2: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/08(水) 23:53:22.80 ID:9CplnFxm0
ざらざら、ざらざらと。
今日も雨が降っている。ここのところは特に雨続きだ。季節はまだ、春だというのにね。
こんな天気じゃあ、咲いた桜もすぐに散ってしまうことだろう。
なんとも悲しい話だ。ここに桜の木なんて一本もありはしないのだけど。
3: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/08(水) 23:54:55.26 ID:9CplnFxm0
……初対面のお客様に、いきなり話すようなことではなかったかな。
どうも、はじめましてかな? それとももう、何度か会っているかな?
挨拶はこんにちはでいいだろうか。それともこんばんはと言うべきか。あるいはおはようと言った方がいいのかもしれないね。
申し訳ないね、さっきも言ったように雨続きなものだから。
4: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/08(水) 23:55:45.13 ID:9CplnFxm0
意地悪だと思うかな?
ごめんごめん。でもここは本当に退屈なんだ。
だから珍しい客人を相手に、ちょっと遊びに付き合ってもらおう……なんて、考えてしまうのも仕方ないことなのさ。
代わりと言ってはなんだけど、ボクも君の名前は問わないでおこう。
5: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/08(水) 23:56:35.53 ID:9CplnFxm0
好きなものを好きなように扱ってくれていい。
別にそんな、価値のあるようなものがこんなところにあるはずもないからね。
おっと、口が滑った。仮にも司書がそんなことを言ってはいけないな、うん。
6: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/08(水) 23:58:20.31 ID:9CplnFxm0
「……」
そう言ってわたしに白いカードを押し付けると、彼(?)は入口の方へと戻っていきました。
いったい何者なのだろう、彼は。自分のことをボクと呼んでいた以上、おそらくは男性なのでしょうが。
しかしその背も、体格も小柄で、大人にはとても見えません。
7: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/09(木) 00:02:08.77 ID:L/XPeEV/0
ぎいぎいと、蝶番が悲鳴をあげながら開いていきます。
図書館のドアがこんなにうるさいのはいかがなものでしょうか――と思いますが、しかし実際、問題はなかったようです。
なぜならその部屋は、真っ暗だったからです。
他の利用者などいようはずもありません。
8: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/09(木) 00:04:11.37 ID:L/XPeEV/0
「……ふぅっ」
「ひぃぁぅっ!?」
突然真後ろから声が聞こえ、生暖かい空気が首筋を舐めて行きました。
9: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/09(木) 00:05:14.70 ID:L/XPeEV/0
……あれ?
彼、先ほど会ったときに見たものとは、別の仮面をつけています。
茶色がかった髪の、カチューシャをつけた可愛らしい女の子の仮面。
10: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/09(木) 00:07:14.26 ID:L/XPeEV/0
そこには、棚がありました。
でも本棚ではありません。棚です。ショーケース、というのが的確でしょうか。宝石店にあるようなたぐいのものです。
しかし、よくわからないのがその中身。
11: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/09(木) 00:08:11.02 ID:L/XPeEV/0
ちょっと待ってね、と彼がカードのようなものを取り出します。
先ほどもらった貸し出しカードに似ていますが、彼の持っているものは黒い色をしています。
それを読み取り機のようなものの上に近づけると、ピッと音がしてショーケースの蓋が開きました。
12: ◆sXMLNpttdw[saga]
2015/04/09(木) 00:09:22.60 ID:L/XPeEV/0
Memory - サッカーボール
女の子がいます。
背の高さはわたしの腰よりちょっと高いくらいの小さな子です。小学校に入ったばかり、といったくらいの歳でしょうか。
その女の子の前には柵がありました。わたしの背丈よりも高さがあって、柵の先が槍状になっています。
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