【モバマス】琥珀色のモラトリアム
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40:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:45:55.95 ID:vBuyWfgt0
「……でも、全くの無関係という訳ではないかな。ボクたちは否応無しに大人になることを強いられているのだと、実感してしまっている。『二十歳過ぎればただの人』と言うけれど、これほどまでに実体を持つ感覚だとは思っていなかったよ」

「と、いうと?」

「今までは、疑うことなく進むことが出来た。ボクは特別な存在足り得るのだと。ヒトという枠すら超えた《偶像》にさえ、キミと共にボクはボク自身を昇華することが出来た……だが、時の流れというものは非情で、非常だ。ボクにはもう、『14歳』という特権は無い。生憎とボクは異星人ではないから、永遠に14歳で在り続けることなんてできない」
以下略 AAS



41:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:46:34.17 ID:vBuyWfgt0
「そう、だからきっとこれは現象としては『正気に戻った』と呼ぶのが正しいのだろうね。……そして、往々にして夢から醒めると待っているのは現実だ。それはボクを容赦なく押し潰して、日常に稀釈しようと襲いかかって来た。……無性に不安になったんだ。ボクは本当に此処に在るのか、此処に在るボクは何者なのか、と。キミならば、仮面の下の"ボク"を見てくれると、思った」

「……すまなかった」

「ああいや、いいんだ。咎めるつもりはないし、ボクの方こそすまなかった。感情の制御が出来ていなかったよ。……それに、今まで隠されてきたキミの言葉を聴くことができたからね」
以下略 AAS



42:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:47:14.28 ID:vBuyWfgt0
「大人と子供、か。いつかもそんな歌を歌ったね……あの頃からボクは、少しは大人になれただろうか」

独り言のように指向性を持たない呟きが、二人だけの部屋に霧散してゆく。

「……大人になるって、どういうことなんだろうな」
以下略 AAS



43:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:47:53.14 ID:vBuyWfgt0
「俺もさ、考えてみたんだ。大人になるっていうのはきっと、自分の弱さに素直になれる事なんじゃないかな」

「己の無力さを受け入れるということかい?」

「いや、少し違うかな……自分が非力だと理解して、それでも捨てられない何かを抱いて前を向く、それが大人なんだと、俺は思う」
以下略 AAS



44:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:48:54.12 ID:vBuyWfgt0
「…………ボクにはまだ、理解らないな」

その感覚に心当たりがない訳ではない。雨に打たれ、己の愚かさを嘆いたあの日。世界はカッコつかないことばかりだと、失敗から学んだあの日。きっとボクと蘭子は、ひとつ大人の階段を登ることができたのだろう。
それでもボクにはまだ、全ての弱さを認めてしまう勇気は無かった。

以下略 AAS



45:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:49:36.33 ID:vBuyWfgt0
お前は甘えるのが下手だからな、などと言いながら、彼はわしわしとボクの頭を乱雑に撫でた。その手はもう、先刻ほど冷たくはなかった。

「……子供扱いは遠慮願うよ」

「おっと失礼……それで、お役には立てたかな?」
以下略 AAS



46:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:50:06.56 ID:vBuyWfgt0
今度はボクがカップを置き、震えそうになる唇を引き締めて、努めて、努めて平静を保ったまま、率直に、思いの丈を告げる。
ーー嗚呼、こんなにも、素直になるというのは難しくて、むず痒いことだったのか。

「ボクは……ボク自身の力で、『キミの特別』になりたいと思った」


47:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:51:13.50 ID:vBuyWfgt0
再びカップに口を付けていたプロデューサーは、ボクの言葉を聞くと突然噎せ返った。そして、目を丸くしてこちらを見る。

「ええっと……それは、その……飛鳥さん?」

「ボクだってもう18歳だよ。いつまでも14歳の少女じゃあないんだ。それに……」
以下略 AAS



48:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:51:46.60 ID:vBuyWfgt0
理解り切っていたことだった。
長々と綴られた題目のような証明の、その結末は実に単純なもので。
ボクが定義するのを恐れていただけで、この感情は随分と昔から存在していたのだ。
ボクは彼と真に並び立つことを欲していたのだ。アイドルとプロデューサーという関係だけでなく、相棒として、パートナーとして。
退屈だったセカイに色を与えてくれた彼に、ボクが特別であると認めて欲しかったのだ。


49:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:52:23.39 ID:vBuyWfgt0
「えーーっと…………」

「優柔不断だね。相変わらずそこはキミの……」

返答に窮して唸っている彼をボクが咎めようとした時、部屋のドアがバタンと大きな音を立てて開き、誰かが飛び込んできた。
以下略 AAS



50:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:53:24.29 ID:vBuyWfgt0
「志希か……全くキミは、狙ったかのようなタイミングで……それでプロデューサー、これは?」

「そういえばまだちゃんと言っていなかったな。志希や蘭子たちにパーティの準備を進めてもらっていたんだよ……誕生日おめでとう、飛鳥。これからもよろしくな」

「……ありがとう、プロデューサー。忘れられているのかと思っていたよ」
以下略 AAS



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