過去ログ - 南条光「砂糖無しで、ミルクはいっぱい」
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1:今更バレンタインネタです[saga]
2016/02/21(日) 15:35:36.64 ID:vaXUSRZy0

 チョコの銀紙、チュパチャプスのツリー、シュークリームの空き袋。駅前で開いたカフェのチラシに、ふわふわした甘い物関連のエトセトラ。Pのデスクのゴミ箱には、いつもお菓子関係のゴミが詰まってる。

 そんなに甘い物ばかり食べてるから……ではないだろうけど、最近の彼からは時々、ポプリやジャムのような甘い香りがする。その中でも丁寧に煮詰めたガトーショコラみたいな匂いが漂うのはたいがい週に一度か二度、早引けの翌日、あるいは前日が有給でお休みだった時だ。

 このことを指摘すると、彼は赤面しながら「光は俺に詳しいんだな」と答えた。いい気になって「辞典を作れるぐらい、……かもな!」と返事した。

 うぬぼれのつもりはない。そう言い切れるほど、アタシと彼は職場で同じ時間を共有し続けてきた。それも、ただ一緒に過ごしてきただけじゃない。苦楽を共にし、共に涙し、共に笑い合った戦友だという自負があった。

 しかしPは笑うばかりで、真正面から取り合ってくれなかった。彼に不誠実な態度を取られるのは面白くなかった。

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2:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 15:37:50.35 ID:vaXUSRZy0

「嘘だと思うのなら証明してみせる。次のバレンタイン、Pを唸らせる究極のチョコを作って持ってくよ!」

 声を張り上げてカレンダーを指さした。自分も含め同僚たちのスケジュールがみっちり書き込まれた予定表によると、今日は折り返しの水曜日。二月十四日までに五日間は時間が残されていた。

以下略



3:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 15:38:40.53 ID:vaXUSRZy0

 さて啖呵を切った以上、約束を果たさないといけない。アタシは女子寮のキッチンを借り、試しにチョコを湯煎したりマシュマロを焼いてみた。とても美味しかったけれど、彼にぶつける全力としてはまったくの力不足だった。

(かくなる上は、全部のせ合体作戦だ!)

以下略



4:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 15:39:30.27 ID:vaXUSRZy0

 思い返してみると、飴玉の類は口寂しいから食べてるような風体だったから、他と比べるとあまり好んでいないかもしれない。同じ理由で、グミやガムもそれほど好んでないだろう。

 逆に、パフェやあんみつなど、腰を据えて食べる甘い物は大のお気に入りだった。それ以外にも、雨宿りがてら駆け込んだで、急かされたように覚悟を決めた目でバナナタルトにかぶりついてたことも覚えてる。

以下略



5:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 15:40:42.98 ID:vaXUSRZy0
※――※――※――※――※――※――※

「で。実際のところ、出来上がりましたか?」

 同じく厨房を利用してたありすちゃんが問いかけてきた。アタシは背筋を反らして天を指さし、半身をひねって彼女に返事した。
以下略



6:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 15:42:06.39 ID:vaXUSRZy0

「ほ、本当!? 見せてくれる!?」

 知りたいという腹の底からの本心を伝えると、ありすちゃんはまんざらでもない風に仕方ないですねと笑って、ディスプレイをこちらによこしてくれた。知識量を誇りたいから協力してくれる彼女は、何時だって頼りになる。

以下略



7:名無しNIPPER[saga]
2016/02/21(日) 15:45:39.78 ID:vaXUSRZy0
※――※――※――※――※――※――※
 かくして突撃した二月十三日の駅前には、アタシを排除することに特化したエネルギーフィールドが形成されていた。これが噂の重力波か。ライブならばなんともないのに、歩行者天国の人並みには圧倒されてしまった。

 通行人に弾き飛ばされそうになりながら目的地に向かう途中、金髪の女の子がハニー会いたかったのと言って男性に抱きついてる瞬間にでくわした。メガネの優男は女の子をたしなめたけど、彼女は聞く耳を持っていなかった。

以下略



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