過去ログ - 久「この夏に囚われて」
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1:名無しNIPPER[sage]
2015/09/22(火) 16:07:48.23 ID:/JHwdyX00
インターハイ、全国、団体戦決勝、大将戦。

下馬評では、白糸台と臨海女子の強豪校同士の一騎打ち。Aブロックを勝ち上がってきた阿知賀女子は、準決勝で1位に輝いていたこともあってダークホースとして有力視されていた。

つまり残った一校、清澄高校は大方「ドベ」であろうと予想されていた。――が、そんな予想を裏切り、清澄高校のメンバーは予想外の奮戦を見せる。

優希、まこ、私、和。

清澄高校の面子はいずれも自分たちの持ち味を発揮し、大将戦開始前での合計点数は原点を1万点以上も上回り、1位に迫る僅差の2位という運びになっていた。

もちろん、全てが思惑通りにいったというわけではない。

他家にしてやられることもあれば、勝負所で押し負けることもあり、点棒を守り切れなかったメンバーもいた。

それでも、私たちは存分に戦い抜いた。いい意味でも悪い意味でも、これまでにない手応えを感じながら打てたし、なにより……少なくとも、私は――楽しかった!

そんな風に、優希が守り、まこが繋ぎ、私が掠め、和が託した清澄高校の点棒。

その重みと熱さを抱いて、全国指折りの大将たちと同卓する咲の心中はいかばかりだっただろう。

実感はできないけど、想像はできる。だからこそ、彼女が、少しでもその重みから解放されますようにと。

柄にもないことを思いながら、私は言った。


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2:名無しNIPPER[sage]
2015/09/22(火) 16:08:59.28 ID:/JHwdyX00
「ねえ、咲」


「部長? ……なんですか?」

以下略



3:名無しNIPPER[sage]
2015/09/22(火) 16:11:36.83 ID:/JHwdyX00
「だからね、咲、」


「……はい」

以下略



4:名無しNIPPER[sage]
2015/09/22(火) 16:15:16.85 ID:/JHwdyX00
私と咲の会話が終わると、まこが


「お前さんなら大丈夫じゃ。気楽に打ってきんしゃい」

以下略



5:sageになってた[saga]
2015/09/22(火) 16:17:10.71 ID:/JHwdyX00
それらに対して咲がお礼を返し、一呼吸の間ができると。

和が、少しの間だけ咲と見つめ合った後に


以下略



6:名無しNIPPER[saga]
2015/09/22(火) 16:22:51.60 ID:/JHwdyX00


◆◆◆◆◆◆◆


以下略



7:名無しNIPPER[saga]
2015/09/22(火) 16:25:43.71 ID:/JHwdyX00
強く、可憐で、時に冷たく、無慈悲に咲く花。

その美点が最も魅力的に、そして恐ろしく感じられるのはただ一点。彼女が、心の底から楽しみながら麻雀を打っている時。

故にこそ、私は咲に、この大舞台で楽しんで打ってもらいたかったし、そうすることで彼女の打つ麻雀を心から楽しみたかった。咲が楽しんでくれれば、チーム順位の方はどうなってもいいとすら思っていた。
以下略



8:名無しNIPPER[sage]
2015/09/22(火) 16:27:13.70 ID:cVSWw8FGo
なんか怖い…


9:名無しNIPPER[saga]
2015/09/22(火) 16:29:17.68 ID:/JHwdyX00
「咲、待ちなさい」


と。控え室を出て、対局室へ歩みかけた咲を呼び止めた。

以下略



10:名無しNIPPER[saga]
2015/09/22(火) 16:30:55.34 ID:/JHwdyX00
「直前で悪いけど、さっき、言い忘れたことが一つだけあったのよ」


「なんですか部長?」

以下略



11:名無しNIPPER[saga]
2015/09/22(火) 16:31:49.91 ID:/JHwdyX00



「こんな大舞台、またいつどこで巡り合えるか分からないんだもの!」

以下略



12:名無しNIPPER[saga]
2015/09/22(火) 16:33:48.20 ID:/JHwdyX00
私の言うことに驚いたのだろうか、その瞳が、少しだけ大きく見開かれる。

自分の言葉と想いが、咲に届いてくれたのかどうかが不安になった。正直、そこから逃げ出したいとすら思えた。

けれど、そういうわけにはいかない。例え無視されるにしても、咲からの反応を確かめないわけにはいかないのだ。
以下略



13:名無しNIPPER[saga]
2015/09/22(火) 16:35:20.59 ID:/JHwdyX00
この時、この瞬間をこのまま鮮明に鮮烈に保てるなら、私はなんだってするだろう。

――しかし、私はいつまでもこの時間に囚われているというわけにはいかなかった。

私は……私たちは、望むと望まぬとに関わらず、その瞬間を目に焼き付けなければいけなかったのだ。
以下略



14:名無しNIPPER[saga]
2015/09/22(火) 16:37:35.17 ID:/JHwdyX00



――――――――――――――――――――――――

以下略



15:名無しNIPPER[saga]
2015/09/22(火) 16:43:10.65 ID:/JHwdyX00
「わた、わたひ、あのとき、何も見えなくなって……!」


「み、みんながっ。あ、あんなに、頑張ってくれた……のにぃ……っ」

以下略



16:名無しNIPPER[saga]
2015/09/22(火) 16:45:15.35 ID:/JHwdyX00
「あっ、あそこで、……あそこで、わたぃがっ……!」


普段から気弱で、怯えただけで涙を見せるような子ではあったが。

以下略



17:名無しNIPPER[saga]
2015/09/22(火) 16:49:49.64 ID:/JHwdyX00
「ごめ、なさい……。ごめん、なさい……っ」


お願いだから謝らないで。誰も、貴方を責めてなんかいないわ。

以下略



18:名無しNIPPER[saga]
2015/09/22(火) 16:53:26.08 ID:/JHwdyX00
「本当に、ごめん、なさい。部長……」


どきりとした。

以下略



19:名無しNIPPER
2015/09/22(火) 16:55:25.55 ID:/JHwdyX00
思わず、私は足を踏み出し、目の前にいる咲を抱きしめていた。

咲の背中へ手を回し、私の胸に顔を押し付けるような恰好になる。

先ほどまで声を出すことすらできなかったのに、よくやったものだと。我ながら、場違いな感心すら覚えた。
以下略



20:名無しNIPPER[saga]
2015/09/22(火) 16:58:25.49 ID:/JHwdyX00
そこで、やっと私は気が付いた。




以下略



21:名無しNIPPER[saga]
2015/09/22(火) 16:58:53.02 ID:/JHwdyX00
「部長は……っ、ぶちょ、は、最初で最後のっ、夏なのにっ、」


「それでも、自分を信じて、って。楽しんできてくれ、って」

以下略



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