過去ログ - 水本ゆかり「清澄」
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30:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:39:14.24 ID:snFV7Fpq0

「ずっと、気付かない振りをしていましたが……本当は、怖かったんです。不安だったんです。毎日頑張って、必死にやって、でも自分がどこにいるのか、わからなくて……」

 震えを抑えるように、私は組んだ手指に力を込めました。

以下略



31:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:39:47.98 ID:snFV7Fpq0

「輝かなくちゃいけないって、まぶしくならなきゃいけないって、いつでもそう思っていたんです。アイドルなんだから、って。でもそうしたら、怖いのに、笑ったり、つらいのに、もっと努力するなんて言ったり……そんな風に、なっていたんです。気付いたら、わからなくなっていて……」

 理想だから、そうするのか。

以下略



32:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:40:21.47 ID:snFV7Fpq0



「ウソ、ついているみたいじゃないですか?」

以下略



33:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:40:55.45 ID:snFV7Fpq0

 しかし尋ねるなり、私は顔を伏せてしまいました。
私は確かに、彼の答えを、考えを聞きたかったのです。
けれど、まっすぐに私を見返す視線に、耐えることもまたできなかったのです。

以下略



34:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:41:29.14 ID:snFV7Fpq0

 そしてそれが、真実かどうかは関係ないのです。

 水瓶に泥をひと匙加えると、中身を飲むことはもうできません。
わずかでも疑いを抱いた瞬間に、私の心も、一様に染まってしまったのです。
以下略



35:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:42:02.47 ID:snFV7Fpq0



「そんなことないよ」

以下略



36:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:42:36.11 ID:snFV7Fpq0

 そのときでした。

 相槌も打たず耳を傾けていた魔法使いが、そっと口を開いたのは。

以下略



37:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:43:10.05 ID:snFV7Fpq0

「だからだよ。心を奥まで見通せるから、そんな風に不安になるし、光る理想が届くから、そんな風に自分を責める。ねえ、ゆかりちゃん」

「……はい」

以下略



38:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:43:43.30 ID:snFV7Fpq0

 私は口をつぐみました。
そんな大層な話をしたつもりもなかったのです。
けれども確かに、私の理想は、そういうことなのかもしれませんでした。

以下略



39:名無しNIPPER[saga]
2016/10/18(火) 23:44:16.81 ID:snFV7Fpq0

「お客さんはね、それを求めてるんじゃない。ゆかりちゃんを、求めてるんだよ。こんな風に、お仕事のことを考えて、お客さんのこと考えて、悩んで悩んで、思い詰めてしまうような、そんなまぶしい人に、現れて欲しいの」

 まぶしい、と私は胸の内で繰り返しました。

以下略



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