2:名無しNIPPER[saga]
2015/11/14(土) 12:14:07.60 ID:0oXNO4iLo
  
 「ロケーションはそこそこだね」 
  
  なんて偉そうなことを、窓から顔半分をつきだした出歯亀女が言った。 
  かくいう俺も出歯亀男なわけだけど。 
3:名無しNIPPER[saga]
2015/11/14(土) 12:14:33.86 ID:0oXNO4iLo
  
 「あ、手握った」 
  
  言葉のとおり、ふたりは手を握り合っていた。 
  というより、片方が片方の手を掴んだらしい。 
4:名無しNIPPER[saga]
2015/11/14(土) 12:15:00.43 ID:0oXNO4iLo
  
  それから、覗きにも飽きたんだろう、体を屋根の内側にしまいこんでから、窓をピシャリと閉めた。 
  ちょっとアテられたみたいな疲れた声音で、彼女は呟く。 
  
 「いいよねえ、新入生には未来があってさ」 
5:名無しNIPPER[saga]
2015/11/14(土) 12:15:30.86 ID:0oXNO4iLo
  
 「あのねえ、たっくんさ、ちょっと考えてもごらんなさいよ」 
  
  おどけた口調、わざとらしい呆れ顔。 
  今度はどこかのコメンテイターみたいなすかした感じで、彼女は言った。 
6:名無しNIPPER[saga]
2015/11/14(土) 12:16:13.25 ID:0oXNO4iLo
  
 「分かる? 彼らにはこれから、高一の初夏、梅雨、夏、夏休み、秋に冬……が、あるわけ」 
  
 「はあ」 
  
7:名無しNIPPER[saga]
2015/11/14(土) 12:16:44.94 ID:0oXNO4iLo
  
  そんな高森と俺はいま、東校舎三階の一角にある文芸部室にふたりきり、だ。 
   
  見ようによっては青春ドラマ的と言えなくもないかもしれない。 
  
8:名無しNIPPER[saga]
2015/11/14(土) 12:17:15.50 ID:0oXNO4iLo
  
  べつに付き合いが長いってわけじゃないけど、一年一緒にいても相手を意識するようなことも起こらなかった。 
  
  入学したときクラスが一緒で、部活も同じところに入ったから、自然と顔を合わせる機会が増えたってだけ。 
  よく言えば気さく、悪く言えば馴れ馴れしいって感じの高森は、受け身がちな俺にとっては話しやすい相手だ。 
9:名無しNIPPER[saga]
2015/11/14(土) 12:19:20.32 ID:0oXNO4iLo
  
  高森はつまらなそうな顔をしていた。 
  でも、俺は自分の高校生活の一年目に、これといった不満があったわけでもない。 
  
  クラスメイトとの仲だって悪くなかったし、これといったトラブルに巻き込まれた記憶もない。 
10:名無しNIPPER[saga]
2015/11/14(土) 12:19:46.78 ID:0oXNO4iLo
  
 「土日は経験値が二倍だから、出かけたくないの」 
   
  結構前に、そんなことを言っていた。 
  未知の領域。ゲーム内ではネナベの友達と結婚しているらしい。 
11:名無しNIPPER[saga]
2015/11/14(土) 12:20:25.94 ID:0oXNO4iLo
  
  ほうほう、なるほどね、と、何度もわざとらしく頷いたあと、ありもしない眼鏡を直す手振りをして、 
  
 「うそだな」 
  
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