過去ログ - 唯「明日は恋なきものに恋あれ」
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/07/06(水) 23:17:08.29 ID:s2y2te8to
いつも通る道に、名前を知らないあの花が今年もまた咲いている。
地面から数センチの低い草が咲かせる紫の花を見詰めていると、そこから澄んだ匂いが漂ってきた気がしたがまさか気

のせいだろう。

以下略



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/07/06(水) 23:17:48.08 ID:s2y2te8to
「のどかちゃん、どうしたの」

問いかけの言葉―アイロンをあててないシャツのように気の利かないおかしなアクセントで話された―に振り向くと、

幼時からの友人が持ちあげた両掌をチューリップのような形にして、こちらを見ていた。
以下略



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/07/06(水) 23:18:58.06 ID:s2y2te8to
「日陰と、日のあたってるとこを、交互に踏むんだよ」

私が怪訝な顔をしていたせいだろうか、なにも聞かないうちから彼女は説明してくれた。
街路樹の枝葉がつくる影のかたちを楽しんでいるらしい、なるほど強い陽光と歪んだハート形の黒い部分のコントラストは版画か影絵のように見えて、綺麗だ。

以下略



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/07/06(水) 23:19:57.18 ID:s2y2te8to
「唯、もう三年生なんだから、しっかりしなよ」

唯はまっすぐに前を向いたまま、こちらも見ないで、こくりと頷いた。
それから、もう影を使った遊びには飽きたのか、パタリと飛ぶのをやめて普通に歩き出した。
急に歩調がゆっくりになったので、少し前を歩く唯にぶつかってしまいそうになる。
以下略



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/07/06(水) 23:20:32.28 ID:s2y2te8to
このところの唯は変だ。
どこか、いつもと違っている。
少し前から、唯の様子がおかしいと気付いていた。

はっきり普段と振舞いが違っているわけじゃない。
以下略



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/07/06(水) 23:21:05.16 ID:s2y2te8to
「うん」

「今日帰ったら、それから唯の家に行くから。一緒に勉強しよう?」

「うん」
以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/07/06(水) 23:22:05.72 ID:s2y2te8to
こどもみたいに不安になって、思わず声をかけてしまった。
でも、今のでちょっとだけ分かった――違和感の正体。
あまりこちらを見ないんだ。
あからさまに、目を逸らしたりするわけじゃない。
必要な程度には目を合わせる。
以下略



9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/07/06(水) 23:22:31.62 ID:s2y2te8to
「ねえ、唯。最近なにかあった?」

「なにかって?」

「ちょっと、へんだよ。いつもと違う」
以下略



10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/07/06(水) 23:23:00.90 ID:s2y2te8to
話をはじめた私が口を閉ざしたので、またもや沈黙が場を満たした。

私がへんなのか、唯が変わったのか。
だけど、いらいらしてるのは、私の方だけみたいだ。
それがいやだ。
以下略



11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/07/06(水) 23:23:29.64 ID:s2y2te8to
「ぷ……ふふっ、あはははは」

どうして私が笑ったのか分からなかったろうけれど、唯もまた立ち止ると少し困ったような顔をしながらも、一緒に笑ってくれた。
立ち止った拍子にチョウはふわりと飛び立ち、今度は頭のてっぺんにとまった。
なおさらおかしくて、私は笑いをとどめることができなかった。
以下略



12:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/07/06(水) 23:24:02.54 ID:s2y2te8to
ようやく息が落ち着いてきたころ、唯が私の手を引いた。

「座ろっか」

草だらけの河川敷に向かう階段を指さす。
以下略



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