7: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/07(水) 21:13:18.63 ID:Q/KsUm3o0
『プロデューサーさん? どうしました?』
ああ、耳慣れた幸子の声が嬉しい。
「心配かけたな、幸子。いま目覚めたところだ。まずはお前に報告しなきゃと思って」
8: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/07(水) 21:16:36.46 ID:Q/KsUm3o0
ソロライブというのは、まさか、地方のショッピングモールを回る、例のリリースツアーのことを指しているのか?
いやさすがの幸子もそこまで自惚れてはいないだろう。
首を捻りながらも、確かに遅刻はまずいと思い、シャワーを浴び、バスタオルを腰に巻き付け歯を磨く。
9: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/07(水) 21:18:31.51 ID:Q/KsUm3o0
ライブは盛況のうちに幕を閉じた。
幸子の歌う曲は俺の知らないものばかりだったが、終始、俺の目からは涙が溢れて止まらなかった。
ライブが終わって、あのポスターのように光り輝く表情で楽屋へと戻ってくると、幸子は開口一番「次はドームですね!」などと宣った。
気が早いと返してやると「フフーン、このボクですからねえ、来年の今頃には叶ってるはずです」と頼もしいことを言ってくれる。プロデューサー冥利に尽きる。
10: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/07(水) 21:25:48.47 ID:Q/KsUm3o0
自宅のベッドへ横になると、いつの間にやら俺は眠ってしまっていたようだった。
雀の鳴き声がかすかに聞こえ、起き上がると、カーテンの隙間から朝日が差している。
部屋の中を見回すと、雑多に散らかったスーツや酒瓶。こじんまりとした液晶テレビに、こたつと座椅子。
11: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/07(水) 21:28:31.73 ID:Q/KsUm3o0
自分の体を見るとどうやらこちらも裸らしい。
恐る恐るベッドを降り、誰の部屋だか知らないが勝手にシャワーを借りて、床に落ちていたスーツに着替えた。
さすがにトランクスや靴下なんかは、新しいものをタンスから拝借した。
幸子はシャワーの音で目を覚ましてしまったらしく、寝ぼけ眼であくびをしている。
12: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/07(水) 21:29:45.43 ID:Q/KsUm3o0
どうやら俺は担当アイドルに手を出してしまったらしい。
真っ赤になった幸子は「後ろ! 向いててください!」と叫び、スーツと同じく床に落ちていた下着やワンピースを拾い着替えた。
居心地が悪かったのか、少しの間もじもじと目を泳がせていると、そのまま「顔を洗ってきます」と洗面所の方へ飛んでいった。
13: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/07(水) 21:32:01.53 ID:Q/KsUm3o0
アイドルは、恋愛をしてはならない。
理由は明白。ファンがそれを嫌うからだ。
アイドルが男と付き合えば、それはファンに対する裏切りと取られてしまう。
もちろん全員が全員ではないだろう。
14:名無しNIPPER[sage]
2016/12/07(水) 21:33:38.78 ID:Tj5uyqVVo
つまんね
15: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/07(水) 21:34:22.31 ID:Q/KsUm3o0
とにかく、やってしまったのだ。
過ぎ去ったことを後悔しても仕方がない。
問題は、ここからどう振る舞うかだ。
幸子とプロデューサーが関係を持ってしまったからとて、大衆にバレなければスキャンダルにはならない。
16: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/07(水) 21:36:35.95 ID:Q/KsUm3o0
まさか、また記憶喪失か?
こたつに置かれていたテレビのリモコンを取り、電源ボタンを押すと、ちょうど朝のニュース番組が放送されている。
表示された日付は、
「2016年……? 11月13日……?」
17: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/07(水) 21:41:15.02 ID:Q/KsUm3o0
よし、こうしよう。
昨日のあれは夢。今は記憶喪失。
つまり俺は9月13日から2ヶ月間、記憶をなくしてしまっていただけなのだ。
その間に家は引っ越し、酒の趣味も変わったのである。
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