10:名無しNIPPER[saga]
2025/12/15(月) 02:37:37.07 ID:FdHXE52MO
雨宮の席の周りに人影は無く、雨宮は一人で本を読んでいた。
文字の羅列から決して目を離す事の無いその姿勢はまるで他人と関わる事を、他人が自分の世界に入って来る事を拒んでいるかのようだった。
もっとも、例え雨宮が本を読んでいなくとも、進んで雨宮と関わろうとする生徒は皆無だっただろう。
それは、雨宮が入学したての4月の上旬に話かけてきた生徒に言い放った言葉による。
11:名無しNIPPER[saga]
2025/12/15(月) 02:38:33.84 ID:FdHXE52MO
雨宮の席の周りに人影は無く、雨宮は一人で本を読んでいた。
文字の羅列から決して目を離す事の無いその姿勢はまるで他人と関わる事を、他人が自分の世界に入って来る事を拒んでいるかのようだった。
もっとも、例え雨宮が本を読んでいなくとも、進んで雨宮と関わろうとする生徒は皆無だっただろう。
それは、雨宮が入学したての4月の上旬に話かけてきた生徒に言い放った言葉による。
12:名無しNIPPER[saga]
2025/12/15(月) 02:41:37.09 ID:FdHXE52MO
その言葉で、雨宮桜子のクラスでの立ち位置は完全に決まってしまった。
話かけてはならない女(アンタッチャブルガール)。
危なげな妄想を内に秘めていて、そしてそんな妄想と現実を区別出来ていない頭のおかしい女だと、そう見なされたのだ。
当然そんな雨宮を気味悪がって近付く生徒は存在しなくなった。
13:名無しNIPPER[saga]
2025/12/15(月) 02:45:02.29 ID:FdHXE52MO
坂口「アゲハ?」
自らの席に荷物を置いて友人たちとの会話に戻ろうとしていたサカは、夜科が自分達とは違う方向へ向かっている事に気付き、声を上げた。
しかしそんなサカの声をも無視して夜科は近付いて行った。
背中を丸め、本を読む雨宮桜子の元へ。
14:名無しNIPPER[saga]
2025/12/15(月) 02:48:23.21 ID:FdHXE52MO
雨宮「なっ、なっ……!」
言葉にならない言葉を、雨宮は顔を赤らめながらに言った。
それは羞恥と言うよりは驚いたための紅潮であったが、夜科はその雨宮の赤みを帯びた顔に一瞬見とれてしまった。
一方で不意に衝撃を食らわせられた雨宮は、まるで睨みつけるが如く夜科を見つめる。
15:名無しNIPPER[saga]
2025/12/15(月) 02:51:33.83 ID:FdHXE52MO
雨宮「おっ……」
夜科「お?」
雨宮「……おっす!!!!!!!!!」
16:名無しNIPPER[saga]
2025/12/15(月) 02:55:00.30 ID:FdHXE52MO
雨宮「あ……ご、ごめん、なさい……」
やってしまったと、直ぐに自分の行動に後悔。
ふと気が付くと先程までの教室のざわめきは姿を潜めシン、と静まり返り、誰もが雨宮を見つめていた。
正確には夜科が雨宮に挨拶した瞬間には静まり返っていたのだが動揺に塗りつぶされている雨宮はそれに気付かない。
17:名無しNIPPER[saga]
2025/12/15(月) 02:58:40.67 ID:FdHXE52MO
俯き、破れる程に唇を噛み締める。
夜科に挨拶されても、いつものように拒めば良かった。そうすればこんな事にはならなかった。
どうしてそれが出来なかったのだと、自分を責める。
自分は、どうしてこの場に存在していたのか。
18:名無しNIPPER[saga]
2025/12/15(月) 03:00:36.29 ID:FdHXE52MO
どうすればいいのか分からない。自分がどうしたいのかも分からない。
雨宮が選んだのは、答えを出そうとする事から逃げ出す事だった。
優しくも残酷な選択だった。
悩む事を放棄する代わりに、また新たな自己嫌悪に苛まれる事になる。
19:名無しNIPPER[saga]
2025/12/15(月) 03:04:01.84 ID:FdHXE52MO
困惑する雨宮の腕を握り、夜科は駆けだした。
雨宮「ちょ、ちょっと!!?」
夜科「……」
20:名無しNIPPER[saga]
2025/12/15(月) 03:06:48.57 ID:FdHXE52MO
夜科「嫌な事を引きずるのは、夜までだ。もう終わった日の事を引きずるなんてアホらしいと思わねぇか?朝が来たらオハヨーさん、これでリセットすりゃいいんだよ」
雨宮「……っ」
驚いた顔を一瞬浮かべた後、雨宮の目尻に浮かんだ涙の成分が変わっていった。
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