあるうちには帰れる予定だったんだけど… 俺のミスだ。ごめんな」  
    
  「いえ… あの監督さん、撮影が長引く事で有名ですから」  
    
    
  目頭を揉み、笑みを携えながらそう言った。  
    
  年若い少女には似つかわしくない、萎びた笑顔だと思った。  
    
  申し訳ないと言う俺に対する気遣いが手に取る様に伝わってくる。  
    
  肇に何の責任も無いのに、そんな風に気を遣らせている。  
    
  俺はただもう一度だけ『すまない』と心の中で呟いた。  
    
    
    
  
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2:名無しNIPPER[saga]
2015/03/10(火) 01:16:49.85 ID:eIfs/RqE0
  
 「寝ていても全然構わないんだぞ?」 
  
  
 もう日付の変わりそうな時計を一瞥しながらそう言った。 
3:名無しNIPPER[sage]
2015/03/10(火) 01:16:59.82 ID:ckZPjKDHo
 よう、久しぶり 
4:名無しNIPPER[saga]
2015/03/10(火) 01:18:21.82 ID:eIfs/RqE0
  
 「俺の鞄から携帯取ってくれる?」 
  
 「運転中ですが…」 
  
5:名無しNIPPER[saga]
2015/03/10(火) 01:20:24.56 ID:eIfs/RqE0
  
 「………」 
  
 「…どうした?」 
  
6:名無しNIPPER[saga]
2015/03/10(火) 01:22:32.35 ID:eIfs/RqE0
  
 「でしたら、プライベート用もあるんですか…?」 
  
 「ん。ああ、ほら」 
  
7:名無しNIPPER[saga]
2015/03/10(火) 01:24:30.69 ID:eIfs/RqE0
  
 「それでちひろさんに…」 
  
 「あ… すみません」 
  
8:名無しNIPPER[saga]
2015/03/10(火) 01:26:15.18 ID:eIfs/RqE0
  
 『___… __!』 
  
 「あ、はい、そうです… すいません…」 
  
9:名無しNIPPER[saga]
2015/03/10(火) 01:28:54.08 ID:eIfs/RqE0
  
 「はぁ…」 
  
 「あの… 大丈夫ですか?」 
  
10:名無しNIPPER[saga]
2015/03/10(火) 01:31:09.60 ID:eIfs/RqE0
  
 「そ、その、ええっと… そういうことではなくて…」 
  
 「いやいや、心配しなくてもいいぞ。一部屋しか無かったら俺は車で寝るから」 
  
11:名無しNIPPER[saga]
2015/03/10(火) 01:33:58.07 ID:eIfs/RqE0
  
 ____ 
  
  
 「まさかエレベーターが修理中とはな…」 
12:名無しNIPPER[saga]
2015/03/10(火) 01:36:08.41 ID:eIfs/RqE0
  
 「あ… そうですか………」 
  
 「いや… うん」 
  
13:名無しNIPPER[saga]
2015/03/10(火) 01:39:02.95 ID:eIfs/RqE0
  
 「私は… 大丈夫です」 
  
  
 日頃からレッスンを積んでいますからって、俺に微笑みかけた。 
14:名無しNIPPER[saga]
2015/03/10(火) 01:40:44.97 ID:eIfs/RqE0
  
 「…それに、高い所は好きですから」 
  
  
 何とかしないとって頭の中で話題を探していると、ふとそんな声が聞こえた。 
15:名無しNIPPER[saga]
2015/03/10(火) 01:42:18.21 ID:eIfs/RqE0
  
 ____ 
  
  
 「はぁ…」 
16:名無しNIPPER[saga]
2015/03/10(火) 01:44:06.84 ID:eIfs/RqE0
  
 「…アホくさ」 
  
  
 余りにも無意味過ぎた思考を一言の内に一蹴する。 
17:名無しNIPPER[saga]
2015/03/10(火) 01:45:54.32 ID:eIfs/RqE0
  
 ___ 
  
  
 コンコン… 
18:名無しNIPPER[saga]
2015/03/10(火) 01:47:36.78 ID:eIfs/RqE0
  
 「…どうしたんだ?」 
  
  
 何とか常時の声色を保っていたと思う。 
19:名無しNIPPER[saga]
2015/03/10(火) 01:49:35.21 ID:eIfs/RqE0
  
 「………」 
  
 「………」 
  
20:名無しNIPPER[saga]
2015/03/10(火) 01:51:51.33 ID:eIfs/RqE0
  
 「急にすみません。お休み中でしたよね…?」 
  
 「いや、全く。俺も眠れなくて困ってたんだ」 
  
21:名無しNIPPER[saga]
2015/03/10(火) 01:53:32.29 ID:eIfs/RqE0
  
 「…お茶でも煎れるわ」 
  
 「でしたら、私が」 
  
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