過去ログ - 水本ゆかり「清澄」
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10:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:27:26.48 ID:snFV7Fpq0

 人の多いこの街。あふれるような、この街――
窓の向こうを流れていくその姿を眺め、私は目を細めました。
夜を裂くきらめきは、スモーク張りを通しても眩しいのです。

以下略



11:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:28:00.02 ID:snFV7Fpq0

 ため息を吐くと、出て行った空気の分だけ体が沈みました。
クッションの効いたシート。何となく撫でていたくなる、手触りのいい生地。

 この上で体を丸めて、猫のように眠りに就けたら気持ちがいいでしょうね。
以下略



12:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:28:33.46 ID:snFV7Fpq0

「疲れたよね、お疲れさま」

 私は少し頬を熱くしました。
見透かされたように思ったのです。
以下略



13:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:29:08.41 ID:snFV7Fpq0

 上品なダークグレイのスーツに包まれた細い体。
締まったというよりこけた頬と、濃い隈の隠せない目元。
街灯の明かりが差し込まないと、車内の陰に溶けてしまいそうな人でした。
しかし彼こそ、私をかぼちゃの馬車に導いた、立派なプロデューサーなのです。
以下略



14:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:29:41.85 ID:snFV7Fpq0

 初々しい感じ。

 私は胸の内で繰り返しました。ほめられているのでしょうか?
しかし浮かんだ疑問は置いて、よかった、と私は口にしました。
以下略



15:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:30:15.37 ID:snFV7Fpq0

 今日のお仕事はCDの販促でした。
レコード屋さんのスペースをお借りして、来てくださったお客さんと握手したり、ご購入いただいたCDにサインをしたり――
これまでの人生、立ち寄ったお店で偶然出くわすと、遠巻きに見ていたような出来事。
机を挟んだ反対側から、私はそこに参加したのです。
以下略



16:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:30:48.81 ID:snFV7Fpq0

「焦るなよ〜?」

「ええ?」

以下略



17:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:31:22.32 ID:snFV7Fpq0

「ほら、まだ始まったばっかだから。最初はこんなもんだよ。アンテナ張ってて、アイドルめっちゃ好きです好き過ぎますーみたいな、ありがたいお客さんしか来ないから。これからだよ、ゆかりちゃんのロードは」

「ロード?」

以下略



18:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:31:55.66 ID:snFV7Fpq0

「そう、です、ね」

 しかしそんな思いと裏腹に、私の口は、自然と言葉を紡いでいました。

以下略



19:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:32:45.74 ID:snFV7Fpq0

 あの一瞬。

 先のことを考えた、あの一瞬の内に、私は何かを取りこぼしてしまった。
そんな気がしてならなかったのです。
以下略



20:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:33:19.64 ID:snFV7Fpq0

         2

 朝は早く起きる。

以下略



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