過去ログ - 追われてます!
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926:名無しNIPPER[saga]
2018/01/10(水) 14:02:10.58 ID:LnmL9/o10

【指先】

 外気はつめたく、しとしとと降り落ちる秋雨が頬を濡らした。
 もう九月も終盤に差し掛かってきている。こういう雨も、もしかしたらこれから増えていくのかもしれない。
以下略



927:名無しNIPPER[saga]
2018/01/10(水) 14:02:40.45 ID:LnmL9/o10

「おー、まさか心配してくれたの?」

「いや、そんなバカな人はいくらなんでもいないよな、と思いまして」

以下略



928:名無しNIPPER[saga]
2018/01/10(水) 14:03:10.29 ID:LnmL9/o10

 本当なら、こういう話は全てすっ飛ばして私の話をするべきと思ったけれど、それでも彼女から何かきっかけを与えてくれることを願ってしまった。

「ちょっとした昔話とか、白石くんが描き始めた漫画についてとか」

以下略



929:名無しNIPPER[saga]
2018/01/10(水) 14:04:10.38 ID:LnmL9/o10

 その代わりに、私との距離を一歩詰め、半身に寄りかかってくる。
 そのままでは取り零してしまうのではないかと座ったまま背筋を伸ばして目を合わすと、彼女の表情はそれまでの真剣なものから慈しむようなものへと変化していく。

「でもね、それだけってわけじゃないの」
以下略



930:名無しNIPPER[saga]
2018/01/10(水) 14:04:46.07 ID:LnmL9/o10

 踏み越えるかどうか決めるのは、私が判断するべきことなのだと思っていた。
 でも、そんな気持ちとは裏腹に、訊いてほしいとも思っていた。……多分、自分のことを自分で語るには、かなりの勇気を必要とするから。

「理由」と部長さんは囁いた。さっき言った言葉と同じようで、意味の異なる言葉。
以下略



931:名無しNIPPER[saga]
2018/01/10(水) 14:05:22.61 ID:LnmL9/o10

 ふと気付くと、触れていた指をしっかりと握ってしまっていた。最初は小指だけのつもりだったのに、すぐに手を広い方へと滑らせていた。
 それは、いけないことだとわかっていて、けれど、彼女だっていつも私にこうやって触れてきていた。

 反射的なものだと偽ることにした。
以下略



932:名無しNIPPER[saga]
2018/01/10(水) 14:06:52.60 ID:LnmL9/o10

【救/堕/明け方の虹】

 雨足は僅かながらも弱まる様子を見せ、雲の切れ間から明るみが顔を出し始めた。
 私が口を開くに至るまでの間、彼女は急かすわけでもなく、ただ黙って待ってくれていた。
以下略



933:名無しNIPPER[saga]
2018/01/10(水) 14:08:01.22 ID:LnmL9/o10

 好き、という気持ちは曲がりなりにもあったはず。
 ……けれど、絵を描くことをおそらく本気で好いている部長さんにとっては、私の好きは好きとは呼べないのではないかと思ってしまう。

 だから、彼女が頷いてくれたことは救いだった。
以下略



934:名無しNIPPER[saga]
2018/01/10(水) 14:08:46.29 ID:LnmL9/o10

「中学校はそこそこ美術活動が盛んなところで、公募とか市の展に作品を出すようにしていて、一応自由ではありましたけど、みんなはそれを目標に頑張ってました」

「シノちゃんも?」

以下略



935:名無しNIPPER[saga]
2018/01/10(水) 14:09:15.63 ID:LnmL9/o10

 私が最後にちゃんと描いた絵。
 私が好きなはずの私が描いた絵。
 見てほしい誰かに向けて描いた絵。

以下略



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