過去ログ - 奉仕部の三人は居場所について考える
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890:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:48:33.38 ID:kAKMmD4ho
「おぉー、雪だー」

「さ、寒い……」

雪ノ下は肩を震わせながら、寒風に煽られて暴れまわる黒髪を手で懸命に押さえ込もうとしていた。
以下略



891:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:49:34.82 ID:kAKMmD4ho
「どうかしら……。明日には晴れるらしいから、積もるまではいかないんじゃない?」

千葉に雪が降ること自体珍しい。積もるとなれば尚更だ。それに今は、全く根拠のない願望に近い予想ではあるが、そうはならない気がした。

すべてを覆い隠してしまう雪はもう、積もらない。
以下略



892:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:50:33.56 ID:kAKMmD4ho
吹き付ける風は依然止まず、いくら身を寄せ合っていても寒いものは寒い。にも関わらず、俺たちは無言で雲が吐き出す息の残滓を眺め続けた。

あと何度、彼女達とこんな景色を見られるのだろうか。

いや、ここにある全ては今しか見られないのだ。俺たちはいつだって後戻りのできない今を過ごしている。
以下略



893:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:51:44.22 ID:kAKMmD4ho
だよな。こんな状況でそんなこと、言えないよな。自嘲と自虐で自己弁護するのはみっともねぇから、もうやめだ。

「……わかってるよ。俺はもう、ぼっちとは言わない。俺には……お前らがいるから」

それ以外の全てを壊してでも、大切にしたい人がいるから。
以下略



894:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:52:36.29 ID:kAKMmD4ho
「だな、戻るか。風邪引きそうだ」

「うん……」

寒さに負けてバルコニーから戻ると、部屋が温室のように感じられた。じわじわと沁みるように暖かさが浸透し、体が徐々にほぐれてくる。
以下略



895:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:53:34.16 ID:kAKMmD4ho
たいしたものじゃないが、何がいいかわからず考え抜いた残留思念のようなものは宿っているはずだ。いやなんかキモいなこの言い方だと。

二人ともなんのことかわからない様子で呆けていたが、はっと気づくと確認するように聞いてきた。

「これ……クリスマスプレゼント?」
以下略



896:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:54:15.97 ID:kAKMmD4ho
「そう……。気にしなくてもよかったのに」

「ヒッキー……。開けてもいい……のかな?」

「お、おお……。ほんとたいしたもんじゃねぇけど……」
以下略



897:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:55:15.78 ID:kAKMmD4ho
だが、俺は彼女達にはこれが似合うのではと考え、当人の色の好みと違っていたとしても、それでも構わないと結論付けた。それだけ…………じゃないよな。

自分でも薄々わかっている。根底にあるのはおそらく、ただの独占欲。彼女達のことは俺が一番わかっていると、そう思い込みたかった。

だがこれを赤裸々に語るには時期尚早な気がする。というか言っても大丈夫なことなのかよくわからない。
以下略



898:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:55:56.41 ID:kAKMmD4ho
「ん、まぁ……そうだな」

俺が言おうとしたことそのまんまだったので少し驚いてしまった。伝えようとしたのは、ちゃんと自分で考えた、というその一点だったからこれでいいはずだ。

「そう……」
以下略



899:名無しNIPPER[sage saga]
2015/10/17(土) 16:56:41.86 ID:kAKMmD4ho
「今髪に付けるといきなりでちょっと目立つから、ここで……」

「あはは……そうだね」

二人はシュシュを腕につけ、よく見えるよう胸の高さまで上げて見せた。袖口で青とピンクの花が揺れている。
以下略



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