1: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/05/23(土) 17:25:31.86 ID:WT24WuKIo
大きな夢を抱いて、小さな現実だけが残る
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2: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/05/23(土) 17:27:04.70 ID:WT24WuKIo
彼が生まれ故郷を旅立ったのは暗い小雨の夕方だった。
十三歳とまだ若く、いや幼いといっていいほどで。
不安もきっとあったろう。
彼は当時をこう語る。
3: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/05/23(土) 17:28:08.46 ID:WT24WuKIo
彼はそれから都市につく。
広々とした道にあふれる人、人、人。
満ちる活気と熱気と声。
長い旅路に疲れていたが、彼の目だけは輝いた。
4: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/05/23(土) 17:28:58.78 ID:WT24WuKIo
彼のそこでの生活は、まずまずの滑り出しだったらしい。
労働者用の部屋を借り、朝から街へと繰り出す日々。
靴磨きから始めてそこそこできて、掃除の仕事工事の人足酒場の手伝いたまにまた靴磨き。
きついと思うこともあったと言う。それでも投げ出すことはしなかった。
5: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/05/23(土) 17:30:01.97 ID:WT24WuKIo
彼が二十になった頃、転機がやってくる。
いや本当の転機はもう少し先。
だからこれは最初の小さな転機。
彼は彼女に恋をした。
6: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/05/23(土) 17:47:56.49 ID:WT24WuKIo
酒場の看板娘の彼女のことは、もちろん彼も知っていた。
手伝いの身ゆえあまり話すことはなかったものの美人は男の目を奪う。
よどむ酒場の空気の中でその人だけは輝いていた。
7: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/05/23(土) 17:48:33.92 ID:WT24WuKIo
とはいえ彼女はしっかり者だった。
遊ぶことなく、誘いに乗らず。
強引な輩は酒場のマスターたる父親が、優しく丁寧にひねりつぶした。
8: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/05/23(土) 17:49:03.90 ID:WT24WuKIo
そんな会話もうれしかった、と彼は言う。
そのうちすぐに成り上がるから、そしたら約束守ってくださいよ。
彼女が笑顔でうなずくのを見てますます仕事に取り組んだ。
9: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/05/23(土) 17:49:42.98 ID:WT24WuKIo
彼が自嘲するのはもっと馬鹿をやったからだ。
「広場の片隅、いつも通り靴磨きをやってる時だった。その客が俺に言うんだよ。
稼ぎのいい仕事があるんだが、ちょいと手を貸してはもらえんか?
10: ◆i2.pJBgDO.[saga]
2015/05/23(土) 17:50:44.04 ID:WT24WuKIo
結果からいって、彼は十分すぎるほどの額を得た。
そしてその分失った。
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