過去ログ - 佐藤心「駄目な女と」モバP「駄目な男と」
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名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/25(金) 03:00:41.68 ID:7paXrcb70
でも、その後も何故か雨の日にタバコ屋で雨宿りしていると男の子が来たんです。その子にも多少は来ないかなってという思いはあったんですが。その子は前の時と同じように『何見てんだよ』と言いました。緩む口元を引き締めて、ちょっと睨みを効かせて。
そうやってその子と男の子は雨の日だけ会うという不思議な関係が生まれました。雨の昼時にタバコ屋で雨宿りをする。するとまるで迎えに来てくれるかのように男の子が傘を持って現れる。一緒にお昼ご飯を食べてだらだらと話をする。
しかし、ある晴れの日の事です。その子が最近運動不足で体重を気にしてジョギングをしてた時の事でした。なんとなく、特に深い理由はないですが、駅前を通り、なんとなく男の子が帰る方面に向かって走っていたのです。すると目の前にとぼとぼと歩く見覚えがある背中を見つけました。
以下略
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名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/25(金) 03:01:15.99 ID:7paXrcb70
その子も男の子と話が出来るならしたかったのですが、自分の姿があまりにも酷いです。何故かはわかりませんが、そんな姿の自分を男の子に見せたくなかったのです。ですが、男の子の目がいつもと違い、その子には助けを求めているように見えたのです。
ちょっとした葛藤はありましたが、そんな目をしている男の子を放っては居られないその子は近くの公園で話をする事にしました。内容は男の子の学校へ対する愚痴がメインでした。しかも偶然な事にその子が普段抱いている愚痴とほとんど同じものでした。
その子はこう思ったのです。ああ、こいつも私と同じで学校がつまらないんだな、と。
以下略
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名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/25(金) 03:01:51.15 ID:7paXrcb70
それからのその子は変わりました。いままで月2回か3回かしか行かなかった学校に毎日行き、補習やレポートで足りない出席日数を補い、男の子が来る事を待ったのです。
合格発表の日は、男の子から連絡が来る事になっていたのですが、居ても立っても居られずにこっそりと合格発表を見に行ったくらいです。それほどまでにその子は男の子の事を待っていたのです。
合格発表の掲示板の前で、男の子がガッツポーズをしているところをこっそりと見たその子は嬉しさのあまり涙が出そうになっていました。直後にかかってきた合格報告の電話にそっけなく『あっそ』って答えるのが精いっぱいだったのです。
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10
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名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/25(金) 03:02:22.16 ID:7paXrcb70
そんな風に夢が出来たその子は服飾関係の短大への進学を決めました。しかし、それには問題が一つ。短大へはその子の実家から通うことも出来たのですが、地元でもそこそこ有名な進学校に通っていたその子の両親が短大への進学に猛反対したのです。このままではせっかくできたその子の夢が潰れてしまいます。
悩んだ末にその子は一人暮らしを決めたのです。両親の元を離れることで自分の夢を守ろうとしたのです。この事に激怒した両親からは100万円が入った封筒を渡され、二度と帰ってくるなと言われてしまうのですが。
そうして迎えた卒業式の日です。その子と男の子はいつものファミレスでささやかながら卒業祝いとして一緒にご飯を食べていました。その時に男の子から『もう、毎日は会えないんですね。少し寂しいです』と言われたのです。
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11
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名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/25(金) 03:03:07.79 ID:7paXrcb70
短大へ入学した後、男の子は毎日その子の元へ来てくれました。学校が終わってから一緒に買い物へ行き、一緒に夕食を食べ、その日あった出来事を話して、男の子を駅まで見送る。そんな生活でした。
友達に男の子と一緒に居るところを見られた事もあります。しかし、彼氏かと聞かれてもその子には答える事は出来ませんでした。確かにその子は男の子の事が好きでした。ですが、男の子は自分の事を女としては見てはくれていません。多分気の合う友達程度なのでしょう。
どうして自分はこんな鈍感な男を好きになってしまったのだろうか。美味しいと言って自分の作ったご飯を食べる男の子の顔を見ます。もし、また告白してこの関係が壊れてしまったら? やっと手に入れた幸せな一時を手放すことは出来ません。
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12
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名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/25(金) 03:03:46.86 ID:7paXrcb70
男の子が高校を卒業して、大学へ進学した年です。その子も小さい会社でしたがアパレル系に就職を決め、住む場所も女々しくも男の子の大学の近くへ引っ越したのです。
ある日、男の子がサークルの新歓コンパへ行くと教えてくれたのですが、その子は不安で一杯になりました。もし、新歓コンパで男の子に彼女が出来てしまったらどうしよう、という不安です。諦めると決めていたにも関わらずに。
その子は男の子に新歓コンパが終わったら連絡をするように約束させました。表向きは男の子の心配をしながら、でも本当は自分の不安を取り除くために。
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13
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名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/25(金) 03:04:26.60 ID:7paXrcb70
あまりの事態にどうして良いか分からなくなってしまったその子は泣き出しそうになるのを堪え、男の子はどうしたのか尋ねました。
すると、電話口から可愛らしい声で『申し訳ありません、私が目を離した時に悪乗りでお酒を飲ませてしまいました。今は立って歩く事も、まともに受け答えする事も出来ないので、これから救急車を呼ぼうと思います』と言われました。
その子は血の気が引いていく音を聞いた気がしました。電話口の女の子が誰なのか、そんなことよりも男の子が無事なのかどうか。それだけが気がかりで、どうしようもなくなったその子は、自分が迎えに行くから待っていて欲しいと伝え、新歓コンパの場所を聞き、慌てて男の子の元へ向かいました。
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14
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名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/25(金) 03:05:04.29 ID:7paXrcb70
家に連れ帰ってから男の子の服を緩めたり、水を飲ませたり、背中をさすったりと介抱をしました。男の子は落ち着いたのか、その子のベッドで静かに寝息を立て始めました。可愛い寝顔を眺めながら、ふとその子にいたずら心が芽生えます。今ならキスしてもばれないんじゃないかと。しかし、いざ顔を近づけるとあまりの恥ずかしさに結局実行は出来ませんでした。
それ以降も男の子とその子の関係は変わる事はありません。男の子はその子の家に晩ご飯を食べに来て、夜になると家に帰る。高校時代と変わったところは、男の子が22時前には帰っていたのが、日によっては終電まで居るというくらいです。
仕事で嫌な事があっても男の子が居るから頑張れる、そう思って働き始めて四年目の事です。段々と男の子が家に来る頻度が減っていたのです。毎日来ていたのが、平日だけになり、だんだんと週に1回、月に1回と。その子は気になって男の子に尋ねました。どうして来なくなったのかと。すると男の子は顔をそむけながら『就活が忙しくて』とだけ言いました。その子は嘘だと見抜いてはいたのですが、やはり臆病なままなのでただ一言『そっか』としか言えませんでした。
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名無しNIPPER
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2015/09/25(金) 03:05:48.77 ID:7paXrcb70
男の子が上京する日をなんとか突き止めたその子は、駅に出向きました。男の子が自分の事を連れて行ってくれる事を信じて。
駅についたその子はいつかの梅雨の日のように鞄を抱えて空を眺めながら男の子を待っていました。二時間ほど待っていると、会いたくて仕方なかった顔が遠くの方に見えました。
男の子と目が合った時、男の子の『なんでここに?』という言葉にその子は挨拶もせずに行こうとする事を非難しました。男の子があれやこれや言い訳をしている中、その子は『私も連れて行って』と言い出すタイミングを見計らっていました。もちろん、男の子の方から『一緒に行こう』と言ってくれるのを待っていたのもありますが。
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名無しNIPPER
[sage saga]
2015/09/25(金) 03:06:24.50 ID:7paXrcb70
男の子が去った日、その子は家に帰ってベッドに倒れこんで泣きながら一晩を過ごしました。どれだけ泣いたか分かりませんが、やっと落ち着いたころにはもう朝日が射していました。泣き腫らした顔のまま折り畳み式の携帯電話を握ると男の子に電話をかけました。せめて、声だけでもと思ったのです。
ですが、そこから聞こえてきたのは『この番号は現在、使われておりません』という機械の案内音声でした。そんなはずはないと何度も何度も電話をかけたのですが、流れてくるメッセージは同じもの。メールもしてみましたが、宛先不明で帰ってくるばかり。思わず携帯を壊してしまいそうになりましたが、男の子と初めて連絡先を交換した思い出の詰まった携帯を壊すことは出来ませんでした。
何日かあと、その子は男の子の実家に向かいました。ご両親なら何か知っているはずだと思い少しでも男の子の行方を掴むためでした。ですが、驚いた事にご両親ですら男の子に連絡が取れないとの事。それでも諦めきれないその子は男の子の部屋をご両親と一緒にひっくり返しました。ですが、見つかるものは男の子の過去のものばかり。卒アルや文集、何かのメモ、漫画、ぶりっこ特集とかいうエロ本、アルバム。何一つとして現在の男の子に繋がるものはありませんでした。
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