玉座の間にて
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22: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/11(木) 09:26:51.81 ID:oNIrsuw50


息が切れる。これほど長い時間走り続けたのはいつ以来だろうか。
魔王城下の大合戦。王の呼びかけに参集した我ら一門は、その先駆けとばかりに魔物どもの大群へと突き進んだ。

以下略 AAS



23: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/11(木) 09:27:28.36 ID:oNIrsuw50

ふと気づくと、百余名ほど居た我が一門はその数を半分に減らしながらも魔王城を背に肉壁と化していた魔物の軍団を貫いていた。

「これは好機である!」

以下略 AAS



24: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/11(木) 09:27:56.52 ID:oNIrsuw50

抜き身の剣を杖代わり、よくぞここまでついてきたものだ。
よく見ると祖母の剣は、血と油に濡れている。驚くべきことに、その体たらくでも尚、祖母は幾体もの魔物を屠っていた。

「ああ、家宝の聖剣を杖がわりになんか使うから。ほら、切っ先が欠けちゃてるよ」
以下略 AAS



25: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/11(木) 09:28:22.83 ID:oNIrsuw50

「あ、あのハナタレには任せておけぬ」

祖母が、『ハナタレ』と呼ぶのは我が勇者一門の当主である大叔父上のことだ。
あの、老いてなお鍛え抜かれた体で、俺を含めた若衆をまとめてコテンパンに叩きのめす豪傑も祖母からすれば、いまだ頼りない弟というわけなのだろう。
以下略 AAS



26: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/11(木) 09:28:50.71 ID:oNIrsuw50

当主殿の号令に、再び歩みを進め魔王城へと突貫する。
だが、肩透かしもいいところ、我らは難なく入城を果たすことができた。それもそのはず、魔王城の城門は開け放たれ、その守り手すらも不在であったからだ。

妙だ、いくら総力戦と言っても本陣に兵を配置していないなんて在り得るのだろうか。
以下略 AAS



27: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/11(木) 09:29:17.67 ID:oNIrsuw50

「それで―――なんだって。つまり奴らは馬鹿だってことか?」

「侮ってはいかんぞ、剣の腕、個の強さに関して、魔物は人間より遥かに上だ。しかし、奴らは集団行動がとれん。魔王も、それがわかっているからこそ奴らを陣形もとらせず城下の大平原にまとめて置いているのだろう」

以下略 AAS



28: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/11(木) 09:29:45.21 ID:oNIrsuw50

背から放たれた祖母の悪態に、胸のあたりがカーっと熱くなる。
昔からそうだ。俺に限らず、我が一門は誰一人として臆病者と呼ばれることをよしとしない。その言葉を、撤回させるためならば一族皆、平気で命を張るだろう。身体中を巡っている勇者の奔流が、まるで呪いのようにそうさせるのだ。

だからこそ、例え一族同士で仲違いを起こそうと、その言葉だけは決して使われることはない。使ってはならない禁句なのだ。だがしかし、祖母は敢えてその禁を破った。
以下略 AAS



29:今日はここまでです ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/11(木) 09:30:12.99 ID:oNIrsuw50

魔物どもの不在で、俺達は束の間の平穏に息を整えることができた。体と刀にまとわりついた魔物どもの血肉を剥がし、大叔父の指揮の下魔王を探しはじめる。

非常に大きな城だというのに、魔王の所在は思いもよらず容易く見つかった。
城門から一直線に、城の中央へと通ずる廊下を進んだ果て。今、我らの前に、荘厳な装飾が施された巨大な扉が立ちふさがる。
以下略 AAS



30: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/13(土) 09:53:22.08 ID:ewOe4rJE0



冷気が、全身を突き抜けた。
極北の大地で鍛えぬいた肉体が、そのあまりの寒さに悲鳴をあげている。
以下略 AAS



31: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/13(土) 09:53:49.19 ID:ewOe4rJE0

命を奪いに殺到した我らを前に、なんと傲岸不遜なことか。
我らなど、とるに足らないということか。湧き上がる怒りに、凍った手足がじわりと溶けていく。
一門の全てが、同様の怒りを感じているのだろう。みな、一歩また一歩と魔王へと歩み寄る。

以下略 AAS



32: ◆CItYBDS.l2[saga]
2021/02/13(土) 09:54:15.68 ID:ewOe4rJE0

厚く、鈍い声が広間に響くと同時に、闇の瘴気が我ら勇者一門にのしかかる。
俺は、その重さに思わず膝をついてしまう。俺だけではない、一門の皆が、大叔父上ですら立っているだけで精いっぱいといった面持ちだ。

玉座の間に入って以来、感じていた冷たいプレッシャーの比ではない。
以下略 AAS



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