229: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:03:04.96 ID:py78Qnqv0
ディーが構成員の生存を告げると虎城が顔を上げた。
「どういうことです?」
やっと声を出している状況だった。虎城は自分の班員が生き残っているとは思っていなかったのだ。もちろん、生きていてくれるのならそれが一番である。しかし、油断しているところを強襲されたという事実が彼女の頭を悪い方向に考えさせている。
230: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:06:24.77 ID:py78Qnqv0
井上純の報告を聞いたハギヨシは十秒ほど黙っていた。そして冷えた声でこういった。
「あぁ、そういうつもりですか。はっきりとした証拠がないのと、先輩と私の立場が悪いのを利用しているわけですね。
かつてヤタガラスの利益の幾つかをつぶした私たちが共謀して松常久を貶めようとしていると、そういうストーリーを作ろうとしているわけですか。
231: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:10:24.50 ID:py78Qnqv0
松常久の延命についてハギヨシが推測をすると、虎城はこういった。
「十四代目は松常久を怪しいと思っていたはずです。内偵を進めたのもそのため。今回の一件で黒が確定したとみていい。逃げられるわけがない。無駄な足掻きのはず」
虎城の指摘にハギヨシが答えた。
232: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:13:56.41 ID:py78Qnqv0
パーティー会場に招待されているものたちの反応はいろいろだった。しかしほとんどの人は黙って聞いていた。わずかに鼻で笑っている人たちがいて、ほんの数人だけまったく違った行動をとっていた。
会場のほとんどは、黙って聞いている人たちである。黙って聞いている人たちは同意しているから黙っているのではない。何がおきたのかさっぱりわからないから、話を聞いているのだ。いきなり始まった演説である。どういう流れの事件が起きているのか理解するために話を聞いていた。
虎城やディーのように実際に襲われた人ならばすぐに嘘だとわかるだろう。特に松常久は悪魔に堕ちてしまっている。この事実だけでも、十分処刑される罪なのだ。
233: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:17:55.60 ID:py78Qnqv0
龍門渕透華と井上純が騒がしくしていると、パーティー会場が静まり返った。会場の出席者たちがハギヨシの出現に気がついたのだ。
パーティー会場にハギヨシが姿を現したところで、空気ががらりと変わった。会場にいた者たちは動きを止めて、言葉を吐き出せるものはいなくなった。演説を行っていた松常久も生き残りの黒服三人も黙り込んで動けなくなっていた。
それもそのはず、会場に現れたハギヨシから漂う空気があまりにも剣呑だった。今まで汗だくになって騒いでいた松常久の汗が一気に引いて、青ざめるほどである。ハギヨシから発せられている空気は非常にわかりやすい主張がこもっていた。
234: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:21:26.46 ID:py78Qnqv0
演技を続ける松常久に虎城が叫んだ。
「嘘だ! あんたたちはオロチにいた! 私たちを殺すために追いかけてきた! オロチを目覚めさせて混乱を招いたのを忘れたか!」
235: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:25:33.29 ID:py78Qnqv0
この複数の幹部級の裏切り者というもしもがなければ、結末は松常久の処刑で終わるだろう。確実に誰かが始末する。
ただ、始末されればそれでいいのだろうか。少なくとも傷つけられたもの、馬鹿にされたものが救われない。
236: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:29:24.88 ID:py78Qnqv0
アンヘルは気の抜けた返事をした。
「へ?」
まったく何がおかしいのかわかっていないようだった。アンヘルにしてみればまったく嘘などないからだ。
237: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:32:45.79 ID:py78Qnqv0
パーティー会場で面倒が起きているとスズリが話をすると、国広一はこういった。ずいぶん驚いていた。
「ハギヨシさんまで?」
238: ◆hSU3iHKACOC4[saga]
2015/05/05(火) 00:36:31.84 ID:py78Qnqv0
スズリに案内されて京太郎はパーティー会場に到着した。京太郎が会場の扉を開いたとき、すべての視線が、京太郎に注がれた。静まり返った会場だったのだ。そんなところで扉が壁にぶち当たっている。普通でもうるさい音なのに、静まり返っていたためにとんでもない騒音になっていた。
扉を思い切り開いた京太郎は、扉を開いた格好のままでほんの少しだけ固まった。自分がいまいち加減ができていないのを忘れていたのだ。そしてお値段の高い扉をおそらく壊しただろうという予感で青ざめたのだった。
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