561: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/09/14(月) 21:30:47.01 ID:abxhPIPDO
あのモニターの映像はシミュレーター内のメインモニターに映っているものだ。つまり、ライが見ている映像ということである。
ライの<サザーランド>は起動直後であり、無防備極まりない状態だ。それを、敵の<サザーランド>が射撃姿勢で待ち構えている。眠りから覚め、眼を開けたら銃を突きつけられているのと同じだ。しかも事前情報など一切ない状況である。これでは対処のしようがない。
562: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/09/14(月) 21:31:31.80 ID:abxhPIPDO
敵<サザーランド>の構えていたライフルが光る。発砲の際に生じるマズルフラッシュだ。相対距離は僅か三〇メートル。これでライの機体は破壊され、シミュレーションは終わりを迎える。なんとも呆気ない幕切れだった。
しかし、終わらない。
563: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/09/14(月) 21:33:26.33 ID:abxhPIPDO
眼前には二体の<無頼>。双方とも旧式のウィンチェスター・ライフルを構え、三〇ミリ弾を乱射してくる。
ランドスピナーを展開したライの<サザーランド>は弾幕の中をくぐり抜け、回避機動を行いながら発砲した。FCSに頼らない、完全なマニュアル射撃。敵KMFの行動を司るAIはなすすべなく直撃を受け入れる。
564: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/09/14(月) 21:34:22.10 ID:abxhPIPDO
「…………」
三人の内、なぜかロイドだけはつまらなそうにモニターを見ている。いや、つまらないというより、もどかしいと言ったほうが適切か。どちらにしても不機嫌な事には変わりない。
565: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/09/14(月) 21:35:52.01 ID:abxhPIPDO
「シミュレーションに出てくるのは当然、既に組まれているプログラム。そこに不確定性は存在しない……つまり、相手の行動に対して決まった動きしか返せないわけ」
「それは……そうでしょうけど、それが今の状況に何の関係が?」
566: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/09/14(月) 21:37:52.44 ID:abxhPIPDO
コックピットが開き、ライが降りてくる。汗一つかいていない。疲労など微塵もないようだった。
「つまらなかったでしょ?」
567: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/09/14(月) 21:40:18.78 ID:abxhPIPDO
「お待たせしました」
礼を告げながらライが戻ってくる。
568: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/09/14(月) 21:49:47.18 ID:abxhPIPDO
「あ……いや」
気づかれるのは当たり前だった。ロイドはナイトメアの研究を精力的に行っていて、セシルはその助手だ。ならば、この環境におけるスザクの役割とは何か?
569: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/09/14(月) 21:51:46.32 ID:abxhPIPDO
「スザク君にはここでテストパイロットをやってもらっているの」
「じゃあ、シミュレーターは……」
570: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/09/14(月) 22:11:21.21 ID:abxhPIPDO
セシルとライは話しながら医務室に向かう。採血などの身体検査を行うためだ。
暗い室内に照明が灯り、椅子を進められたライが着席する。女性士官は張り切っていたが、注射器などがどこにあるか分からないらしく、にわかに慌て始めた。被験者はそれを静かに見ている。
571: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/09/14(月) 22:12:37.69 ID:abxhPIPDO
あえなく四度目も失敗し、自分がやろうかとスザクが言い出そうか考えていると、ライは静かに左手で自分の右腕を指差し、
「……静脈はここです」
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