376: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2017/08/19(土) 03:11:08.52 ID:cilu0gxg0
「こ、こんばんは…」
恐る恐るという様子で、フェアリーは拠点の2階にあるテラスの外側から、顔だけ出して平山に挨拶した。最初は驚いていた彼女も、最近では当たり前になったこともあって、どうしたのか確認する。
「ん〜ん、なんにもないよ」
377: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2017/08/19(土) 03:26:50.23 ID:cilu0gxg0
今となっては門日が治療室の主となっていた。ここへ来る前の放浪期間、そして身を置いていた他勢力のように、この場所が常に負傷者で利用されると思っていた彼女にとって、在庫管理と警備の任務だけで済む日々は、穏やかなものではあった。
探索組、回収組が優秀なのは今更語るまでもない。だが、そんなメンバーがここに運び込まれる――であろう――日が迫っている。その思いから、ここの処治療室の管理に力が入ってしまっているのが、ここのところだった。
ノックの後、扉が開く。入ってきたのは喜読だった。聞いても具合が悪い訳ではないようで、診察用に置いてある椅子に彼女は腰掛け、門日と対面する形になる。
378:名無しNIPPER[sage]
2017/08/19(土) 03:39:46.37 ID:Gkl89bRV0
乙!
思えば最初期から因縁があった訳だしなぁ。まぁそいつはみんなと佐原が何とか頭を潰してくれたけど
まさか二体目が出てくるなんてなぁ
379: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2017/08/19(土) 03:44:14.66 ID:cilu0gxg0
一方の喜読はやや身体を震わせていた。一度、彼女の身体に刻まれた斬り傷を門日は見ている。その傷は、以前パラノイアに襲われて、操られたクローゾンビによって負ったものだとは聞いている。
この意味がなんであるかと言えば、拠点のメンバーの中で最もパラノイアの脅威を知っているのは、喜読。そう言い切れるということだ。
「私は、はっきり言うなら逃げ出してしまいたい。そう考えています」
380: ◆e6bTV9S.2E[saga sage]
2017/08/19(土) 04:36:20.64 ID:cilu0gxg0
>>373-374
まぁ、なんのかんの言っても自由気ままにやってるだけだからねぇ
>>378
思えばそうね。覚が一番大変な目にあってるやも
381:名無しNIPPER[sage]
2017/08/20(日) 02:21:12.02 ID:m3I/vlpo0
おつ
おずおずフェアリーちゃん可愛いねぇ
382: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2017/08/22(火) 22:54:41.83 ID:vTZEfOOH0
モーテルの台所には、佐田が自分で書いた図面に目を通していた。拠点にこれから設ける予定の大型の発電施設。これができれば、この場所における施設の建設、設備の設置など、大掛かりなものの着手が可能になってくる。
しかし、今回の発電施設は大がかりのものだ。知識がある者は限られているのは当然として、物資に関しても潤沢ではない。失敗した、では済まされるものではない以上、その真剣さはいつもより増している。
「……何を見ているの?」
383: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2017/08/23(水) 01:34:40.77 ID:ACHivlhz0
勝は静かにトレーニングをしていた。彼には守るべき存在が居る、肉親と言ってもいい覚美弥のことだ。パラノイアとの戦いにおいて、誰よりも彼女を守ることに比重を置いている。林道から教えを施されるようになってから、自主的に始めたそれは、ここのところ念入りに行われていた。
水を少し飲みほして、一息つく。拠点(ここ)に来てから、彼も成長している。教えと訓練のおかげで鍛えられた身体になり、更に一回り大きくもなった。
覚はその姿を自分の目で見ることができないことを、寂しく思っている。彼女にとっても、勝は愛おしい、弟のような存在。メンバー(ひと)の目から彼の成長を伺えても、それはまるで切り貼りされた写真を見ているようなもの、どんなに望んでも失った眼はもう戻らない。そんなことは、強化され肥大化している脳で、理性的に理解もしている。どうしようもないのだと。
384: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2017/08/23(水) 02:02:09.26 ID:ACHivlhz0
EVEはいつも通り、与えられている夜間の警備を行っている。アンドロイドであるEVEには、多少の明かりがあれば周囲を見回すことが可能だ。また、ある程度の遠方も見ることができる。何より睡魔が存在しない彼女にはこの任務は適任だと言えた。
眠っていた部分が解放され、人間味を増した今でも、この結論に変わりはない。しかし、1人で佇むことになるのが多いこの時間帯で、EVEもまた人と同じように考え事が多くなっていた。
生まれ落ちた自分は、なぜ1人しか存在しないのか。ロッサという存在が生まれた今でも、彼女の中で湛える孤独という虚無は眠っていた。そしてその思いさえもまた、自分を生み出した山海による産物に過ぎないのではないか。という思いが、その孤独を色濃くさせている。
385: ◆e6bTV9S.2E[saga]
2017/08/23(水) 02:31:15.46 ID:ACHivlhz0
そこには多くの群衆らしい人影がいた。壇上の上にある机には蝋燭が灯され、群衆はその前の広いフロアにある外周に身じろぎもせず立っている。そしてその中央には、両腕を一人ずつ捕まれ、膝立ちの状態になっている人間がいた。その中央部分の周囲にも蝋燭が灯され、人間を拘束しているのは、ゾンビだ。
壇上に1人だけいた人影がゆっくりとその人間に近づく。人間、男は恐怖に染まる顔が蝋燭から放たれる柔い光で浮き彫りで、足音だけが近づいてくることで増す恐怖が、身体をも震わせる。
足元が見え、そして全体が現れる。褐色肌に、赤い目。羽毛付きの白色のロングコート、腰には西洋の剣が鞘に収まっている。その存在が、ゆっくりと男に近づき、顎に手を添えた。その表情は、言ってしまえば品定めをするようなものだ。
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