スタンガン娘「観念しなさい!」テロリスト「ま、待て! 私は君を助けに……!」
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1:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/28(火) 22:22:45.23 ID:wSMTfuWsO
2050年代、某国。
少子高齢化が進み深刻な労働者不足に陥り、経済は低迷したその国で人間の栽培が行われた。

精子バンク並びに卵子バンクからランダムで選ばれ体外受精した受精卵をIPS細胞にて作り出された人工子宮内に着床させ胎児の苗を育てた。
そして10ヶ月程育成して、新生児を収穫する。

無論、収穫前にエコーや染色体検査を実施して、労働力足り得ない苗は間引いてある。

そうして手間暇かけて五体満足で障害を持たずに生まれた新生児であるが、その全てが社会において使い物になるかと言えばそうではなく、ある程度教育を施した後に試験を行い、適正のある優秀な労働者のみが出荷される運びだ。

では、その過程において職種への適正やめぼしい才覚がないと判断された苗木はどうなるかと言えば、やはり間引かれて処分される運命だ。

とはいえ、種から人間と呼べる程度まで育てた時間と労力は捨てるに惜しく、牛や豚と同じように無駄なく難病大病に苦しむ国民のドナー献体として、皮膚から臓器に至るまで取り出してから、その役目を終える決まりであった。

「献身は尊い。君たちの命に価値を与える」

生産者は苗木にそのように諭すものの、当人にとってはたまったものではないので必死に勉学に励み、技術を身につけ、素質を磨いていく。
栽培された労働者は死ぬまで政府の所有物であり、月々の賃金から育成にかかった費用を徴収される為、少しでも高い給料が貰える職にありつくことで彼らは自分の取り分が増えるのだ。

「働かざる者、息を吸うべからず」

働くことで、彼らは生きることを許された。

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2:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/28(火) 22:25:37.25 ID:wSMTfuWsO
「期末テストの結果を発表する」

労働者栽培センター。
そこは有り体に言えば学校のようなものだ。
保育園から幼稚園、小学、中学、高校、大学。
以下略 AAS



3:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/28(火) 22:28:11.59 ID:wSMTfuWsO
「今日からこの部屋の中で自由に過ごしてください。外出は出来ませんが、三食きちんと食事を食べ、睡眠をしっかりとって健康体でいる限り、私共が干渉することはございません。それではどうぞごゆるりと、お寛ぎくださいませ」

栽培センターから直送で運ばれたその施設は、病院とホテルが合体したような建物だった。
あてがわれた部屋はそれなりに広く、テレビやゲーム、漫画などの娯楽が充実していて飲み物や食べ物にも困ることはなく、これが噂に聞くところの漫画喫茶みたいな空間だと思われた。
しかし、そんな居心地の良い部屋から一歩出れば、そこは紛れもなく病院であり、白い壁と冷たいリノリウムの床がどこまでも続いていた。
以下略 AAS



4:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/28(火) 22:30:10.80 ID:wSMTfuWsO
《施設内に武装集団が侵入しました。各自警戒の上、自衛してください。繰り返します……》

はて、武装集団とは。テロリストだろうか。
まあ、こんなご時世なのでそうした輩も多い。
明日中にはクリア出来そうなゲームがあったのに、なんともタイミングが悪いと思った。
以下略 AAS



5:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/28(火) 22:32:12.33 ID:wSMTfuWsO
「観念しなさい!」
「ま、待て! 私は君を助けに……!」
「問答無用!」

バチバチバチバチバチバチバチバチッ!
以下略 AAS



6:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/28(火) 22:34:05.47 ID:wSMTfuWsO
「いいか、目隠しを外すぞ。噛みつくなよ?」
「ひとを犬扱いしないで」

そんな心外な前置きをされて拘束された私は目隠しを外されて、部屋の明るさに目を顰めた。

以下略 AAS



7:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/28(火) 22:36:24.06 ID:wSMTfuWsO
「いい? 私はね、秀でた才覚に恵まれなくて、何かしらの職種の適正すらなかったの」

これは紛れもない事実である。
だからこそ、期末テストで落ちた。
同時に生きる資格を失ったのだ。
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/28(火) 22:38:45.75 ID:wSMTfuWsO
「いま帰ったよ」
「……おかえり」

人権団体に引き取られてひと月が経った。
私の暮らしは施設の頃とあまり変わらず。
以下略 AAS



9:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/28(火) 22:40:11.76 ID:wSMTfuWsO
「何が観たい?」
「なんでもいい」
「君はそればっかりだな……」

夜寝る前に、一緒に映画を観る。
以下略 AAS



10:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/28(火) 22:41:47.27 ID:wSMTfuWsO
「今日は何を観る?」
「今日はいいわ」
「映画、観ないのかい?」

しばらくそんな生活を続けて、ふと思った。
以下略 AAS



11:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/28(火) 22:43:34.39 ID:wSMTfuWsO
「お願い。やって」
「い、嫌だよ! 危ないじゃないか!?」
「大丈夫。あくまで護身用だから平気よ」

デモンストレーションとばかりにバチバチと紫電を迸らせると、青ざめてガタガタと震えた。
以下略 AAS



12:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/28(火) 22:46:19.23 ID:wSMTfuWsO
「う、う……っ」
「あ、気がついたかい? 良かった……」

目を開くと、私は膝枕をされていた。
ほっとしたような保護者の顔が愛しくて。
以下略 AAS



13:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/28(火) 22:47:59.60 ID:wSMTfuWsO
「なんでも言って。なんでもやるわ」

そんなやる気満々な私に、言いづらそうに。

「私にも、その……スタンガンを……」
以下略 AAS



14:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/28(火) 22:49:23.34 ID:wSMTfuWsO
「じゃ、いくわよ」
「ま、待って!」
「なによ。今更怖気づいたの?」

さっさと済ませようとスタンガンを構えると、予想だにしないこんな注文が舞い込んできた。
以下略 AAS



15:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/28(火) 22:50:53.10 ID:wSMTfuWsO
「今度こそ、いくわよ」
「うん……きて」

唇を押し当てる。柔らかくて、気持ちいい。
同時にふとももの内側にスタンガンを押し当てて、放電開始。驚いたらしく、唇を噛まれた。
以下略 AAS



16:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/28(火) 22:52:14.45 ID:wSMTfuWsO
「昨夜はすまなかった」

翌朝、目覚めた保護者の謝罪は聞こえなかったことにして、私はにっこり笑ってこう言った。

「今日は私の番だから」
以下略 AAS



17:名無しNIPPER[sage saga]
2020/01/28(火) 23:23:46.81 ID:wSMTfuWsO
作中内でIPS細胞と記載しておりますが、正しくはiPS細胞であり誤字です。謹んで訂正致します。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。


18:名無しNIPPER[sage]
2020/01/30(木) 19:38:22.12 ID:5GqTuuHd0
なんだろう。
スタンガンに迸る電流のような恋話、濃い話。
スタンガンに迸る電流が二人の架け橋になるとは。
因みに『アイランド』という映画をご存知で?


19:名無しNIPPER[sage]
2020/01/30(木) 19:38:50.88 ID:5GqTuuHd0
良かったです。


20:名無しNIPPER[sage saga]
2020/02/02(日) 23:24:13.67 ID:Q6UuxfHDO
>>18
レスに気づくのが遅れ、お返事が遅くなってしまい、大変申し訳ありませんでした。
ID変わりましたが、>>1です。

『アイランド』という映画を観てみました。
以下略 AAS



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