82: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 22:02:57.26 ID:9ecZiZ/N0
「あぁ……なるほどなあ」
突然、理解できた。
どうしてこの男の部屋が幸子色に染められているのか。
83: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 22:10:19.88 ID:9ecZiZ/N0
2016年12月9日。
次の世界で俺はプロデューサーへと戻っていた。
事務所には幸子がいる。
当たり前に思っていた景色をどこか他人事のように見てしまう。
84: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 22:13:04.75 ID:9ecZiZ/N0
「……あー、俺、何かしたか」
幸子は「え」と目を丸くしたが、すぐさま、
「そ、そんな何でもないことみたいに言いますけど、プロデューサーさんがあそこまで頑張ってくれたこと、ワタシは嬉しかったんですよ」
85: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 22:16:29.77 ID:9ecZiZ/N0
「何でもない。幸子にそう言ってもらえるなら、頑張った甲斐があったな」
「ホントですか!?」
途端に笑顔になる幸子が眩しくて、俺は思わず目を細める。
86: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 22:17:48.50 ID:9ecZiZ/N0
「あぁ、ありがと――」
と、プレゼントへ手を伸ばそうとしたのだが、待て、俺よ。
頑張ったのは俺じゃない。
昨日の俺、この世界のプロデューサーだ。
87: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 22:20:22.11 ID:9ecZiZ/N0
……あぁ、そうだ。
気付いてしまった。勘違いをしていたのだ。
今までの世界だって同じだ。
88: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 22:24:33.39 ID:9ecZiZ/N0
「え、な、なんで……?」
幸子は笑顔から一転、涙で瞳を潤ませる。
「なあ、幸子」
89: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 22:26:30.63 ID:9ecZiZ/N0
幸子はこっそりと目尻の涙を拭った。
「い、言い訳ですか……ま、まぁ、カワイイワタシですから、聞いてあげなくもないです」
俺は「ありがとう」と礼を言うと、ソファへ移動し、幸子と向かい合って座った。
90: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 22:32:40.79 ID:9ecZiZ/N0
「以上が、俺がお前のプレゼントを受け取れない理由だ」
「――あの、ごめんなさい、プロデューサーさん。す、少し整理させてください」
幸子は俺が話を終えるまで紅茶に口をつけなかった。
91: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 22:35:25.89 ID:9ecZiZ/N0
世界を旅する俺の存在を話すのは、これが初めてだ。
事実を明かすのを禁じていたわけじゃない。
これまでは、その必要がなかっただけだ。
92: ◆JeBzCbkT3k[saga]
2016/12/09(金) 22:37:21.80 ID:9ecZiZ/N0
「……どうするって?」
「さっき、自分で言ってたじゃないですか。色んな世界への旅は、やりたくてやってることじゃないんですよね。元の世界には、戻りたくないんですか?」
戻りたい。
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