1:名無しNIPPER[saga]
2015/11/18(水) 00:14:20.71 ID:630/3Zti0
空がだんだんと朱色にそまる
今日も日が暮れる時間になったのだ
一日の仕事を終えた太陽が、あくびをしながら街から遠ざかっていく
「お日さま、おやすみなさい」
丘の上に立つ少年が太陽に別れの言葉を告げる
太陽は止まらないあくびを隠そうともせず、彼に軽く手を振った
東の空から藍色のカーテンが追いかけていく
「さて、やらなくちゃ」
彼の仕事はこれから始まる
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2:名無しNIPPER[saga]
2015/11/18(水) 00:18:16.32 ID:630/3Zti0
少年は長い釣り竿にキラキラ光るものをつけた
それを大きく振りかぶり、高く、遠くへ糸を飛ばす
空まで届いたキラキラはそこで一番星になった
3:名無しNIPPER
2015/11/18(水) 00:22:52.29 ID:630/3Zti0
空に六つめの輝きがのぼったとき、山の合間から優しい光がもれた
ゆっくりと光を強め、奥から三日月が顔を出す
少年はそれに気がついて微笑みながら言う
4:名無しNIPPER[saga]
2015/11/18(水) 00:27:14.47 ID:630/3Zti0
いくつ星を送り出したのだろう
しかしまだまだ残っている
彼の仕事は始まったばかりだ
5:名無しNIPPER[saga]
2015/11/18(水) 00:31:13.00 ID:630/3Zti0
そうやって夢中になっていると、誰かが隣に近づいてきた
少年はそちらに顔を向ける
そこには一匹の猫がいた
6:名無しNIPPER[saga]
2015/11/18(水) 00:37:06.72 ID:630/3Zti0
少年は意図にキラキラをつけながら隣を見る
猫は彼の手元を興味深そうにのぞき込んでいた
少年が少し居心地の悪さを感じていると、猫はキラキラをペロッと舐めた
7:名無しNIPPER[saga]
2015/11/18(水) 01:01:58.71 ID:630/3Zti0
地上の明かりが一つ、また一つと消え始める
窓から漏れる光が少なくなり、降り注ぐ淡い光が町に充ちてゆく
少年は隣に寄り添うぬくもりを撫でながら大きなあくびをした
8:名無しNIPPER[saga]
2015/11/18(水) 01:08:02.97 ID:630/3Zti0
花や風、音も眠りにつこうかという時間
少年の手元にはもう数え切れるほどしかキラキラは残っていない
彼が残りの星も空に飾ろうとしたとき、遠く、遠くの丘に一人の少女が立っているのが見えた
9:名無しNIPPER[saga]
2015/11/18(水) 01:12:53.44 ID:630/3Zti0
こんばんは、この夜空はぼくが飾ってるんだ、どうしてそんなに寂しそうなの?
かけたい言葉は星の数ほどあるのに、二人の距離は悲しいほど遠すぎる
少年には、ただただ、少女を眺めることしかできなかった
10:名無しNIPPER[saga]
2015/11/18(水) 01:17:28.36 ID:630/3Zti0
これはあの子の真上で、明るく照らしてあげよう
少年はそう思い、釣り竿を思いっきり振って星を作った
大きなそれが頭上に現れたことに驚いたのか、少女は少し目を見開いて……
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