過去ログ - モバP「週の半ばの燃えない煙草」
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11: ◆30lx83ehPU[saga]
2016/09/21(水) 20:07:02.64 ID:gVaw4GonO
男は溜息を1つ漏らしてから、呟くように語り出した。

「火のついてない煙草なんて、何の役にも立ちはしない。…まるで、インクの入ってない万年筆みたいなものだ」

男はそういった。寸分狂わず同じ喩えが出てきたことに少女は驚き、そして同時に少しだけ嬉しかった。
以下略



12: ◆30lx83ehPU[saga]
2016/09/21(水) 20:21:23.33 ID:gVaw4GonO
男はもう1つ溜息が漏れそうなのを今度は堪えて、仕事に戻ろうとした…が、まだ何か言いたげな少女が目に付き、回しかけた椅子を止めた。

「……えっと、その……その、ね」

普段から言葉を選びがちな彼女だが、ここまで言い淀むのはただそれだけではないだろう。
以下略



13: ◆30lx83ehPU[saga]
2016/09/21(水) 20:37:25.52 ID:gVaw4GonO
少女としては、気を遣ったつもりはなかった。
ただ、素直に思ったことを言っただけだった。

それだけのことが、最近出来るようになったから。
目の前の男が、自分をそうしてくれたから。
以下略



14: ◆30lx83ehPU[saga]
2016/09/23(金) 01:41:27.96 ID:SPf8UhYr0
「煙草はもういいの?」

ちょうど車を走らせ始めたところで、少女はそう言った。

「ああ、咥えておいて欲しかったか」
以下略



15: ◆30lx83ehPU[saga]
2016/09/23(金) 01:46:18.03 ID:SPf8UhYr0
男は答えない。

答えないというより、その質問に対して、明確な答えを返せずにいた。
ただ、

以下略



16: ◆30lx83ehPU[saga]
2016/09/23(金) 01:56:04.03 ID:SPf8UhYr0
「…プロデューサーは、私が周りに気を遣いすぎだって言うけど…私から見れば、プロデューサーの方がそうだよ」

「……………」

男は応えない。
以下略



17: ◆30lx83ehPU[saga]
2016/09/23(金) 02:04:17.98 ID:SPf8UhYr0
車が信号で止まった。

この場所の信号に引っかかると長いことを知っている男はサイドブレーキを引き、ハンドルから手を離す。

そして大きな溜息と共に、小さく笑いながら、ようやく答えた。
以下略



18: ◆30lx83ehPU[saga]
2016/09/23(金) 12:04:25.96 ID:Ntvj8yobO
「Pさんが泣かないからだよ」

「俺は大人だ。泣いてる暇はないんだよ」

「私だって泣きたいから泣いてるんじゃないよ」
以下略



19: ◆30lx83ehPU[saga]
2016/09/23(金) 12:15:26.21 ID:Ntvj8yobO
「うん」

少女はそれだけ返した。
それ以外に返す言葉は見つからなかったし、きっとそれ以外に何も言う必要は無かった。

以下略



20: ◆30lx83ehPU[saga]
2016/09/23(金) 12:23:32.46 ID:Ntvj8yobO
いつの間にかラジオは次の番組が始まっていた。

パーソナリティの声は、随分と聞き慣れたものだった。

「あ…友紀さんの声…」
以下略



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