過去ログ - 「Close to …side.Y」(オリジナルSS)
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名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/19(土) 22:41:29.83 ID:t+SnPtR2o
「一人暮らしって、やっぱり大変?」
「まあ、それなりかな。今はもう慣れたけど、最初は大変だった」
「そういや、授業中に居眠りしてたもんな」
以下略
36
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/19(土) 22:42:12.01 ID:t+SnPtR2o
「試しに、食べてみる?」
「箱崎の手料理?」
「あ、うん……えと、今から作れば夕飯にちょうどいいかも、だし」
以下略
37
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/19(土) 22:43:17.61 ID:t+SnPtR2o
――――
楽しいことはあっという間に終わるもので、学校が始まろうとしていた。
けれど、私は夏休みが終わることを憂いはしない。
一橋くんと二人きりで勉強ができた夏休みは楽しかった。
以下略
38
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/19(土) 22:44:40.58 ID:t+SnPtR2o
以前よりも三十分早くセットしておいた目覚ましで起きた私は、手早く二人分の弁当を作り、手ぬぐいで包んだ。
この手ぬぐいは前もって買っておいたもので、一番に手に取ったのは可愛い柄のものだったが、
一橋くんが友だちにからかわれるといけないから、あえて地味なものを選んだ。
でも、中身は色合いにも気を使ってとてもカラフルだから、きっと食べている間も楽しんでもらえると思う。
39
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/19(土) 22:45:18.46 ID:t+SnPtR2o
私は身繕いを済ませて部屋を出た。
もう以前の通学路は使わない。ぐるっと遠回りになるが、まずは一橋くんの家へと向かう。
彼の家の場所はこっそり調べておいた。あんまり驚かなければいいけれど。
ほとんど駆け足で道を行き、一橋くんの家の前に着いたのは午前七時くらい。
以下略
40
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/19(土) 22:46:15.12 ID:t+SnPtR2o
アレコレ考えているうちに、ようやく一橋くんの部屋のカーテンが開いたようだった。
窓のほうを見上げると、ちょうど彼と目が合った。
手を振ると、彼は怪訝な表情を浮かべ、玄関の外へパジャマのまま出てきた。
「おはよう、一橋くん。ふふっ、パジャマのままで、みっともないわよ」
以下略
41
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/19(土) 22:47:14.93 ID:t+SnPtR2o
本当は一緒に登校したかったけど、一橋くんの様子を見ると準備には時間がかかりそうだったからやめておいた。
私は何時間でも待てるけれど、彼はきっと気を使ってしまうだろうし。
さすがに八時くらいまでは、教室はガランとしていた。
八時を少し回るとクラスメイトが続々と登校してくる。
以下略
42
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/19(土) 22:48:03.96 ID:t+SnPtR2o
それから朝礼を終え、午前の授業が終わり、ようやく昼休みのチャイムが鳴ると、
彼は友人たちと談笑しつつ、私の作ったお弁当を手に食堂へと向かった。
それを見届けて、私はこの上ない満足感と、味はどうだっただろうかと少し不安を覚えた。
私は午後の授業中もずっと彼の背中を見つめていて、お弁当は気に入ってもらえただろうかとそればかり考えた。
以下略
43
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/19(土) 22:48:52.85 ID:t+SnPtR2o
「あのさ、箱崎……」
「あ、うん……あの、お弁当、どうだった?」
「そのことなんだけど……あ、えと、弁当箱、洗って返すよ」
以下略
44
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/19(土) 22:49:51.34 ID:t+SnPtR2o
「いや、そのさぁ……」
「も、もしかして、迷惑だった……?」
「迷惑というか、箱崎の負担になるだろ? 食費だってばかにならないだろうし」
以下略
45
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/19(土) 22:50:53.48 ID:t+SnPtR2o
――――
夏休みが明けてから、私の生活リズムは完全に変わった。それも、一橋くんを中心にして。
朝は六時に起きて二人分のお弁当と、自分の朝食を平行して作り、食事と身繕いを済ませ、軽く部屋を掃除する。
一橋くんが起きるのは七時から七時半の間なので、七時十五分には彼の家に着くように出発する。
以下略
46
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/19(土) 22:51:46.59 ID:t+SnPtR2o
一日の授業が終わって放課のチャイムが鳴ると、私は真っ先に彼のところへ行って、その日のお弁当の感想を聞く。
おしゃべりしながら途中までだけど一緒に帰る。
自分の家へ帰ってからは家事を済ませ、明日のお弁当のメニューを考えたり、料理の練習、余裕があれば勉強もする。
充実した毎日だと思っていた。ある朝に、あの奈那と出くわすまでは。
47
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/19(土) 22:52:44.43 ID:t+SnPtR2o
いつものように二人分のお弁当を用意して、一橋くんの家の前へ着いたのは七時十四分だった。
私が彼を待つべき場所に、小さな女の子の姿があった。
この頃めっきり見なくなったのでほとんど忘れかけていたが、それが奈那だとわかった。
「……なにしてるの? 貴方」
以下略
48
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/19(土) 22:53:15.59 ID:t+SnPtR2o
私はそう言いつつも、一橋くんが嫌がっている。そんなことは――と、喉から胸元までが冷たくなる感覚がした。
「やめてほしいって、言ってました」
「嘘、一橋くんはそんなこと言わない」
以下略
49
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/19(土) 22:54:05.69 ID:t+SnPtR2o
思わず、奈那の肩に掴みかかりそうになる。
すんでのところで止まったのは、玄関のドアから一橋くんが出てきたからだった。
「あっ、一橋くん……おはよう」
以下略
50
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/19(土) 22:55:18.49 ID:t+SnPtR2o
――――
「あの、一橋くん……」
放課のチャイムが鳴ってから、恐る恐る近づいた。
以下略
51
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/19(土) 22:56:28.63 ID:t+SnPtR2o
頭の後ろのほうで、思考するためのなにかが停滞しているようだった。
喉元から胸が冷たくなった。なのに、目の周りや、鼻の辺りはやたらに熱くなった。
「あ……えと、うん、おめでとう。ごめんなさい、今まで……」
以下略
52
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/19(土) 22:57:26.79 ID:t+SnPtR2o
――――
気がつけば、目で追っている。姿が見えなくなっても、勝手に続きを想像してしまう。
その隣に、自分を並べてみたりすると、ふと胸の辺りの空っぽに気づいてしまう。
以下略
53
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/19(土) 22:58:29.67 ID:t+SnPtR2o
一橋くんの部屋のカーテンが開くのを見届けると、踵を返して、学校へと向かう。
お昼は今まで通り、独りで食べていたけど、この間、奈那ちゃんに誘われてからは一緒に食べるようになった。
時々、一橋くんも交えて、三人でごはんを食べる。
私は、三人でごはんを食べるときは、奈那ちゃんと一橋くんが話しているのを黙って聴いている。
以下略
54
:
名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/19(土) 22:59:59.20 ID:t+SnPtR2o
以上です。読んでいただきありがとうございました。
55
:
名無しNIPPER
[sage]
2015/09/19(土) 23:44:42.31 ID:NNemCVk8O
乙!
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