103:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 01:29:03.21 ID:49W9hqJ1o
そんな風に蘭子が外の世界と交流しているのを複雑な気持ちで見守っていると、美優はふと、自分が蘭子をどうしたいのか分からなくなる時があった。
蘭子には幸せになってほしい。その願いは絶対だった。
しかしドールにとっての幸せとは一体なんだろう。
成長もしない、そして今はまだ人間社会に関わることもできない、ドールにとっての"人生"とはなんだろう。
104:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 01:29:41.62 ID:49W9hqJ1o
こういう時、最も尊重されるべきなのは蘭子の意見である。
2人は機会を見て蘭子に尋ねてみた。
楓「蘭子は、美優さんがいなくても一人で外を歩ける?」
105:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 01:30:49.46 ID:49W9hqJ1o
そこから先は、なんというかお決まりのパターンである。
「どっちでも……」と答えれば「蘭子が決める事なの」と詰め寄られ、かと言って楓と美優のどちらかを選択するような不公平は蘭子には耐えられなかったし、そもそも決断するほどの意志など最初から無かったので、あとはもう黙っているしかないのである。
そんな虚しい詰問と沈黙の末、蘭子の目に大粒の涙が見えた頃にはもう遅く、とうとう嗚咽を上げて泣きじゃくり始めてしまった蘭子に、2人は猛省しつつひたすら謝り倒すのだった。
106:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 01:31:24.81 ID:49W9hqJ1o
そんな折のことである。
蘭子にとって転機となるようなイベントが起きた。
ある日、楓がいつものように仕事をしていると、楓の上司である渋谷部長からこんな話を持ちかけられた。
「ちょっと、高垣くん」と人目を憚るように声をかけられ、何事かと思い聞いてみると、
107:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 01:32:06.06 ID:49W9hqJ1o
帰宅し、美優にその事を報告すると、ひとまずは喜んでくれたようだった。
美優「私、ずっと考えてたんです。蘭子ちゃんには、まずドールの友達がいた方がいいんじゃないかって……」
楓「友達になれるかどうかは分かりませんけどね」
108:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 01:33:06.46 ID:49W9hqJ1o
◇ ◇ ◇
1年前と同じ、冷え込んだ空気に星が綺麗な夜だった。
109:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 01:33:44.56 ID:49W9hqJ1o
大人たちの娘自慢、というよりもドール自慢大会が始まろうとしていたその時、凛がこっそり卯月に耳打ちするとおもむろに席を立った。
凛「…………あんたも来なよ」
蘭子「わわわ私ですかっ?!」
110:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 01:34:29.90 ID:49W9hqJ1o
凛「……それで、あんたが卯月の新しい友達ってわけ?」
蘭子「え? は、はい……たぶん……」
凛「ふぅん……」
111:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 01:35:01.61 ID:49W9hqJ1o
卯月「でもね蘭子ちゃん。凛ちゃんは別に蘭子ちゃんのことが嫌いなわけじゃないんです。こんな風にツンツンしてるけど、根はとても優しい女の子なんですよ」
蘭子「う、うん……」
卯月は蘭子と違って随分おしゃべりなドールだった。
112:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 01:35:40.97 ID:49W9hqJ1o
卯月「お父さんは、安物ドールだから欠陥の一つもあるだろうって言ってました。やっぱりそうなのかな?」
凛「欠陥なんかじゃない!」
凛が激昂した。
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