1:名無しNIPPER[saga]
2016/07/25(月) 00:54:04.13 ID:Jp+bK6hio
私はカチューシャ。偉大なる地吹雪のカチューシャ。
だけど二年前の私は偉大でもなければカチューシャでもなくて、ただの小さな女の子だった。
その頃の私はあまりにも普通すぎてちょっと語るには恥ずかしいところもあるのだけれど
後進に道を譲るにあたって何故私が嫌われ者の尊大で厳しいカチューシャになったのかを記しておこうと思う。
当時の私はなりふり構っていられなかったのだ。
今思えばもう少しうまいやり方もあったのかもしれないが私には力が必要だった
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2: ◆naranciafLZ1[saga]
2016/07/25(月) 00:55:02.28 ID:Jp+bK6hio
だから、あのような粛清を起こしたのだ。
3:名無しNIPPER[sage]
2016/07/25(月) 00:55:19.65 ID:tybZCZ8ho
読みづらい
改行しろ
4: ◆naranciafLZ1[saga]
2016/07/25(月) 00:56:09.40 ID:Jp+bK6hio
ロシアが好きで、高校では戦車道をやってソビエト戦車に乗ると決めていた私は、猛勉強の末プラウダ高校の門を叩いた。
「へぇ。おめ、かっちゃんっつのか。歓迎すよ。よろしぐ、かっちゃん」
「よ、よろしくお願いします!」
5: ◆naranciafLZ1[saga]
2016/07/25(月) 00:57:08.33 ID:Jp+bK6hio
戦車道チームの隊長さんは笑い皺がチャーミングな明るい人で
他の子達と比べて明らかに発育の悪い私のことも見捨てないで指導してくれた。
隊長のことを好きになるのに時間はかからなかった。
「やっぱ隊長さんは素敵よね。ほんっと憧れちゃう!」
6: ◆naranciafLZ1[saga]
2016/07/25(月) 00:58:28.58 ID:Jp+bK6hio
ノンナという子とはいつの間にか行動を共にすることが多くなった。
黒い髪をまっすぐに下ろし、雪のように白い肌は恐ろしく化粧っけがないにも関わらずシミひとつ無い。
切れ長の瞳は涼しげに開かれてすっと立った鼻梁とのバランスが絶妙である。
その上身長は一七○センチオーバーで健康的な肉付きなのだから、外見において非の打ち所がない。
私は小さいから誰からも見おろされるのだけれど、未だに見おろされるのが好きじゃない。
7: ◆naranciafLZ1[saga]
2016/07/25(月) 00:59:41.68 ID:Jp+bK6hio
「んじゃ、二人組ば作って」
「はーい」
砲撃や操縦の練習は二人組で行うことが多い。
8: ◆naranciafLZ1[saga]
2016/07/25(月) 01:01:07.88 ID:Jp+bK6hio
誰もついてこられないという意味はすぐにわかる。
「ん」
「すごい、またど真ん中!」
9: ◆naranciafLZ1[saga]
2016/07/25(月) 01:01:55.00 ID:Jp+bK6hio
「こんなとこにいたのね」
「あ、えっと」
「かっちゃんでいいわ。みんなそう呼んでる」
10: ◆naranciafLZ1[saga]
2016/07/25(月) 01:05:32.69 ID:Jp+bK6hio
「ノンナ、私はね、こんな体よ。小学生の頃から身長が伸びなくなったの。
だから体力がなくて装填手なんて絶対無理。操縦も椅子に座ったら脚が届かないわ。
ロシアの戦車が好きだからここに来たけれど戦車道っていう競技に向いてないこの体を呪いたいわよ」
「なんか、ごめん」
11: ◆naranciafLZ1[saga]
2016/07/25(月) 01:06:38.71 ID:Jp+bK6hio
「ノンナ覚えてる?」
「覚えてない」
「まだ何も言ってないわ」
12: ◆naranciafLZ1[saga]
2016/07/25(月) 01:07:53.84 ID:Jp+bK6hio
「それで、隊長さんが手を抜いているってどういう意味なの? 何か論拠があるんでしょう」
「うん、先輩たちが言ってたけど隊長さんは中学の時結構有名な選手だったらしい。
一年の時からレギュラーだったけど隊長になってから練習内容をガラッと変えたって。
プラウダは強豪と聞いていたから、私は正直ヌルいと思っている」
13: ◆naranciafLZ1[saga]
2016/07/25(月) 01:09:05.03 ID:Jp+bK6hio
「出よう」
「そうね」
ノンナに促されて店を出ると夜の空気が肌に冷たかった。
14: ◆naranciafLZ1[saga]
2016/07/25(月) 01:10:30.20 ID:Jp+bK6hio
全国大会は特に予選などもなく参加できる。
参加している学校が少ないのだ。
「なんとか試合メンバーに入れてよかったわ」
15: ◆naranciafLZ1[saga]
2016/07/25(月) 01:16:22.96 ID:Jp+bK6hio
大会は目立った番狂わせもなく進み、
プラウダ、サンダース、グロリアーナ、そして黒森峰が四強に残った。
私は試合が進む中でも戦術の勉強をし、ノンナも実践の中で砲撃技術に磨きをかけていった。
準決勝の相手は黒森峰、件の天才西住まほは一年生ながら私たちと同様選手として登録されている。
16: ◆naranciafLZ1[saga]
2016/07/25(月) 01:17:45.71 ID:Jp+bK6hio
「隊長、意見を言っても」
「なした?」
「捨て石を使います。本隊は離脱し布陣して、継続的に囮を出し誘導、
17: ◆naranciafLZ1[saga]
2016/07/25(月) 01:18:56.26 ID:Jp+bK6hio
私の予想通りプラウダ高校は敗北した。
頭のなかにはノンナの
「隊長さんは手を抜いているような感じがしてあまり好きじゃない」
18: ◆naranciafLZ1[saga]
2016/07/25(月) 01:20:16.66 ID:Jp+bK6hio
三年生はそのまま引退した。
私は最後に隊長さんから呼びだされた。
なんだろうと思ったら引き継ぎだと幾つかの資料を渡される。
「かっちゃん、あん時は悪がったな。おめの話ば聞がねくて。
19: ◆naranciafLZ1[saga]
2016/07/25(月) 01:22:20.49 ID:Jp+bK6hio
「んだばってさ。それでも黒森峰さは勝でねえのよ。
勝づために苦しい練習ばりして、それでも勝でねえんだば、何のために苦しむんだが、わがんねっきゃ。
だったら最初っから勝づごどを目的にせず、楽しむごどを目的にするほうが良いんでねえがな、
って、おらは隊長になる時考えだんだよな」
20: ◆naranciafLZ1[saga]
2016/07/25(月) 01:23:33.83 ID:Jp+bK6hio
「黒森峰さ勝づごどがら逃げで楽しさという綺麗事ば喋ってだおらは、
結局悔しさからは逃げられねがった」
それが隊長さんの辿り着いた答だったのだと思う。
さて、と前置きして隊長さんは振り返った。
21: ◆naranciafLZ1[saga]
2016/07/25(月) 01:24:27.96 ID:Jp+bK6hio
隊長さんの最後のお願いは私にとっても望むところだったのだけれど、
今のぬるま湯につかった連中、
特に現二年生にそのままきつい練習をさせても要らぬ反発を生むだけだと考えた。
「ノンナ、私はプラウダを勝てるチームにしたい。
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