過去ログ - 澪「私、あれに乗るんだ・・・」
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1:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 04:41:31.50 ID:PWoHFWY0
 けいおん!の田井中くんと秋山さんがメインのSSになります。

  内容は某作品をなぞった物になりますが、読んで頂ければ直ぐに判ると思います。
稚拙、駄文、つまらない上に、遅筆と言うか牛歩並みのペースになると思いますので、それでもいいという方に読んで頂けると良いと思います。
 
・・・…・・・…・・・…・・・…・・・…・・・…・・・…・・・…・・・…・・・
それではよろしくお願いします。



2:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 04:43:29.09 ID:PWoHFWY0
 2010年12月。

 俺は学校から自宅への帰路の途中にあるコンビニに、自転車を走らせて向かっていた。俺は、いつもそこをある人との待ち合わせに使っていた。
 俺の名前は田井中聡。部活と勉強に明け暮れるただの高校一年生だ。
 コンビニに着くと、待ち人は既に店の前にいた。制服に身を包み、長い黒髪にちょっとだけつり目の整った顔立ちの女性。その背に、ベースという楽器を背負っていた。
以下略



3:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 04:44:46.28 ID:PWoHFWY0
 「澪姉、早かったね」
 「ああ、学園祭も終わって、軽音部(ぶかつ)も落ち着いたからな。今は、部室に行ってもお茶を飲んで少し喋ってくる位だから。まぁ律達はあそこで勉強もしてるけどな」
 「そうなんだ、姉ちゃんや澪姉は今年受験だしね」
 「・・・そんな事より、そろそろ店に入って何か買わないか?少し寒いし、あんまりお店の前で喋っててもしょうがないしな」
 「うん、そうだね」
以下略



4:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 04:47:19.23 ID:PWoHFWY0
 2010年6月

 俺が高校に入学して最初の夏。俺はある思いを胸に適当な理由をつけて澪姉を街に連れ出した。買い物をしたり、食事をしたりしての街からの帰り道、俺は緊張を振り切って前を歩く澪姉に声をかける。
 澪姉は少しだけ顔をこちらに向けて「何だ?」と言った。澪姉の表情(かお)は見えなかった。
 「み、澪姉、前に俺が今の高校に受かったら、なんでもお願いを聞いてくれるって言ったよね」
以下略



5:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 04:50:42.48 ID:PWoHFWY0
 ・・・・・・。

 「・・・ああ、いいぞ。付き合ってあげる」
 
 少し(俺にとってはある意味、永遠とも言えるような)間の後、振り向きざまに澪姉は笑顔で言った。とびきりの笑顔だった。綺麗で、可愛くて、少しはにかんで、でもどこか嬉しそうで。俺はその笑顔とまさかのOKの返事に、上気した顔のまましばしの間、呆けてしまった。
以下略



6:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 04:52:17.20 ID:PWoHFWY0
 「澪姉はやっぱり姉ちゃん達と一緒の大学に行って、バンドも続けるんでしょ?」
 コンビニ近くの公園のベンチに座り、そのコンビニで購入したホットの缶コーヒーを飲みながら、俺は何となしに聞いた。
「うん・・・うん、そうだな。そうなるといいな・・・」
 澪姉の返事はどこか曖昧だった。澪姉と姉ちゃんが軽音部で一緒にやっているバンド、たしか、放課後ティータイム(だったかな?)のメンバーは本当に仲が良くて、姉ちゃんが部長ということもあってか、前はよく家に集まって打ち合わせとか、何故かゲームとかやってたり、この頃は引退したのにもかかわらず、部室に集まって受験勉強をやっている位である(澪姉は俺の為に、早く上がってくれている様だけど)。
 姉ちゃんもみんなで同じ大学に行くって言っていたし、てっきり澪姉も同じ考えだと思っていた。それに姉ちゃんが受ける大学位なら、澪姉なら問題なく通る筈だ。もしかして、


7:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 04:53:40.23 ID:PWoHFWY0
それとは別に何か思うところがあるのだろうか?。
 「そういうお前は期末テストどうだったんだ?ちゃんと勉強と部活両立できているのか?」
 澪姉はこの事についてあまり話したくないのか、逆に俺に聞いてきた。
 「うん、どうにか。部活ももうすぐレギュラー取れそうな感じだし、勉強も大変だけど、なんとかついていってるよ。澪姉が俺の高校受験の時に勉強の仕方まで教えてくれたお陰だよ」



8:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 04:55:04.33 ID:PWoHFWY0
 俺が通っている高校は、澪姉や姉ちゃんが通う桜ヶ丘より、もう一つレベルの高い進学校だ。当然ながら、元々の俺の学力では受かる筈が無かったのだが、澪姉があの約束をしてくれた上に、勉強も見てくれたお陰で、俺もここぞとばかりに奮起して、そして今でも信じられない位の猛勉強の末、どうにか奇跡的に受かる事が出来たのであった。澪姉には色んな意味で感謝してもし切れない位だ。
 「そうか、それならいいんだ。でも、ごめんな、せっかく付き合っているのに特に最近は勉強を見るどころか、二人で出掛ける事も殆ど出来なくて」
 澪姉は少し顔を曇らせて申し訳なさそうに言う。
 「しょうがないよ、澪姉、今年受験だし。でも今もこうして俺に会ってくれているし、俺はそれで充分だよ。あっそうだ、受験が終わってひと段落ついたら、二人でどこかに遊びに行こうよ」
 「・・・うん、そうだな。ありがとう聡。お前が私の好きになった人で本当によかった・・・」
以下略



9:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 04:58:05.63 ID:PWoHFWY0
 「やっぱりこの時期は日が落ちるのが早いな」
  
 澪姉が空を見上げながら言ったので、俺も沈みゆく夕日を見上げながら、「そうだね」と応えながら、ふと見上げている澪姉の横顔を見た。
 斜陽に照らされた澪姉はやっぱり綺麗だった。勿論いつ見ても綺麗なんだけど、黄昏てゆく景色と相まって、愁いを帯びた様に見える表情(かお)は、また違った魅力があった。こんな女性(ひと)が俺の彼女で、しかも同じ時間を共有しているのかと思うと、堪らない気持ちになる。いつまでもこの時間が続いてほしいと心から願った。
 
以下略



10:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 04:59:39.53 ID:PWoHFWY0
 「リシティア号・・・。こんな低空で飛んでいるの初めて見た・・・やっぱ凄いな・・・」
 
 今までも何度か飛行しているのを見たことがあるが、こんな近くで見たことはなかった。

以下略



11:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 05:04:42.47 ID:PWoHFWY0
 今回、そのリシティア号が日本にやって来たのは、タルシアンプロジェクトの一環として、この夢の宇宙船に乗ってタルシアン追跡調査をする為の乗組員(クルー)の募集をする為という事らしかった。確か、プロジェクトの出資額や貢献度に比例配して、募集枠千人の内、約二百二十人を日本人クルーで占めるという話だった。この数字はプロジェクトを主導しNASAを擁しているアメリカより多いらしく、その理由として出資額(これによって日本(わがくに)の公共事業がほとんど行われなくなって不況になる程)の多さと、タルシアン技術を応用した光エネルギー増幅還元システム(日光とかで得たエネルギーを何倍にも増幅させ、尚且つ貯蔵する事が出来るといったもの、ソーラーパネルの超進化版と言ったところ)の技術を世界やNASAに先んじて日本が開発したからであるらしい。この技術によって初めて莫大なエネルギーを必要とする恒星間亜光速移動が出来る宇宙船を作ることが出来たからであった。と、言う事を学校やテレビでしきりに言っていた。
 だが、素朴な疑問としては、何故クルーを国連宇宙軍の精鋭にしなかったのかという事だ。千人くらいならすぐに集める事が出来るだろうに、何か妙な感じがした。





12:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 05:07:00.12 ID:PWoHFWY0
 そんなリシティア号が、俺たちの頭上を超低空で通り過ぎていくのと同時に機体の左右から五機づつ、十機の人型の機体がリシティアから飛び出し、編隊を組みながらリシティアに並走する様に飛行していた。
 「あれってトレーサーか!?すげー!」
 俺は初めて見る機体に興奮して叫ぶように言った。
 トレーサーとは人型の探査機で、リシティア号に配備されているそれは、タルシアン・ショック以降に開発され、その技術が随所に応用されている次世代の最新気鋭で、陸海空はもとより宇宙空間をも自由自在に動ける万能マシン。言うなれば、ガンダムのモビルスーツみたいなものだ。あのTVの中の存在が現実の世界で実用化され実際に稼働している。そのパイロットに憧れる者も多かったし、事実、俺もその一人だ。
 「でも、恒星間宇宙戦艦(コスモナート)が飛んで、トレーサーもパイロットが乗って訓練しているという事は本当にやるんだよな・・・」
以下略



13:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 05:09:33.93 ID:PWoHFWY0
 「なあ、聡・・・」
 
 俺は声を掛けられてはっとなって慌てて振り向く。リシティアとトレーサーに気を取られて、澪姉をほったらかしにしてしまった事に気付いた。

 「あ、澪姉ごめ―――」
以下略



14:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 05:14:38.09 ID:PWoHFWY0
 「・・・・・・???あれに乗るって、あれ?」

 あまりに唐突、予想外にも程がある一言に、文字通り固まった末、空に向かって指を指しながら、何とも間抜けた口調で言う。

 「ああ、そうだ」
以下略



15:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 05:17:46.37 ID:PWoHFWY0
 「桜高の文化祭が終わって一週間後位に、防衛庁の人が家に来て、パパとマ――りょ両親と私に「是非試験を受けてほしい」って言って来たんだ。多分、あの時の様子からみて、両親には前もってある程度、伝えていたんだと思う、その少し前からお母さんの様子もちょっとおかしかったし・・・。試験はさいたまの航宙自衛隊の支部でやったんだけど、会議室みたいな所で五人の面接官を相手に自分の性格の事とか簡単な質問や面談をしただけで終わって、その日の内に電話で合格の通知があったんだ。今にして思うと、この時の面接には私しか居なかったみたいだし、最初からと言うか十月に学校でやった身体測定の時に決まっていたんだと思う。面接の時に面接官の人が新型トレーサーに乗るには先天的な資質が必要だって言ってたし、測定時にそれを調べたんだろうな」

 澪姉の説明は淡々としたものだったけど、俺は未だに混乱気味だった。

 「そ、そうだ、拒否出来なかったの?いくらなんでも断る事くらいは・・・」
以下略



16:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 05:19:28.71 ID:PWoHFWY0
 『タルシアン特別法』・・・国家が関与するタルシアン関連の計画に関して、すべての国民には可能な限り協力する義務がある。五年前に国会で議決された法律・・・。発足当時、様々な物議を醸し出したものだけど、確かに国家によって決められた法律に対して、たかだか国民の一小市民が意義を唱えてもどうにもなる筈がなかった。

 「で、でも、それならどうしてそんな大事なことを今まで何も言ってくれなかったんだ!」

 法に対する人権無視とも言える様な理不尽さと、澪姉にとって俺は頼りにならないと思われていても仕方ないのかも知れないが、まがりなりにも彼氏である俺に対して、何も相談してくれなかった事に苛立ちを隠せずにどうしても語気が強くなってしまう。
以下略



17:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 05:21:04.27 ID:PWoHFWY0
 「うん、判ったよ澪姉、約束するこの事は誰にも言わない。でも、それで肝心の出発日は何時になるの?」

 「正直に言って、正確な日時はまだ分からないんだ。今日明日って事はないとは思うけど・・・」

 「そっか・・・じゃあ入隊の日が決まったらすぐに教えて。俺もそうだけど、姉ちゃんや軽音部の人たちもちゃんと送り出したいだろうから、みんなで送行会をやろう」
以下略



18:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 05:22:52.23 ID:PWoHFWY0

 「でも、思ったより澪姉は強いね」

 「私が、強い?」
以下略



19:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 05:27:41.17 ID:PWoHFWY0
 澪姉を自宅に送り届けると、辺りはもうすっかり暗くなっていた。その空の下、自転車に乗って帰る途中ふと、澪姉の両親の事が頭に浮かんだ。おじさんやおばさんは今どんな思いでいるのだろうか。特におばさんは澪姉の事をすごく可愛がっているみたいだから悲嘆に暮れているのではないか、とか。そんな事を考えている内に家に着くと姉ちゃんは既に家に帰っていてリビングで寝っ転がりながらテレビを視ていた。こんなんで受験大丈夫かなどと思うが、夜は机に向かっている様だし、何だかんだで高校受験の時に無理目と言われていた桜ケ丘にもちゃっかり受かっているのだから、まぁ大丈夫なんだろう・・・・・・と、思う。・・・多分・・・。

 澪姉があの事を姉ちゃんに言っていないのはこの事もあると思う。小学校からの仲で、高校、大学まで同じ学校に通おうとする程の親友が、突然、宇宙の彼方に行ってしまうなんて知ったら、もう受験どころではないだろうから。



20:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 05:30:15.00 ID:PWoHFWY0
 その後、夕食を済ませて自室に入った。その途端に、澪姉が、大好きな彼女が遠くに行ってしまうという事実が実感として込み上がってきた。さっきまでは大丈夫だったのに、今頃になって、急に云い様のない不安感と喪失感に襲われ、胸が苦しくなり心と身体が震えてくる。俺でさえこうなのに当事者である澪姉の心苦はこんなものではないに決まっている。あのちょっと怖い話や映像を見たリ聞いたりするだけで、耳を塞ぎ目を瞑りしゃがみ込んでブルブルと震えていた澪姉があんなにも気丈にいて・・・いや、気丈なフリをしていたんだ。そんなことにも気付かないなんて俺は馬鹿だ。これじゃあ何時まで経っても<澪姉の弟>のままじゃないか・・・。もっとかけるべき言葉は無かったのか、出来る事は無かったのか?。俺は別れ際で見せたあの笑顔を思い出すと胸が掻き毟られる思いがした。

 だが、未だ入隊の日が知らされていないのなら、まだ当分先の話なのだろう。年越え、いや、もしかしたら年度を越えるのかもしれない。ならその間に何かをしてあげればいいのではないか。

 今はそう思い込む事で、俺はどうにか精神(こころ)を鎮める事が出来た。
以下略



21:こーじろう侍[sage]
2010/11/25(木) 05:32:06.13 ID:PWoHFWY0
 次の日、俺は澪姉にさっそくメールを送ってみたのだが何時まで経っても返ってこなかった。電話をしても繋がらない。嫌な予感がして、俺は澪姉の家に直接尋ねようと思ったが、へタレな俺は情けない事に、事実を知るのが怖くて行けなかった。姉ちゃんも訝しげに思って俺が止めるのも聞かずに秋山宅に行ったようだが、どうやらおばさんに、はぐらかされた様だった。

 その澪姉から、突然のメールが届いたのは最後に逢ってから一週間後。発信先は月軌道上のリシティア号の艦内からだった・・・。 



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