過去ログ - 律子「待ちくたびれたプロデューサーへ」
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22:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/23(火) 02:14:05.51 ID:O6N65gcso
 会場のほうでわあっ、と歓声が湧いたのが聞こえた。
 流れていたBGMがいつの間にか、消えていた。じっとりと空気が張り詰める。

 いよいよ、開演する。これで、最後なんだ。

以下略



23:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/23(火) 02:14:33.14 ID:O6N65gcso

「……ね、プロデューサーは、私のこと、どう思ってた?」

「律子のこと?」

以下略



24:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/23(火) 02:15:39.96 ID:O6N65gcso
 7

 私は幾千の目をほどくように手を振って、ステージを降りた。
 裏は開演前と相変わらず、薄暗い。
 プロデューサーが一番に、私を待っていることは分かっていた。
以下略



25:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/23(火) 02:16:05.38 ID:O6N65gcso

 少し走ると息が切れてしまって、河川の上へかかる橋の途中で立ち止まった。
 最後だと、これで最後なんだと分かっていたはずなのに。
 私は橋の欄干にしがみついて、やっとの思いで立っている。
 ステージの上へ、やっとの思いで立っていたように。
以下略



26:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/23(火) 02:16:44.45 ID:O6N65gcso

「律子! このバカ!」

 プロデューサーの声が聞こえて、私はよかった、とため息をついた。
 彼は息を切らしながら走って、やって来た。
以下略



27:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/23(火) 02:17:57.52 ID:O6N65gcso
 心臓が押さえつけている下で、破裂しそうな魂が金切り声を上げていた。
 足元の水たまりを思い切り踏みつけると、底に溜まっていた泥が煙のように混ざって、ひっくり返ったように跳ねた。
 普段は絶対はかない踵の高い靴、靴下、ひらひらのついたスカート、せっかく綺麗なのに、汚れてしまった。
 傷つけるように水を蹴って、みんな汚した。

以下略



28:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/23(火) 02:18:23.77 ID:O6N65gcso

「バカっ、律子」

「は、離してください!」

以下略



29:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/23(火) 02:19:08.63 ID:O6N65gcso

 私はようやく暴れるのをやめて、疲れきった身体を任せた。
 しゃくり上げる背中と、汗で湿ったままの髪を、彼の手は優しく撫でてくれた。
 子どもをあやすように、あるいは緩やかに踊るみたいに、少し揺らした。

以下略



30:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/23(火) 02:20:01.18 ID:O6N65gcso

「これから……私、決めました」

「……先のことか」

以下略



31:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/23(火) 02:20:42.64 ID:O6N65gcso
 プロデューサーはゴシゴシと涙を拭って、両の手を私の頬へそっと添えた。

「な、なに……?」

「頑張れよ。絶対、忘れないからな」
以下略



32:名無しNIPPER[sage saga]
2015/06/23(火) 02:21:14.23 ID:O6N65gcso

「名残惜しいな」

「そういうこと言わないでよ、さよならが言いづらいじゃない」

以下略



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