26:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:20:00.42 ID:lE2tgw5So
やだなあ、これはじょうだんです。
喉が震えていた。
ことりはもっと、隠し事が上手だったはずなのに。
27:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:20:26.99 ID:lE2tgw5So
私の腰に、ことりの指が触れる。声を洩らしてしまう。
伸びた腕が私の背中を強く引き寄せる。
28:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:20:53.56 ID:lE2tgw5So
体冷えちゃうね、とことりが言う頃にも、
私はまだことりと繋がっているようで、生まれたばかりのようにぼんやりしていた。
すると急に頭の上から暖かい水流が降り出す。
29:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:21:20.25 ID:lE2tgw5So
「うみちゃ、シャワー、なんとかして、ぷふっ、鼻にはいる」
「あはっ、すみません、」
手探りで蛇口を締めた。
いろいろな後遺症がまだ続いている。
30:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:21:46.81 ID:lE2tgw5So
「……海未ちゃん。ちゅうして」
動けない私の腕を引く。
床にはしたなく身体をもたげたまま、
31:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:22:13.36 ID:lE2tgw5So
ざぶざぶとあふれる水流の音が引くまで、私たちは何も言わなかった。
向かい合った反対側で、ことりが静かに見つめている。
その後ろの窓からは、曇りガラスごしにも分かるほど月の光が滲んでいた。
32:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:22:39.95 ID:lE2tgw5So
「その、……ええと、衣装づくりですよ。デザインとか、どうやって考えてるのかなと」
ああ、と合点がいったことりはぱっと顔を明るめ、それから口元に指を当てて考え込む。
33:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:23:06.50 ID:lE2tgw5So
ぱちゃりと水面から反対の手が伸びて、濡れた指が私の頬をなぞる。
そのまま耳たぶをつまんでみたり、あごをくすぐってみたり。
「っ、またですか」「ほんっときれいだよねぇ」
34:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:23:33.05 ID:lE2tgw5So
そのまま顔をいいようにされながら、歌詞の書き方を捉えなおしていた。
窓の方を見ようにも、首や頬に動く指先が邪魔してうまくいかない。
目を閉じた方がずっと楽だった。
35:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:24:00.08 ID:lE2tgw5So
「その、私の歌詞の話です。
うまく言えませんが、きっと私の心が考えて、手が書いているんです」
私の奥深くの、自分でも分からない場所の声を、手が聞き取っている。
36:名無しNIPPER[sage saga]
2015/04/05(日) 18:24:26.66 ID:lE2tgw5So
――ここに、海未ちゃんのこころがあるの?
ことりはそのまま目を閉じて、私の心拍を聞いていた。
載せられた手に何かを伝えようと、私の心拍が大きくなる。
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