9:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:41:42.66 ID:6D4QUdRpo
◇ ◇ ◇
翌朝、楓は美優の小さな悲鳴で目が覚めた。
楓「どうかしましたか……?」
10:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:42:26.20 ID:6D4QUdRpo
美優「な……な……!?」
楓「あ、目を覚ました」
楓はニコニコと微笑みながら蘭子を正面から見つめ返した。
11:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:44:01.89 ID:6D4QUdRpo
食卓を3人で囲んで、1人は朝食を美味しそうに食べ、1人は挙動不審にチラチラと横を見やりながら危なっかしく箸を運び、1人は椅子に座っ
たままじっと目を伏している。
美優「ら、蘭子……ちゃん?」
12:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:45:21.28 ID:6D4QUdRpo
楓「……えー、まず所有権ですが、私と美優さんの共有財産ってことになります。二人まで登録できますので、まあいわゆる親権、みたいな感じですか」
見やすいように拡張されたPCのスクリーンに細かい規約がびっしりと書かれている。
蘭子と美優は講義を受けるような格好でちょこんと座ってそれらを仰ぎ見ていた。
13:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:46:52.55 ID:6D4QUdRpo
楓「取説はあらかじめ美優さんのIDOLに同期しておきました。ドールについて分からない事があればIDOLで調べれば問題ないかと思います」
IDOL(Individuals Databasing Of Lingo)とはポータブル式の量子基盤である。
旧世代における携帯電話と同じような形をしており、用途も似たようなものだが、本質は似て非なるものである。
14:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:47:36.10 ID:6D4QUdRpo
美優「蘭子ちゃんは、そのうちしゃべったり動いたりするんですか?というか……成長とか、するんですか」
楓「はい。まあ私たち次第でしょうけれど」
美優「というのは?」
15:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:48:37.52 ID:6D4QUdRpo
楓「確かに値段は張りますけど、安いのもあるんですよ。実際、会社の先輩にもローンを組んで飼ってる人いますし」
美優「飼うって、もうそれペットじゃないですか……」
楓「言葉のアヤです」
16:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:49:30.41 ID:6D4QUdRpo
美優はしばらく楓からドールについて説明を受けた。
曰く、食事や風呂、排泄などは気を使う必要がない。
曰く、外見は14歳の少女だが精神や意識が適齢に育つのは時間がかかる。
曰く、怪我や病気(故障)した場合、メーカーへ迅速に問い合わせる事。
17:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:52:15.42 ID:6D4QUdRpo
◇ ◇ ◇
美優と楓が同棲を始めてから1年と少し経つ。
18:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:53:09.94 ID:6D4QUdRpo
蘭子はしゃべりかけても正面を向いたまま反応らしい反応を見せない。
美優(中身はまだ赤ん坊みたいなものだって言ってたし、私の話は全然理解できてないんだろうな)
そうだと分かっていても、美優はなぜかそうしなければならないような気がして、自分の話をし続けた。
19:名無しNIPPER[saga]
2016/05/31(火) 03:54:22.40 ID:6D4QUdRpo
顧客との販売取引、郵送連絡、仕入れの確認、納期の調整、卸問屋のチェック、その他雑用をこなしていると、いつの間にか夕方になっていた。
凝った体を伸ばしながら蘭子の様子をうかがう。
相変わらずテレビをじっと見ているが、番組はローカルニュースに切り替わっていた。
無意識に揺れる蘭子の瞳にテレビの淡い光がチラチラと反射している。
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