過去ログ - ゆき「亜人?」
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448: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/07/21(木) 00:29:30.58 ID:nHMOffOiO

胡桃 (あいつもこんな気持ちになるのかな……?)


穏やかさに包まれた胡桃には、他者について考える余裕もうまれていた。胡桃がまず思ったのは、車の中で気絶している美紀のことでも、校舎に取り残されている悠里と由紀のことでもなく、ここから去っていった永井のことだった。
以下略



449: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/07/21(木) 00:30:17.75 ID:nHMOffOiO

だが一方で、永井は、めぐねえの幻影を見る由紀や現実逃避的な虚構の産物である学園生活部の存在をごくあっさりと受け入れ、順応さえしてみせた。それが合理的な判断のもとでの行動に過ぎないということは胡桃もうすうす感づいていたが、この意外な許容は胡桃を警戒をすこしほぐすこととなった(出会って早々、胡桃が永井を殺害した事実を、気持ちの整理がつくまえに処理されてしまったことも、警戒心を生む遠因となった)。

永井の合理性は、自身の安全を保持するために発揮されるが、属している共同体の人間関係の調整に使われることもある(場合によっては、共同体の安定性に不利益をもたらしかねない者を排除する方向に動きかねないその合理性は、学園生活部との生活のなかにおいて、ぎりぎりのところで回避された)。永井がくだした学園生活部への合理的判断のなかで最良のものは、屋上にあるめぐねえの十字墓に、彼女の遺髪を収めたことだと胡桃は考えていた。

以下略



450: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/07/21(木) 00:32:05.72 ID:nHMOffOiO

胡桃 (しかし、妙な話だよな)


胡桃はうつむきながら考えをつづけた。
以下略



451: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/07/21(木) 00:33:07.45 ID:nHMOffOiO

“かれら”にむかってそう言い放った胡桃の目に、奇妙な人影が映った。その人影の全身は黒い包帯が巻かれているかのように、身体に何本もの横線がはいっていおり、黒塗りされた顔には目や鼻といった人間にあるはずの顔のパーツが一切なかった。

その人影は手になにかを持っていた。柄の部分からさきに分厚い鉄板をくっつけたそのなにかは、遠目から見るとまるで剣のようだった。だが、鉄板の刃である部分は丸みをおびていて、その分厚さから推察される重量は、とても人間には持ち上げられない重さをほこっていると思えた。なにより、長さが異様だった。胡桃は正面から見ていたので気づかなかったが、黒い人影が持っている鉄板は十メートル近い長さがあった。

以下略



452: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/07/21(木) 00:33:54.49 ID:nHMOffOiO

それをきっかけに、胡桃にむかっていた“かれら”は一斉に黒い幽霊のほうを向いた。“かれら”にできたのは、それだけだった。黒い幽霊に対して、“かれら”は悲しくなるほど無力だった。

幽霊は鉄板の柄を両手で握った。ゆっくりと持ち上がる鉄板が、十メートルにもわたる異様な長さを見せたとき、胡桃はその鉄板がなんなのかわかった。それは、墜落したヘリコプターのメインローターだった。

以下略



453: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/07/21(木) 00:35:28.53 ID:nHMOffOiO

“かれら”の頭部が雨のように降り注いでくる。地面についた瞬間、“かれら”の頭部はスイカのように割れてしまった。二十を越える切断された頭部が空から落ちてくる。胡桃はへたり込んだまま、頭の雨をただ呆然と見ているしかなかった。

しかし、幽霊の行動はそこでおわりではなかった。黒い幽霊の動作はまだ連続している。幽霊は、こんどはメインローターを真っ直ぐ上に持ち上げた。天に伸びる分厚い剣のうしろで黒い粒子もまた天に昇っている。胡桃は剣が振り下ろされる場所がどこなのか、瞬時に悟った。

以下略



454: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/07/21(木) 00:36:11.98 ID:nHMOffOiO

胡桃「なに……なんなの……」


自失している胡桃の前に一台の車が停まった。その赤い自動車は胡桃のよく知っているものだった。助手席側のドアが開いて、運転手の顔が見えた。
以下略



455: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/07/21(木) 00:46:47.09 ID:nHMOffOiO
>>442 の前にあるはずの文章が抜けてました。1レス内に収まりきらないので、二つに分けて投稿します。


ーー巡ヶ丘市内

以下略



456: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/07/21(木) 00:47:19.77 ID:nHMOffOiO
警察署への道筋は、駐屯地から学校への航空ルート上にはなく、反対方向だったので永井は車で移動していた。警察署へ続く大通りは、玉突き事故で衝突した何台もの自動車と横転したトラックの荷台から放り出された大量の土砂に埋められ、とても車が通れる状態ではなかった。いっそのこと車をどこかに隠し、警察署まで歩いていこうかと永井が考えていたとき、地盤が沈んだかのような鈍い衝撃音が車体を揺さぶった。

永井は車から降り、音のした方向を見やった。もうもうと黒煙が猛り上がるその場所は、巡ヶ丘学院高等学校であることが永井にはすぐにわかった。




457: ◆8zklXZsAwY[saga]
2016/07/21(木) 00:51:42.72 ID:nHMOffOiO
今日はここまで。更新に時間がかかってすみません。


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