豊川風花「140日に1度のチャンス」
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1: ◆hhWakiPNok[sage]
2022/04/09(土) 13:31:36.34 ID:sRuakiC/0
 アイドルというのはなかなか忙しく、それなりに大変ではあるけれど、それでもなりたくてなった身なのでそれに対する不満はない。
 それに忙しいとはいえ、それでも休日ーーいわゆるオフの日を、プロデューサーさんはスケジュールをやりくりしてなるべく週に1度は取れるようにしてくれている。

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2: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 13:33:43.18 ID:sRuakiC/0
 しかしこのオフの日というのが問題で、実は私はオフの日でも特にすることや予定がない。かつての看護師仲間は夜勤もありなかなかオフが一緒になることはないし、友人たちも同じだ。
 劇場の同僚アイドルのみんなも、オフはまちまちであり、それに夜に行動できる成人組は人数も少ない。

 自然、オフの日というのは私にとって退屈な日となる。
 猫カフェやエステに行ったりもいいが、1人ではなんとなく寂しい。
以下略 AAS



3: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 13:34:54.94 ID:sRuakiC/0
 プロデューサーさんは、昔は全然オフのない生活をしていたらしい。
 ワーカーホリックにもほどがあるが、ある時に社長さんと小鳥さんからきついお達しがあったという。

高木社長「君の熱意や気持ちも分かるが、身体を壊してはなんにもならないよ。せめて少しでも……そう、月に一度……いや二ヶ月に三度ぐらいは休むことだ。いいかね。これは業務命令だ」

以下略 AAS



4: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 13:36:30.51 ID:sRuakiC/0
真壁瑞希「最小公倍数は、素因数分解……いえ、今のは忘れてください。周防さんはまだ小学生でした。ですので、すだれ算という方法で求めます。一緒にやってみましょう」

周防桃子「お願い、瑞希さん」

 事務所の私の隣で、桃子ちゃんが瑞希ちゃんに算数の宿題を聞いている。
以下略 AAS



5: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 13:37:52.78 ID:sRuakiC/0
 そう、私が最小公倍数について理解しているという証拠に、例えばとして計算してみよう。
 20日に1日のオフと7日に1日のオフが一致するには……?

 7は素数なのでこの場合は簡単だ。20と7をかければ最小公倍数は求められる。
 すなわち――
以下略 AAS



6: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 13:38:47.71 ID:sRuakiC/0
 改めて計算してみたことで、その数字の遠慮のなさに少し絶望を感じる。
 私とプロデューサーさんは、おおよそ140日に1度しかオフの日が重なることはないのだ。
 4ヶ月以上に1度!
 1年なんて、365日しかないのだからつまり、年に2度はあっても3度はないのが、私たちが一緒にオフとなる日なのだ。
 いやそれだって、私たちは規則的にオフを迎えているわけではない。様々なお仕事の合間にオフをもらっている。
以下略 AAS



7: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 13:39:49.38 ID:sRuakiC/0
風花「……あ、な、なんでもないのよ」

 慌てて私は、宿題をしている2人に取り繕う。

瑞希「先ほど……140日に1日と呟いておいででしたが、それに何か関係することなのですか?」
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8: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 13:40:34.63 ID:sRuakiC/0
 普段だったら、いざとなると勇気を出せない私はためらったかも知れない。だが、今は違う。
 先ほどの計算が、私を突き動かした。
 私にとってチャンスは、どんなに多く見積もっても140日に1度しかないのだ!

風花「プロデューサーさん!」
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9: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 13:41:07.48 ID:sRuakiC/0
P「そうか、風花も明日はオフだっけな。じゃあ……明日は一緒にでかけるか?」

風花「ふぇ?」

P「朝は早くても平気だよな? じゃあ、8時に迎えに行くから」
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10: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 13:42:15.75 ID:sRuakiC/0

風花「あ、あの……これはどういう……」

このみ「ついに風花ちゃんが一歩踏み出して、プロデューサーを誘って成功したお祝いと」

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11: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 13:43:35.83 ID:sRuakiC/0
風花「べ、別にそういうのじゃないんですけど……」

歌織「ないの?」

風花「え?」
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12: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 13:44:35.06 ID:sRuakiC/0
このみ「プロデューサー? まあ、好きよ。普通に男性として。でもまあ、積極的に私がセクシーをアピールするまでではないかもね」

莉緒「私も。向こうから『好きだ、つきあってくれ』って言われたら考えるけど、まあ……歌織ちゃんや風花ちゃんの方がずっと好きだってわかってるしね」

風花「えええ? わ、私ってそんな風に見られてたんですか?」
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13: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 13:45:27.60 ID:sRuakiC/0
莉緒「なるほど。140日に1度のチャンスか」

このみ「そう考えると、あの風花ちゃんがああいう行動に出たのも理解できるわね」

歌織「はあ……私にはまだまだ覚悟が足らなかったんですね」
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14: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 13:47:17.62 ID:sRuakiC/0
このみ「うふふ。今日は明日に備えて、早めに散会しましょうね。風花ちゃんは翌日に残らないタイプだけど、酔うのは早いから」

莉緒「明日、8時だったわよね?」

歌織「え!? 8時……?」
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15: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 13:48:03.81 ID:sRuakiC/0
 実際にはそうではなかった。
 いや、そうではなかったようだ。
 プロデューサーさんは時間通り、朝の8時に私の部屋のインターホンを押した。
 おかしくなるぐらいに、そしてお仕事と混同してるんじゃないかと思ってしまうぐらいにキッカリ朝8時にインターホンが鳴ったのだ。

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16: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 13:48:57.28 ID:sRuakiC/0
P「実は俺は、映画が好きだ」

 電車の座席に座ると、プロデューサーさんは重大な秘密を告白するかのように私の顔に口を近づけて言った。

P「忙しいので映画館へはなかなか行けないが、今でもDVDをたくさん買って見ている」
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17: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 13:50:42.02 ID:sRuakiC/0
P「今日、見に行くパラノーマル・アクティビティな」

 照れ隠しなのか、プロデューサーさんは急に話題を変えた。

P「元々は自主制作映画だったんだ。撮影は全部、制作者の自宅。それも7日間で取り終え、制作費はなんとたったの1万5千ドルだ」
以下略 AAS



18: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 13:51:46.83 ID:sRuakiC/0
 映画館に着くと、既に予約してあったのか、プロデューサーさんはすぐにチケットを発券する。

風花「あ、チケット代……」

P「いいって。今日はエスコートさせてもらう」
以下略 AAS



19: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 13:53:02.98 ID:sRuakiC/0
 カップルの寝室のドアが、2人の寝ている間に勝手に開くシーンに私は悲鳴を上げかけた。

風花「きゃ……」

 その時だった。暖かな手が伸びてきて、私の手を握ってくれた。
以下略 AAS



20: ◆hhWakiPNok[saga]
2022/04/09(土) 13:53:59.19 ID:sRuakiC/0
P「もしかして苦手だったかな? ホラー映画は」

風花「き、聞いてませんでしたよぉ〜ホラーだなんて」

P「前に仕事でミイラの役をやった時は……」
以下略 AAS



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