936: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/26(木) 22:09:51.80 ID:w5GHjmWDO
ライは傍らに置いておいたコンテナ型の武装を取り出し、肩に担ぐ。ナイトメア用の四連装対空ミサイルだ。ファクトスフィアを展開しつつ目標をロック。発射。
レーザー誘導式の小型ミサイルは遠距離の敵を狙えるが、その代わりに速度が出ない。ヘリはフレアとバルカン砲をばらまきながら急激に旋回した。
937: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/26(木) 22:11:02.71 ID:w5GHjmWDO
『受け取った……のかな? これは』
こういった操作は普段、セシルにやってもらっているのだろう。もたつきながらも目標物へと接近したスザクは機体を走らせ、護衛の<無頼>二騎へ躍り掛かる。建築物が邪魔で、こちらからの援護は行えない。
938: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/26(木) 22:12:03.15 ID:w5GHjmWDO
ライの<サザーランド>はビルの頂上からさらに高い建築物にハーケンを撃ち込み、ブランコの要領で空中を移動していた。落下エネルギーと遠心力を器用に操り、勢いが十二分に乗ったところでアンカーを外す。
結果として機体は先ほどよりも高度を上げることが出来るわけだ。後は滞空しながら同じようにハーケンを射出し、ビルの間を飛び回る。先進国の都市レベルで高い建物が乱立していなければ使えない手だが、理論上はこれが最も速度を稼げる方法だ。
939: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/26(木) 22:13:42.68 ID:w5GHjmWDO
「……ふう」
今度はミスをしないよう気を張り直す。正直、敵と戦っている時より必死だった。なにより恐ろしいのは自分自身ということか。
940: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/26(木) 22:14:37.98 ID:w5GHjmWDO
「今日は早く終わって良かった。いつもは深夜まで掛かるから」
「そうなのか」
941: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/26(木) 22:15:26.63 ID:w5GHjmWDO
「君がこの前、あそこのお店を助けてくれたからね。店主さんからのお礼だよ」
一週間ほど前のことだ。スザクとライがたびたび訪れているあのクレープ屋に、数名のブリタニア人男性が難癖を付けるという出来事があった。
942: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/26(木) 22:18:15.25 ID:w5GHjmWDO
ムキになった男性には格闘技の嗜みがあったようで、激しい抵抗を試みてきた。
どんな武芸でも基本は重心の操作、体幹の維持だ。ライがやっているのはそれらを無理やり乱すことなので、事態は悪い方向に向かってしまった。
943: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/26(木) 22:19:07.74 ID:w5GHjmWDO
しかし腕をスザクに掴まれる。彼の視線を追ってクレープ屋を見ると、店主の日本人男性と目が合った。
頭を下げられる。なんとなく気まずくなって、ライの方も頭を下げた。本当に申し訳なかった。
944: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/26(木) 22:19:48.84 ID:w5GHjmWDO
生徒会のメンバーやナナリーはライの無表情に隠されている内心を良く看破するようになって来ている。表情が豊かになるなどの変化があったわけではなく、単純に周囲の人の観察眼が優れているだけだ。
「君も知っていると思うけど、ああいう事は日常茶飯事なんだ。……本当に、毎日のようにある」
945: ◆QH3tH0UkImyM[saga]
2015/11/26(木) 22:21:04.89 ID:w5GHjmWDO
スザクが優しいだけ、というわけではないのだろう。日本人の現状を見て許容できているのなら、それは器が大きいのではない。器に穴が空いているだけだ。
彼からはなによりも強い、悔恨や贖罪を背負っている印象を受ける。日本政府最後の為政者がスザクと同じ性だったが、もしかしたらそれと関係しているのかもしれない。
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