過去ログ - Steins;Gate「二律背反のライデマイスター」
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132: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/04(日) 18:22:13.80 ID:iuS/I4U4o



 一点の曇りもない空の真ん中で、あたしは湖に揺蕩う小舟のように浮かんでいた。見ていて惚れ惚れするような景色なはずなのにあたしはすぐに嫌な予感を胸中に抱いた。
 そしてあたりを見回すと案の定、大きい背中をこちらに向けた父さんと長い髪をなびかせて佇む母さん。
以下略



133: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/04(日) 18:23:06.85 ID:iuS/I4U4o

 気づけば岡部倫太郎が慌てた様子であたしの肩を揺らしていた。

「鈴羽! 大丈夫か!」

以下略



134: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/04(日) 18:26:55.56 ID:iuS/I4U4o



 3日後、検査を終え病院から牧瀬紅莉栖がこの部屋へと帰還した。
 といっても検査自体は仮病によるものだから問題なく終わったのだけど、同室の患者がいなくなったことによる事情聴取がしつこくて中々戻れなかった、と本人は言っていた。
以下略



135: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/04(日) 18:28:50.87 ID:iuS/I4U4o
「はいはーい、唐揚げ弁当安いよ〜。美味しいよ〜。そこのおっちゃんおひとつどーお?」

 あたしは拠点の付近に立地していた小ぢんまりとした弁当屋でバイトをしていた。夕食時の夕暮れを往く人たちに自慢の弁当を勧める。「じゃあ1つもらおうか」というお客さん相手に笑顔で弁当を手渡した。

「あいよ、一個170円ね。はい、サンキュー! またお待ちしてまーす」
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136: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/04(日) 18:30:20.02 ID:iuS/I4U4o

 牧瀬紅莉栖が大きくため息をついた。中々フラストレーションがたまっているように思える。

「くっ、専門分野じゃないとはいえ、大きなアドバンテージを持っていながらこの状況……株、奥が深いわね……」

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137: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/04(日) 18:32:54.78 ID:iuS/I4U4o

 狭苦しい浴室で肌を打つシャワーを止めた。あたしは曇った鏡を手でこすり、中に映しだされたもう1人の自分に釘付けになる。肩にかかるくらいの髪の毛は緩やかな波を打ってたくさんの水粒を絡ませながら水を滴らせている。自分の顔をまじまじと見つめてみる。年齢は18歳だという。
 ふと、鏡から視線を移して自らの裸体に向ける。
 肌から滑り落ちるいくつもの雫は浴槽を打ち鳴らしている。そっと腹部に浮かんだ水滴を指でなぞり、滑らせる。行き着いた先は──

以下略



138: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/04(日) 18:35:28.25 ID:iuS/I4U4o
「鈴羽……? どうしたの?」

 牧瀬紅莉栖だった。あたしが長いことシャワーを浴びてるもんだから不思議に思って声をかけに来たのかもしれない。

「なっ、なんでも……ないよ……」
以下略



139: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/04(日) 18:36:54.11 ID:iuS/I4U4o
 そう言ってバスタオルを渡してくる。数秒の間が空いてそのタオルを受け取るとあたしはたまらず尋ねていた。

「なにも……言わないの……?」

 そんな問に対して彼女は特に同情するでもなく、悪びれる様子でもなく。
以下略



140: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/04(日) 18:39:12.53 ID:iuS/I4U4o
「でもね」

 後ろを向いた彼女は振り向いて横顔を見せると、短く。だけど柔らかい口調で言う。

「少なくとも、あたしの記憶に残っているあなたはそんな傷跡、気にもとめず前を向いてるように思えた」
以下略



141: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/04(日) 18:41:25.62 ID:iuS/I4U4o
 
 回想の世界から帰還し、畳の上で書類に囲まれながら頭を抱える牧瀬紅莉栖の姿を見て、あたしは心のなかで再びお礼を言った。

──サンキュ。

以下略



142: ◆gzM5cp9IaQ[saga]
2015/10/04(日) 18:43:12.86 ID:iuS/I4U4o


 布団の中で600万という数字を思い浮かべる。
 今のあたしの時給が400円だから……。
 えーっと…………。
以下略



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