131:名無しNIPPER[saga]
2016/04/23(土) 23:19:56.13 ID:XpbS07Gqo
本当に眠るのが怖かった。どうしてなのかも分からない。夢がさめてしまいそうな気がしたからかもしれない。
意識は熱でただでさえぼんやりしていて、そのせいで俺は夢見心地だ。
どこか現実感のない視界。
132:名無しNIPPER[saga]
2016/04/23(土) 23:20:26.48 ID:XpbS07Gqo
宮沢賢治の全集。「よだかの星」だ。
「……本、読んでたの?」
133:名無しNIPPER[saga]
2016/04/23(土) 23:20:58.41 ID:XpbS07Gqo
◇
その日、小鳥遊こさちが夢に出てきた。
134:名無しNIPPER[saga]
2016/04/23(土) 23:21:49.80 ID:XpbS07Gqo
こさちは屋上のフェンスの向こう、縁に座り込んで素足をぶらぶら揺らしていた。
俺はフェンスの内側にいた。
「藤宮さんはいい子ですよ」
135:名無しNIPPER[saga]
2016/04/23(土) 23:22:16.10 ID:XpbS07Gqo
「はい。なんとなくですけど、そんな感じがします」
「はあ」
136:名無しNIPPER[saga]
2016/04/23(土) 23:22:52.79 ID:XpbS07Gqo
「……最後に会ったとき、忘れてくれって、言ってたよな」
「はい」
137:名無しNIPPER[saga]
2016/04/23(土) 23:23:32.70 ID:XpbS07Gqo
「……ごめん、さっぱり意味が分からない」
「でしょうね。でもこさちは、ずっと先輩に会いたかったんです」
138:名無しNIPPER[saga]
2016/04/23(土) 23:24:00.29 ID:XpbS07Gqo
小鳥遊こさち。
小鳥遊こさち。
いくら記憶を浚ってみても、思い当たるものは何もない。
139:名無しNIPPER[saga]
2016/04/23(土) 23:24:29.92 ID:XpbS07Gqo
「それはたぶん、先輩にもわかると思う」
「……」
140:名無しNIPPER[saga]
2016/04/23(土) 23:25:19.72 ID:XpbS07Gqo
「うれしい、っていうのとは、違うかな。
でも、こさちに会いにきてくれたら、先輩の抱え込んだ荷物が、少しだけ軽くなるかもしれない」
だから、こさちは言うんです。
141:名無しNIPPER[saga]
2016/04/23(土) 23:26:13.23 ID:XpbS07Gqo
「ありがとうございました、先輩。ずっと言いたかったんです。
こさち、先輩がいてくれたから、ここまで生きてきました」
俺には、その言葉の意味がまったくわからなくて。
396Res/275.74 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。