11:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 22:58:37.02 ID:m9aJzdw+0
千早「どういうことなの……」
テレビに映るやよいのオムレツはふっくらとした形で、中身もふわふわであることが容易に見て取れた。
調理は手早く終わり、簡単に見えたが、千早には、やよいの作る映像を何度見てもなぜそうなるのかが全く理解できなかった。
12:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 23:00:00.25 ID:m9aJzdw+0
千早「よし、いよいよ卵を入れる時……」
千早が溶き卵を入れると、じゅわっ、と小気味良い音とともに卵とバターの香りが立ちのぼった。やよいの真似をしてすぐにかき混ぜる。
千早「ここまではいいペースだわ。このままうまく作れるといいんだけど…ひっくり返すのが怖いわね。でもうまく作れたら、春香や高槻さんにごちそうできるのね。ゆくゆくは高槻さんと料理も……だめよ、恥ずかしいわ。私は陰からこっそり見守っていられればそれでいいんだから。春香にホメられるのも悪くないわね。あの子結構ドジだから、いつか私が追い抜くなんてこともあるのかしら……ってあああああ!!」
13:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 23:01:20.10 ID:m9aJzdw+0
千早「やってしまったわ……これじゃあスクランブルエッグね。オムレツは残念だけど、これを朝食にしましょう」
落ち込みつつもスクランブルエッグを完成させ、トーストを焼く作業を始める。失敗はしてしまったが、暗い気持ちはなかった。
千早「以前の私なら、機嫌を損ねていたかもしれないわね。いや、そもそも料理をしなかったかしら。……そうだ、食べながら高槻さんのVTRを見ましょう」
14:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 23:02:46.89 ID:m9aJzdw+0
千早が日課のトレーニングを一通り終え、ふと時計を見ると、正午を回ったところだった。
千早「せっかくの休日だし、昼食は外で食べましょう。散歩がてら食べるのも悪くないわね」
散歩といっても、千早はあてもなく歩くつもりではない。彼女には休日になると足を運ぶ場所が何か所かあった。
15:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 23:04:57.10 ID:m9aJzdw+0
図書館の方向を目指して歩いていると、近所の公園が見えた。陽の光がまぶしい公園、その中で元気いっぱいに遊ぶ小さな子供。
木陰の中で微笑みながらそれを見守っている夫婦。ベンチに腰かける幸せそうな恋人同士。
千早は立ち止まり、うらやましそうに、そして少しだけ悲しそうにその光景を眺めていた。
あずさ「あらあら、素敵な景色ね。私も運命の人と結ばれたくなるわ〜。千早ちゃんも羨ましいのかしら?」
16:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 23:06:15.24 ID:m9aJzdw+0
あずさ「ちょっと道に迷っちゃって〜」
千早「ええっ、それは大変ですね。どちらに行かれるんですか?」
あずさ「あっ、特に用事があるというわけではないのよ?お散歩して、どこかでご飯でも、と思って」
17:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 23:08:28.69 ID:m9aJzdw+0
千早は会話が得意ではなかった。
彼女は内向的であるのみならず、人が興味を持つ物事の大半を不必要だと切り捨ててきた。そのため、歌以外に話すことのできる話題を持たなかったのだ。
したがって以前の彼女なら、これ以上話を続けることもなく、同僚と親交を深める機会さえも切り捨て、あずさに道を教えて別れを告げていたかもしれない。
千早「その、あずささん……」
18:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 23:09:54.93 ID:m9aJzdw+0
千早「あの、わ、私、今から昼食をとろうとしていたんですけど、あずささんも一緒にいかがですか!?」
あずさ「まあ!いいの、千早ちゃん?ちょうどおなかが減っていたのよね。」
千早「もちろんです!私のお気に入りのところがありますから、一緒に行きましょう!」
19:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 23:10:58.34 ID:m9aJzdw+0
あずさ「まるで、しっかり者の妹ができたみたいね。」
千早の手を握りながらあずさは笑った。
千早「あずささんは、ずっと765プロのお姉さんですよ。」
20:名無しNIPPER[saga]
2015/10/31(土) 23:12:41.98 ID:m9aJzdw+0
千早「着きました」
住宅街のはずれ、銀杏の並木道にひっそりとたたずむ建物が、千早たちの目的地である。
外見は煉瓦をあしらった木造で、建物はそれほど大きくないが、こげ茶に近い落ち着いた色使いの外装だった。
入口は衝立によって中が見えなくなっており、ここが店であるとは一目で分からないようになっていた。
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