16: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 00:58:47.64 ID:Ai+XpKnp0
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
  
 レッスンに身体が慣れてきた頃、写真集が完成し、発売された。 
  
 ゲラ刷りの段階で瑞樹は目を通していたが、いざ実物が完成すると、なんとも言えない気持ちになった。 
17: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 00:59:23.48 ID:Ai+XpKnp0
 夜の銀座駅には浮かれる若者はおらず、静かに賑わっていた。 
  
 早苗は、肩パッドで上半身がやたら大きく見える、赤いトレンチコートを羽織っていた。 
 中は白いセーターで、下は膝までの長さのスカート。 
  
18: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 00:59:56.42 ID:Ai+XpKnp0
 「まあ、ほっとけば」 
  
 早苗はそう言った。 
 瑞樹は、非通知にした10ケタの番号を思い浮かべながらも、抵抗した。 
  
19: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:00:32.34 ID:Ai+XpKnp0
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
  
  レッスンのジャージ姿が板についてきた頃、瑞樹はトレーナーに尋ねた。 
  
 「そういえば、カメラを見ないわね」 
20: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:01:34.73 ID:Ai+XpKnp0
 「それで、トレーナーさんから見て私はどれくらいになったの?」 
  
 ダンスの基本的な動きは全部覚えた。 
 ボーカルも、アナウンサー時代の貯金があり、思ったほどの苦労はしなかった。 
  
21: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:02:10.65 ID:Ai+XpKnp0
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
  
 ミニライブ当日。 
  
 デビュー曲の歌詞も、振り付けも完璧に頭に入っている。 
22: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:02:46.53 ID:Ai+XpKnp0
 瑞樹はステージに向かった。足取りはぎこちない。 
 とうとう、本当のライブ。場所は郊外のショッピングモールの一角。 
  
 “あの”川島瑞樹。客は集まっている。 
 1階だけでなく、2階、3階からも瑞樹を見下ろす人たちがいる。 
23: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:03:28.77 ID:Ai+XpKnp0
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 
  
 「おつかれさま」 
  
 悲惨なミニライブから逃げるように帰って来た瑞樹に、早苗が言った。 
24: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:04:10.73 ID:Ai+XpKnp0
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 ミニライブの後、瑞樹のもとに大量のファンレターが届いた。 
  
 彼女を気遣うような内容が大半で、残りはアイドルになったことを咎めるような趣旨 
25: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:04:41.00 ID:Ai+XpKnp0
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 手紙を読んだ3日後から、瑞樹はレッスンや仕事がないときでも、プロダクションに顔を出すようになった。 
  
 自分がどんなアイドルになりたいのか。何者になりたいのか。 
26: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 01:05:42.48 ID:Ai+XpKnp0
 瑞樹がアイドル課のリフレッシュルームへ向かうと、そこには早苗がいた。 
  
 「さっき、なんだか変なコを見たんだけど」 
  
 「楓ちゃんのこと?」 
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