8:名無しNIPPER
2016/03/20(日) 20:13:11.10 ID:r/YI2ILr0
−−−
「コイツが死んで、もう一ヶ月か・・・・・・」
俺は力無く呟きながら、墓石に水をかける。
9:名無しNIPPER
2016/03/20(日) 20:16:29.69 ID:r/YI2ILr0
「春樹君・・・・・・」
「もう一ヶ月・・・・・・早いよな。まだあの日のことを忘れられねえよ」
花を供えながら呟く。
本当に、あっという間だ。今でも、瞼を閉じればあの光景が余裕で思い浮かぶ。
10:名無しNIPPER
2016/03/20(日) 20:19:25.15 ID:r/YI2ILr0
−−−
夏美が、僕のことが好きだって?
僕は驚きのあまりその場に立ち尽くしてしまった。
信じられない。彼女が僕のことを好きだなんて、信じられないよ。
11:名無しNIPPER
2016/03/20(日) 20:22:30.27 ID:r/YI2ILr0
「僕のことが、見えるんですね!?」
「だから見えると言っておろうが。わしを馬鹿にしとるのか」
「ははっ・・・久しぶりに人と会話できたっ・・・・・・」
僕は老人の肩を叩こうとしたが、もちろんすり抜ける。
12:名無しNIPPER
2016/03/20(日) 20:25:20.64 ID:r/YI2ILr0
「なッ・・・・・・笑わなくていいじゃないですか!」
「いやいや・・・はははっ・・・青春しているな〜と思ってな」
「恥ずかしい・・・・・・」
「良いじゃないか。そこまで強い思いを持てる君の未練は自ら解決することで、成仏できそうじゃのう」
13:名無しNIPPER
2016/03/20(日) 20:27:46.12 ID:r/YI2ILr0
−−−
「はぁ・・・・・・」
俺は適当にパソコンの画面をスクロールする。
14:名無しNIPPER
2016/03/20(日) 20:30:36.64 ID:r/YI2ILr0
『あきと ぼくだよ はるきだよ』
「はぁ?」
いたずら、にしては趣味が悪い。
15:名無しNIPPER
2016/03/20(日) 20:33:01.24 ID:r/YI2ILr0
「なんで・・・・・・」
『なんでじゃないよ ぼくなんだってば ゆうれいになったんだよ』
俺はあんぐりと口を開けた。
16:名無しNIPPER
2016/03/20(日) 20:36:30.85 ID:r/YI2ILr0
『ぼくはほんとうにゆうれいなんだよ いまきみのうでだけにひょういしてる』
は・・・ははは・・・・・・だめだ。もう頭が理解できない。
俺の顔は引きつった笑みを浮かべる。
17:名無しNIPPER
2016/03/20(日) 20:39:14.25 ID:r/YI2ILr0
「それで、俺に何か用事があるんだろ?」
『うん ぼくがじょうぶつするためにきょうりょくしてほしいんだ』
どんなことでも協力してやるよ。
18:名無しNIPPER
2016/03/20(日) 20:42:23.77 ID:r/YI2ILr0
俺は固まる。
波川さんに告白しろ、だって?
「できるわけないだろッ!だって、お前は彼女のことが好きなんだろ?」
19:名無しNIPPER
2016/03/20(日) 20:45:20.15 ID:r/YI2ILr0
「でも、やっぱり無理だよ。だって、波川さんはお前のことが好きなんだよ」
『きいたよ』
なんだ、聞かれてたのか。
20:名無しNIPPER
2016/03/20(日) 20:48:03.41 ID:r/YI2ILr0
−−−
授業が終わり、私は教科書やノートを鞄に入れる。
はぁ、今日は塾がある日だ・・・・・・めんどくさいけど仕方がないなぁ。
そういえば、春樹君が死んだ時も塾の日だっけ。
21:名無しNIPPER
2016/03/20(日) 20:52:31.39 ID:r/YI2ILr0
−−−
屋上で待っていると、秋人が来た。
「春樹、いるんだよな?とりあえず呼んできたから、ちゃんと見とけよ〜」
22:名無しNIPPER
2016/03/20(日) 20:55:29.06 ID:r/YI2ILr0
「ふぅ・・・・・・」
幽霊の体とは違って、人の体は、重力を感じるし、何かに触ることもできるし、誰かと話すこともできる。
でも、彼の体を乗っ取るわけにはいかない。
僕はキッと前を見る。
23:名無しNIPPER
2016/03/20(日) 20:58:20.67 ID:r/YI2ILr0
「あぁ。でも、僕はもう死んでるからそれができない。だから、秋人と幸せになってくれ。アイツは良い奴だし、信用もできる。だから、彼と、幸せ、に・・・・・・」
その時、意識が遠のきかける。
直後、秋人と僕の魂が分離する。
秋人は倒れ込むかと思ったが、すぐに腕で自身の体を支え、立ち上がる。
24:名無しNIPPER
2016/03/20(日) 21:01:20.38 ID:r/YI2ILr0
「二人とも。僕と仲良くしてくれてありがとう。二人とも、大好きだよ」
「春樹君!」
夏美は僕の体を抱きしめた。それと同時に、僕の体は崩れ去った。
体はなくなったのに、意識だけある。その意識も、徐々に空に昇っていく。
25:名無しNIPPER
2016/03/20(日) 21:04:17.67 ID:r/YI2ILr0
−−−
「・・・・・・いっちゃったね」
波川さんの言葉に、俺は静かに頷く。
26:名無しNIPPER
2016/03/20(日) 21:07:10.44 ID:r/YI2ILr0
−−−
「よう。未練解決したみたいじゃねえか」
黒い子猫がそう言ってにゃはっと笑う。
27:名無しNIPPER
2016/03/20(日) 21:08:55.30 ID:r/YI2ILr0
終わりです
読んでくれてありがとうございました!
28:名無しNIPPER[sage]
2016/03/20(日) 22:01:46.03 ID:Ozj1U/cAO
乙!
28Res/25.31 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。