過去ログ - 囁かれる名前は
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17:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:28:20.80 ID:887tizks0

 大学生活三年目も半ばを過ぎて、枯れ落ちた紅葉が通学路の石畳を彩る頃、その電話のベルは鳴った。

 時刻は二十三時前。携帯のディスプレイには真ちゃんの名前が表示されている。

以下略



18:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:30:08.26 ID:887tizks0

 ――バーのカウンター席に突っ伏している真ちゃんは電話で聞いていた通り完全な泥酔状態で、店員さんの手を借りてようやく店外に連れ出せるといった有様だった。

「1杯だけでここまで酔ってしまうとは思わなくて……」

以下略



19:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:34:12.89 ID:887tizks0

 ――居酒屋を出発したタクシーの車内には会話は無く、目的地を目指すタクシーの淡々とした走行音だけがその場を包み込んでいた。

 時折、真ちゃんが不鮮明な唸り声を漏らす。その度に私は背中をさすってあげていた。

以下略



20:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:35:59.10 ID:887tizks0

 結局その後は何事もなくアパートに到着した。タクシーの料金を払い終えてから隣を見る。真ちゃんは相変わらず目を瞑った苦しげな表情のままだ。

「真ちゃん、着いたよ。降りよう」

以下略



21:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:39:34.40 ID:887tizks0

 目の前にある二階建てで横に長い作りをしている比較的新しめの建物が、真ちゃんが一人暮らしをしているアパートだ。私たちの家から大学までは最寄り駅から三駅ほどの距離。本来なら電車通学で問題ないはずだけど、真ちゃんは一人暮らしを経験してみたかったみたいで、お母さんから許可を得て大学から徒歩10分のこのアパートに住んでいた。

 真ちゃんはフラフラと体を左右に揺らしながらも、なんとか一人で立つことはできるみたいだった。……かなり危なっかしいけれど。ただ、一人で歩くのは難しそうだったので腰に手を添えて誘導してあげる。

以下略



22:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:45:59.60 ID:887tizks0

 ――この鍵は真ちゃんからもらったものだ。

 真ちゃんは掃除は定期的にするけど整理整頓が苦手みたいで、部屋が服や雑誌なんかで散らかりがちだった。それから食事を適当に済ませるところがあって、栄養バランスなんて全然考えてないみたい。スカスカの冷蔵庫の中身を見たら誰にでも想像はついてしまうだろう。なんとなく心配になった私は、1〜2週間に一度のペースで真ちゃんの家に顔を出して、片付けやお夕飯の準備をしてあげていた。お節介なだけかも……と心配していたけれど、真ちゃんは素直に喜んでくれたから内心ホッとしたのを覚えている。

以下略



23:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:51:36.06 ID:887tizks0

 玄関に入ると真っ暗な部屋が私たちを出迎えてくれた。真ちゃんが靴を脱ぐのに手間取っている間に、手探りで電灯のスイッチを入れる。

 玄関に明かりが灯る。私はまた真ちゃんが歩くのを補助しながらリビングを目指した。

以下略



24:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 20:58:07.53 ID:887tizks0

 真ちゃんを支えている手を自由にするために、とりあえず真ちゃんにはベッドに腰掛けてもらう。

 水を持ってこないと……。その前に、リビングの明かりを……。

以下略



25:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 21:01:30.21 ID:887tizks0

 ――何?

 部屋には明かりが灯っていない。唯一の光源である玄関のライトが弱々しく廊下から届いているけれど、壁の陰にあるベッドを照らすには至っていない。薄ぼんやりとした暗闇の中だと、何が起こっているのかよく見えない。

以下略



26:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 21:06:02.71 ID:887tizks0

 たしかに、男の人と女の人が同じ部屋に居ればこういう事をする時もあるのかもしれない。でも、それは普通の人達の場合だ。私と真ちゃんは違う。

“男と女”じゃなくて、“幼馴染”が先にある関係だから。

以下略



27:名無しNIPPER[saga]
2016/02/27(土) 21:10:21.78 ID:887tizks0

 グルグル回る頭の中が、小さな違和感を覚えて思考を中断する。直に触れられてる部分にばかりに意識が向いてたから今まで気付かなかった。上着が少しづつ脱がされている。真ちゃんの指が器用に動いて、カーディガンのボタンを一つ、一つと外していく。

「あ、あの……真ちゃん?」

以下略



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