628: ◆ujHylXatJU[saga]
2019/11/14(木) 21:11:50.11 ID:JuXJT1NJO
シャツの上に上着を戻すと、片手の指でさっさとボタンをはめる
「さあ、私の最後のつまらない話はおしまいです。何ができるか分かりませんが、私も出発します」
629: ◆ujHylXatJU[saga]
2019/11/14(木) 21:13:20.62 ID:JuXJT1NJO
優花里さんを腕を引っ張り上げて背負うと、若干でも瓦礫で塞がった道を選んで進む。まだ偵察はいる可能性が高い。そしてその時、今の私は戦えない
時折更に建物が崩れる音と、遠くから銃撃音、砲撃音を耳にしつつ、ある場所を目指す
630: ◆ujHylXatJU[saga]
2019/11/14(木) 21:14:02.38 ID:JuXJT1NJO
「家に帰ったら……作りかけだったティーガーI……黒森峰西住みほ仕様を完成させなきゃ……」
何か息を吐き切るようにゆっくりだが一気に言う。家に帰ったら、か……自分のことはよく分かっているはず。だからこそ、私はその話に乗り続ける
631: ◆ujHylXatJU[saga]
2019/11/14(木) 21:16:40.73 ID:JuXJT1NJO
どこだろう、ここは
なんだか、あたたかい
632: ◆ujHylXatJU[saga]
2019/11/14(木) 21:17:59.87 ID:JuXJT1NJO
優花里さんの遺体を背負ったまま、道中たまたまIV号を発見した。そのことは非常に幸運だったが、IV号はいつも見慣れた姿とはかけ離れたものだった。辛うじて黒森峰の追撃を逃れたのであろう。砲塔には大きな穴が開き、車輌は傷だらけだ。シンボルのアンコウのマークもかなり傷が入っている。しかもそれが路上のど真ん中で停車している
中にはまだ生きている人が、仲間がいるのか。背負ったまま駆け足で近づく
633: ◆ujHylXatJU[saga]
2019/11/14(木) 21:19:30.84 ID:JuXJT1NJO
その言葉には有無を言わさない迫力と鋭さを持ち合わせていた。だがそれよりもある言葉が私をその場に留めさせる
戻ってきた。一体どこから?この出血じゃこの車内からは動けないはずだ。ましてやさっきのさっきまで気絶していたのだぞ?
634: ◆ujHylXatJU[saga]
2019/11/14(木) 21:21:47.72 ID:JuXJT1NJO
IV号は土煙を上げ、未だに順調なエンジン音を立てながら走り始めた。車内の私たちは無言で各々の作業をこなしている
麻子さんは操縦桿を握り、物見窓から前を注視しながら車輌をまっすぐ前に進める。目も霞んでゆくだろうに、その中でよくできるものだ
一方私は車内に置いてあった布で華さんを包んで、それを椅子の後ろで縛る。友人として死者にできる最低限のはなむけだ
635: ◆ujHylXatJU[saga]
2019/11/14(木) 21:23:44.09 ID:JuXJT1NJO
「……分かった。だが……済まない……そろそろ私の気力が、限界に近づいているようだ……」
限界か……仕方ない。これだけ出血していながらここまで意識を保ってこれただけでも十分だ
636: ◆ujHylXatJU[saga]
2019/11/14(木) 21:24:53.07 ID:JuXJT1NJO
「……西住さん……あなたはあの世とか……神とか、を信じるか……」
637: ◆ujHylXatJU[saga]
2019/11/14(木) 21:26:28.55 ID:JuXJT1NJO
「麻子さん!」
車長席から降りて彼女の元に向かう。しかし、その呼びかけにも、揺さぶりにも答えは、反応は無かった。もう一度彼女の名前を叫んで揺さぶるが、ただ首が振り子となっている、という結果しかやってこなかった
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