過去ログ - ひたぎ「これも、また、戯言よね」
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59:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)
2011/07/30(土) 10:57:20.22 ID:ooW4dNWwo
そのあと。
ひたぎちゃんは、下唇を強く噛む。
「う――うちに、その宗教団体の、幹部の人が、お母さんに連れられて、やってきて」
「幹部の人。幹部の人がやってきて、どうした?」
「じょ――浄化、だと言って」
60:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)[sage]
2011/07/30(土) 10:58:28.32 ID:ooW4dNWwo
不自然な形での貞操観念の強さや――
警戒心の強さ。
防衛意識の高さと攻撃意識の過敏さ。
説明が――つく。
素人のひたぎちゃんにしてみれば、神道もまた、宗教であることには――変わりない。
61:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)
2011/07/30(土) 10:59:39.54 ID:ooW4dNWwo
「娘が幹部を傷つけたんだから――当然だね」
「はい。だから――財産。家も、土地も――借金までして――私の家族は、壊れたわ。完
全に壊れて――完全に壊れたのに、それなのに、まだ、その崩壊は、続いている。続いて
います」
「お母さんは、今、どうしている?」
62:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)
2011/07/30(土) 11:00:39.99 ID:ooW4dNWwo
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「目を背けずに――目を開けて、正面切って、見てみよう」
そして――
忍野は目を開けた。
ひたぎちゃんも、そっと――目を開けた。
63:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)
2011/07/30(土) 11:03:07.67 ID:ooW4dNWwo
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「み――見えます。あのときと同じ――あのときと同じ、大きな蟹が、蟹が――見える」
「そうかい。僕には全く見えないがね」
64:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)
2011/07/30(土) 11:06:49.76 ID:ooW4dNWwo
それだけだろう。
けれど、事情なんて関係ない。
人間の事情なんて、関係ない。
その瞬間――ひたぎちゃんは、後ろにふっとんだ。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
65:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)
2011/07/30(土) 11:08:13.73 ID:ooW4dNWwo
「全く。壁になってやれって言っただろう、あ、阿良々木くん!」
忍野が落胆したみたいにこんなことを言ったとき、僕はもう走り出していた。
考えるよりも先に、走り出していた。
蟹の鋏の根元――人間でいうと、肩にあたるのだろうか?――に手を伸ばし。
無理やりに引き剥がす。
66:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)
2011/07/30(土) 11:09:09.28 ID:ooW4dNWwo
007
どうやら、僕と翼ちゃんはやはり全てを聞き出せていたわけじゃなかったようだ。
まぁ、ほぼ初対面の人間に全てを話すほうが珍しいだろう。そこまで警戒心のない人間
が、今まで、誰にも気づかれないで暮らせるわけがないし。
「おもし蟹ってのはね、阿良々木くん。だからつまり、おもいし神ってことなんだよね」
67:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)
2011/07/30(土) 11:10:14.29 ID:ooW4dNWwo
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
心の拠り所を――求めたのだ。
皮肉にも――母親と同じ――神様に――
「物々交換だよ。交換、等価交換。蟹ってのは、鎧を身に纏って、いかにも丈夫そうだろ
う? そういうイメージなんだろうね。外側に甲羅を持つ。外骨格で、包み込むように、
68:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(東京都)
2011/07/30(土) 11:11:58.11 ID:ooW4dNWwo
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
しかしそれでも――そうでありながら、ひたぎちゃんは、そのことを、楽になってしまっ
・ ・ ・ ・
たことを、後悔しない日は、一日だって、なかったのだという。
でも、周囲との不調和からではない。
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