15:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:30:13.18 ID:IXgA3K/jo
  
  俺は思わず声をあげて、嵯峨野の体を持ち上げようとした。 
  
  引きずられるように、体が持っていかれる。 
  
16:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:30:56.57 ID:IXgA3K/jo
  
 ◆[Remit as yet no Grace] 
  
  
  何もかもが遠く聞こえる。 
17:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:31:26.40 ID:IXgA3K/jo
  
  ――急に視界が開けた。 
  
  白っぽい光に目が灼ける。 
  物と物との境界線があいまいになった視界が、徐々に輪郭を取り戻す。 
18:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:31:54.85 ID:IXgA3K/jo
  
 「どうしたんですか、タクミくん?」 
  
  子供の姿で首をかしげて、彼女は俺を見ている。 
  くりくりとしたいたいけな瞳が、俺の顔をすぐそばから見つめている。 
19:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:32:21.56 ID:IXgA3K/jo
  
  俺は、水の中から体を出した。 
  水着一枚の自分のからだは小さな子供そのもので、妙な心細さを覚える。 
  
 「休憩ですか?」 
20:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:32:48.06 ID:IXgA3K/jo
  
  どこか遠い、誰かのはしゃぎ声。 
  楽しそうな笑い声。 
   
  ウォータースライダーから、水に飛び込む音。 
21:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:33:15.00 ID:IXgA3K/jo
  
 「きらきらしてた」 
  
  俺の言葉に、るーは首を傾げた。 
  
22:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:33:49.39 ID:IXgA3K/jo
  
 「俺が生まれなければさ」 
  
  と、そんな仮定を、ときどき持ち出したくなる。 
  
23:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:34:18.98 ID:IXgA3K/jo
  
 「……でも、ずっと剥がれないんだ」 
  
  知ってしまったことを、後悔するわけじゃない。 
  それなのに、知ってしまってから、俺の視界にはいつも、とれない曇りのように何かが張り付いたままだ。 
24:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:34:46.60 ID:IXgA3K/jo
  
 「きらきらしてた。きらきらしてたんだよ、知る前までは」 
  
 「……」 
  
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