930: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/26(木) 21:46:35.35 ID:w5GHjmWDO
だが、勝機はある。たったいま見つけたばかりのチャンスが。一泡吹かせてやろう。モーション・サポートを切って出力を最大へ。機体の扱いが難しくなる代わり、今までより鋭く動く事が出来る。
ヴェトロニクスもフル・オープン。この<サザーランド>は既にライフルを失っている。接近戦をやるしかない。
931: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/26(木) 21:48:32.22 ID:w5GHjmWDO
瞬時に二騎を撃破。残るは一騎。つい先ほどまで圧倒的な存在感を放っていた敵<サザーランド>からは、呆気に取られたような無警戒さが漂っていた。
絶対的に有利な、勝って当たり前の状況を一瞬で覆されたのだ。しかも直前の攻防における、一対一での単純な力比べでも圧していたのだから、その精神的ショックは計り知れないだろう。
932: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/26(木) 21:52:39.75 ID:w5GHjmWDO
「……疲れた」
夢から覚めたような感覚。ライは深く息を吐いて、肩をすくめた。戦闘でここまで疲労したのは初めてだった。
933: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/26(木) 22:04:28.21 ID:w5GHjmWDO
「うんうん。相性は理想的だね〜。疲れただろうし、しばらく休憩してて。僕はデータを纏めてくるから」
ロイドはデスクトップから大容量のUSBメモリを引き抜き、それを白衣の右ポケットに入れた。彼は大切な物を決まった場所に入れる癖がある。
934: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/26(木) 22:06:31.16 ID:w5GHjmWDO
「そうなのか」
基本的に三人しかいない職場だ。時間の経過で自然に作られた、独特の慣習があるのだろう。ライは冷たいコーヒーを飲みつつ、そんなふうに思った。
935: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/26(木) 22:07:44.81 ID:w5GHjmWDO
「……うん。そうかもしれない」
「頼れる相方が出来たらいいな。いくら君が強くても、一人では不可能な事も多い」
936: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/26(木) 22:09:51.80 ID:w5GHjmWDO
ライは傍らに置いておいたコンテナ型の武装を取り出し、肩に担ぐ。ナイトメア用の四連装対空ミサイルだ。ファクトスフィアを展開しつつ目標をロック。発射。
レーザー誘導式の小型ミサイルは遠距離の敵を狙えるが、その代わりに速度が出ない。ヘリはフレアとバルカン砲をばらまきながら急激に旋回した。
937: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/26(木) 22:11:02.71 ID:w5GHjmWDO
『受け取った……のかな? これは』
こういった操作は普段、セシルにやってもらっているのだろう。もたつきながらも目標物へと接近したスザクは機体を走らせ、護衛の<無頼>二騎へ躍り掛かる。建築物が邪魔で、こちらからの援護は行えない。
938: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/26(木) 22:12:03.15 ID:w5GHjmWDO
ライの<サザーランド>はビルの頂上からさらに高い建築物にハーケンを撃ち込み、ブランコの要領で空中を移動していた。落下エネルギーと遠心力を器用に操り、勢いが十二分に乗ったところでアンカーを外す。
結果として機体は先ほどよりも高度を上げることが出来るわけだ。後は滞空しながら同じようにハーケンを射出し、ビルの間を飛び回る。先進国の都市レベルで高い建物が乱立していなければ使えない手だが、理論上はこれが最も速度を稼げる方法だ。
939: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/26(木) 22:13:42.68 ID:w5GHjmWDO
「……ふう」
今度はミスをしないよう気を張り直す。正直、敵と戦っている時より必死だった。なにより恐ろしいのは自分自身ということか。
940: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/26(木) 22:14:37.98 ID:w5GHjmWDO
「今日は早く終わって良かった。いつもは深夜まで掛かるから」
「そうなのか」
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