2:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:43:00.08 ID:sf9XWsg90
「これだけで、本当にいいんですか?」
段ボールに残った私物をしまいながら尋ねる彼に、はい、と簡単に返した。
「細かいものはこちらで捨てちゃいますから。Pさんこそ、あんまり余計な荷物持っていかない方がいいのでは?」
3:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:44:18.81 ID:sf9XWsg90
大切なもの。
その言葉にチクリと胸が痛んだが、なんともなかったかのように涼しい顔をして見せた。
「寝に帰ってきてるだけなんて、ひどいです。私、いっつも待っていたのに」
4:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:44:53.90 ID:sf9XWsg90
自分で話を振っておいて、ここまで的確に墓穴を掘るとは思っていなかった。
突然の真剣な表情に、自分でも信じられないほどのダメージを受ける。
バカだなぁ私。彼のこういう、思い立ったら一途なところを好きになったのに。
5:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:45:35.73 ID:sf9XWsg90
「さて、後は荷物を取りに来てもらうだけですね。やっと一服できるー」
そういって、彼は窓を開けて、西日のあたるベランダに出た。
ふたつ寄り添ったサンダルの赤い方を履いて、私も外に出る。
6:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:46:01.75 ID:sf9XWsg90
「あの荷物、どうするんですか?」
「配送依頼はしているので、待っている間にシャワー浴びて取りに来てもらったらもう出発しようかな、と思ってます」
「そうですか。相変わらず、この手の段取り組むのうまいですね」
7:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:47:03.93 ID:sf9XWsg90
「実際、学祭運営やってなかったら美優さんと出会ってなかったし。ホントやってよかったです」
「焦りましたよ。キャンパス歩いていたら急に『ミスコンに出てみませんか!』なんて言われちゃったんですから。ナンパかと思いました」
「ナンパっていうより、俺の初めてのスカウトでしたね。あれがうまくいったのもプロデューサーになったきっかけの一つでもあります」
8:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:47:35.67 ID:sf9XWsg90
「美優さんはこれから、どうするんですか?」
「……お仕事のことはあんまり考えていませんけれど、とりあえずここは引っ越そうかと思ってます」
「え! そうなんですか!?」
9:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:48:08.52 ID:sf9XWsg90
「いいんですよ。ツバメならどこでもみれますから」
「そりゃまぁ、そうですけど」
「それに……一昨年くらいから、来なくなっちゃいましたし」
10:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:48:45.16 ID:sf9XWsg90
「Pさんもいないし、ツバメも去って行った。もう、ここにいる理由もなくなっちゃったなぁって思いまして」
「……」
「そんな顔しないで下さいよ。巣立ちは良いことです。ね?」
11:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:49:39.55 ID:sf9XWsg90
「結構悩みましたね」
「しょうがないじゃないですか、こんな魅力的な提案」
「そうですね。昔はPさんの方から誘ってきましたものね」
12:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:51:26.18 ID:sf9XWsg90
シャワーを浴びる彼を待ちながら、何気なく部屋を見渡す。
よく見たらいろんなところに思い出が散らばっている、学生時代から8年間過ごした部屋。
朝まで一緒にお酒飲んで、就職先でうまくいかなくて、アイドルに誘われて、幸運にも人気が出るようになって。
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