41:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:48:36.16 ID:PjuOVipoo
――本当に?
頭の中で自分を疑う声がした。耳を貸すな、と彼は胸中で呟く。
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2011/08/29(月) 11:49:12.21 ID:PjuOVipoo
「俺は確かに怠惰だった。苦労を背負うのが嫌で、全部投げ出した。でも、これはなんだ?」
あるいは、自分が思っているほど、現状は絶望的ではないのだろうか。
誰でも簡単に抜け出せるような場所なのか。それとも、こんなのは問題にすらならないのだろうか。
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2011/08/29(月) 11:49:42.67 ID:PjuOVipoo
絶対に、自分のせいじゃない。
でも、現状から抜け出そうとするならば、自分が労力を負わなければならない。
苦労してまで、あのわずらわしい社会に回帰する理由はあるだろうか?
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2011/08/29(月) 11:50:11.16 ID:PjuOVipoo
どうすればいいのだろうと、脳裏に再び言葉が過ぎった。
叫びだしたい衝動を抑え付け、彼は歯を食いしばった。
45:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:50:37.58 ID:PjuOVipoo
思考というのはそういうものなのだと彼は感じた。
考えているそのときは理路整然として正論であるかのように見えるが、客観視すると大抵の場合は矛盾を孕んでいる。
とにかく、理屈を考えるには、時間を置くことが必要なのだ。
46:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/29(月) 11:51:04.40 ID:PjuOVipoo
つづく
47:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2011/08/30(火) 15:19:34.66 ID:qI3zpfXyo
◆
――恐れ。
48:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/30(火) 15:20:15.92 ID:qI3zpfXyo
ただ不安と恐怖だけが体を支配している。
何かを失ってしまった、と彼は思った。
49:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/30(火) 15:20:46.02 ID:qI3zpfXyo
とはいえ、その数え方は、あくまで集団を表現するものに過ぎない。
個人はどれだけのものを積み重ねようとイチであり、それ以上になることはない。
では――ゼロとはなんだろう。
50:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/30(火) 15:21:12.18 ID:qI3zpfXyo
気付けば、彼は夜の街を歩いていた。
本当にごく自然に、彼の意識は――あるいは存在と言い換えることもできるかもしれないが――唐突にこの場に現れた。
赤ら顔で大声を出すサラリーマンが夜の街を闊歩している。
51:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2011/08/30(火) 15:21:44.31 ID:qI3zpfXyo
吐き出した溜息が空気を染め上げ、白く立ち上って消えていく。
何かが失われている、と彼は感じた。
自らの溜息を追いかけて見上げた空から、白い粒が降りてきたのを視界に捉える。
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